引火、火災、爆発、中毒など、身体や生命に危害を及ぼす有害性の高いものを総じて「危険物」と呼ぶことがあります。しかし、いわゆる「危険物取扱者」の危険物とは、「消防法が定める危険物」を指します。消防法第2条第7項には、危険物の定義について、「法別表の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう」としています。消防法で危険物を分類した表では、危険物を「燃えるもの」と「燃えないもの」に大別し、それぞれの性質・性状に応じて6種類に分類しています。
さまざまな液体、固形物の危険度を示すバロメーターとなるのが、消防法が定める指定数量です。消防法第9条の3では、「危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量」と規定し、指定数量以上の危険物を貯蔵・取り扱う場合は政令で定める技術水準を満たさなければなりません。
消防法の適用を受ける指定数量は、危険性が高いほど数量が小さく、低いものほど数量が大きくなる特徴があります。
危険物の性質を理解するうえで大切なことは、それぞれ「燃えるもの」と「燃えないもの」に分類されることです。これは、危険物自身が燃える・燃えないということであり、他の物質を燃やすか燃やさないかという分け方ではありません。
酸化性固体。酸化には、物質を燃やしたり、腐らせたりする作用があります。
そのもの自体は燃焼しません。ほかの物質を強く酸化させる働きを持つ固体で、可燃物を混合したときに熱や衝撃、摩擦によって分解します。
塩素酸塩類・過塩素酸塩類・無機化過酸化物・亜塩素酸塩類・臭素酸塩類・過マンガン酸塩類など。
可燃性固体
火災によって着火しやすい固体で、40度未満の低温でも引火するリスクが高い特徴を持ちます。1度着火するとものすごい勢いで燃焼し、簡単には消火できません。
硫化りん・赤りん・硫黄・鉄粉・マグネシウムなど。
自然発火性物質および禁水性物質。禁水性とは水に触れると発火しやすい性質を言います。
自然発火、または水と反応して燃える性質を持ちます。性状は固体・液体で、空気中で引火の危険性があります。
カリウム・ナトリウム・黄りん・アルカリ金属・金属の水素化合物・アルカリ金属・カルシウムまたはアルミニウムの炭化物など。
引火性液体
1気圧20度で、液状であるもの。液体でありながら強い引火性を持つのが特徴です。
特殊引火物・ガソリン・灯油・軽油・重油・動植物油類など。
自己反応性物質。物質中に酸素を有し、外から酸素の供給を受けなくても燃えることができます。
固体または液体。加熱・分解で反応を起こし、低い温度で多量の熱エネルギーを放出します。
有機過酸化物・硝酸エステル類・ニトロ化合物・ニトロソ化合物・シアゾ化合物・ヒドロキシルアミンなど。
酸化性液体
それ自体燃えることはありません。ただ、近くに燃えている性質があればその燃焼を促進する性質を持っています。
過塩素酸・過酸化水素・硝酸など。
危険物には該当しないものの、準危険物として指定される可燃物もあります。指定可燃物には、綿花類や糸類、わら類、可燃性固体などがあり、品別に指定基準の数量が設けられています。これらもまた、一定数量以上の貯蔵・取り扱う場合は届出が必要となります。