「准看護師」と「看護師」は名称が似ていることもあり、一般的には明確な違いが知られていません。
どちらも患者さんのケアをする仕事ですが、資格や仕事内容、給与などいくつかの違いがあります。
今回は、准看護師と看護師の違いや、准看護師が看護師になる方法をご紹介します。
これから看護師を目指そうと考えている方や、医療現場に興味がある方はぜひ、参考にしてみてください。
准看護師と看護師の4つの違い
准看護師と看護師は、傷病者や高齢者の生活のケアや医師の診療補助を主な業務とした、看護職のひとつです。
准看護師と看護師の業務内容の多くは共通していますが、明確に違う部分もあります。
准看護師と看護師の違いは、以下の4つです。
- 定義
- 資格
- 給与
- 業務内容・範囲
それぞれの内容について解説します。
定義
准看護師と看護師の定義の違いは、免許の発行元と業務の裁量です。
具体的な内容は厚生労働省が定める「保健師助産師看護師法」に記されています。
「保健師助産師看護師法」で規定された准看護師と看護師の定義の違いは以下のとおりです。
准看護師 | 看護師 | |
定義 | 医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うこと | 傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うこと |
免許の発行元 | 都道府県知事 | 厚生労働大臣 |
なお、准看護師の免許は都道府県知事から発行されますが、全国どの地域でも有効です。
資格
准看護師と看護師はどちらも試験に合格して資格を取得する必要があります。
違いは、試験の種類や受験資格を得るための学修過程です。
両者の違いは次のとおりです。
准看護師 | 看護師 | |
管轄 | 各都道府県 | 厚生労働省 |
試験名 | 准看護師試験 | 看護師国家試験 |
基礎教育への入学要件 | 中学校卒業 | 高校卒業 |
学修過程 | 2〜3年課程で1,890時間以上を履修 | 3〜4年課程で3,000時間以上を履修 |
国家試験のほうが試験範囲が広く、難易度も高い傾向にあります。
看護師になるには、准看護師よりも長い期間の学習が必要となることが特徴です。
給与
一般的に、看護師の方が准看護師よりも給与が高い傾向にあります。
看護師は自己判断を求められる場面が多く、准看護師よりも高い専門性と責任を伴うためです。
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、准看護師と看護師の平均月収は以下のとおりです。
平均月収 | 年間賞与 | |
准看護師 | 28万6,800円 | 62万9,500円 |
看護師 | 35万2,100円 | 85万6,500円 |
年収に換算すると、准看護師と看護師には100万円ほどの差があります。
業務内容・範囲
准看護師と看護師は、業務内容や範囲について法律上の違いはほとんどありません。
以下の看護師が行うすべての業務を准看護師も行います。
- 医師の診療補助
- 点滴
- 採血
- 血圧の測定
- 手術の補助
- カルテの作成 など
両者の業務内容について唯一異なるのは、准看護師がこれらの業務を自分の判断で行えない点です。
看護師は、患者の状態を確認して自らの判断で処置できますが、准看護師は必ず看護師や医師の指示を受けてから業務を行う必要があります。
たとえば、患者から入浴介助などを頼まれた場合でも、准看護師は担当の看護師や看護師長などの指示を仰いでから対応しなければなりません。
このように准看護師と看護師は、業務の内容自体はほぼ同じですが、業務の進め方や責任範囲に違いがある点が特徴です。
准看護師と看護師の割合
厚生労働省の統計データによると、准看護師と看護師の人数を比較すると、看護師のほうが多く、増加傾向にあります。
一方で、准看護師の人数は減少傾向です。
「衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、平成24年看護師に対する准看護師の割合は約35%でしたが、10年後の2022年には約19%にまで減少※しています。
※厚生労働省「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」をもとに算出
准看護師が減っている理由として考えられるのは、以下2点です。
- 准看護師学校養成所数の減少
- 看護師の給与の良さ
准看護師のなり手が減少している背景には、准看護師学校養成所とその入学者数の減少が影響していると考えられます。
実際、准看護師養成所への入学者数は2002年からの約20年間で約40%も減少しています。
また、看護師は准看護師に比べて給与が高く、看護師を目指す人が増えたことも准看護師の減少につながっているといえるでしょう。
【参考】厚生労働省「平成24年年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
【参考】厚生労働省「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
【参考】公益社団法人日本看護協会「准看護師養成数の減少」
准看護師ができないこと
准看護師と看護師の最大の違いは「准看護師にはできないことがある」点です。
前述の自己判断による看護業務に加えて、以下の3つも准看護師には認められていません。
- 他の看護師への指示
- 看護計画の立案
- 管理職への昇進
法律上、准看護師は看護師や医師から指示を受ける立場のため、他の看護師に指示を出せません。
また、准看護師は看護計画を自ら作成することもできません。
看護計画とは、患者の入院から退院までの過ごし方や目標などを記したもので、入院患者全員に対して作成されます。
看護師は、専門学校や大学で看護計画の立案についてノウハウを学びますが、准看護師は看護計画に関する教育を受けないためです。
そして、准看護師はあくまで現場のプロであり、看護師や准看護師を管理する能力を学ぶ機会は設けられていないため、管理職への昇進もできないとされています。
このように、准看護師は医師や看護師の指示のもと、患者さんのケアに専念することが求められる点が看護師との違いとなります。
准看護師が看護師になるには看護師国家試験の合格が必要
准看護師が看護師になるためには、看護師国家試験に合格する必要があります。
しかし、准看護師としての実務経験だけでは看護師国家試験の受験はできません。
試験に挑戦するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
本章では、准看護師が看護師国家試験を受験するための条件や、試験内容について解説します。
【あわせて読みたい】看護師になるには?
准看護師が看護師国家試験を受ける条件
准看護師が看護師国家試験を受けるには、看護専門学校や看護短大などの一部に設置されている「2年課程」で学ぶ必要があります。
准看護師資格を持つ人は、2年課程で学んで所定の単位を修めることで、看護師国家試験を受験する資格が得られます。
2年課程には、全日制、定時制、通信制の3種類があります。
課程 | 教育年限 | 受験要件 | 特徴 |
全日制 | 2年 | 准看護師資格を有すること(中学校卒業の場合は、※実務経験3年以上) | 准看護師資格取得後、最短で看護師資格を取得できる |
定時制 | 3年 | 昼間定時制と夜間定時制がある。3年次は実習がメイン | |
通信制 | 2年 | 准看護師資格を有すること(※実務経験7年以上) | 病院等での見学実習や、登校して面接授業を受ける日もある。 |
全日制、定時制、通信制には、それぞれ次のようなメリットとデメリットがあります。
課程 | メリット | デメリット |
全日制 | ・集中的に学習できる ・効率的に知識や技術を習得できる | ・費用がかかる ・通学期間中は勉強がメインの生活になる |
定時制 | ・働きながら学習できる ・経済的な負担を軽減できる | ・仕事と勉強の両立が必要になる ・夕方~夜にかけて通学する |
通信制 | ・毎日通学する必要がない ・仕事や家事との両立がしやすい | 准看護師の資格に加え7年以上の実務経験が必要になる |
ご自身の環境に合わせて、最適な学習方法を選択しましょう。
看護師国家試験の試験内容
令和6年(2024年)2月実施の第113回看護師国家試験をもとに、出題数や種類、科目などをまとめました。
項目 | 内容 |
試験時間 | 午前・午後 各2時間40分 |
問題数 | 240問 |
問題の種類 | ・必修問題・一般問題・状況設定問題 |
試験科目 | ・必修問題 ・人体の構造と機能 ・疾病の成り立ちと回復の促進 ・健康支援と社会保障制度 ・基礎看護学 ・成人看護学 ・老年看護学 ・小児看護学 ・母性看護学 ・精神看護学 ・地域 ・在宅看護論 ・看護の統合と実践 |
問題・配点 | ・必修問題:1問1点 ・一般問題:1問1点 ・状況設定問題:1問2点 |
出題形式 | マークシート方式 |
試験科目の範囲は広く、病気の知識だけでなく、人体の構造や機能、看護技術などの幅広い知識が必要となります。
状況設定問題は事例に基づいて問題を解く形式で、患者さんの状況を理解し、適切な看護を提供するための思考力や判断力が問われます。
看護師国家試験の合格点は年度により異なるため「〇点以上とれば安心」とはいえません。
確実に合格するには試験科目を満遍なく勉強し、高得点を目指すことが重要です。
単に参考書の内容を暗記するのではなく、根本理解を深めましょう。
以下の記事では、看護師国家試験の合格基準について解説していますので、あわせて参考にしてみてください。
【参考】厚生労働省「『保健師助産師看護師国家試験出題基準 令和5年版』について」
【あわせて読みたい】第114回看護師国家試験の日程
准看護師が看護師になるメリット
准看護師としてすでに医療現場で活躍されている方が看護師の資格を取得すると、さまざまなメリットがあります。
- キャリアアップが目指せる
- 年収が上がる
- 業務上の差がなくなる
すでに准看護師として働いており、看護師を目指すかどうか迷っている方はぜひ参考にしてみてください。
キャリアアップが目指せる
看護師になり経験を積むことで、キャリアアップの道が大きく広がります。
昇進ができない准看護師と異なり、病棟のリーダーや看護師長、主任などの管理職を目指せるためです。
管理職になるとスタッフの指導や育成をしたり、病院全体の運営に関わったりなど、より大きな責任を担うことになりますが、やりがいも増えるでしょう。
さらに、看護師資格があると、病院だけでなくさまざまな場所で活躍できるようになる点もメリットです。
たとえば、以下のような選択肢が増えます。
職種 | 内容 |
訪問看護ステーション | 患者さんの自宅に訪問し医療的なケアを提供する |
介護施設 | 介護施設で入居者の健康管理や医療的なケアを行う |
企業 | 企業看護師として従業員の健康管理や保健指導を行う |
学校 | 学校の保健室で生徒の健康管理や怪我の対応を行う |
保育園 | 保育園で園児の健康管理や病気の予防を行う |
准看護師では就業が難しい、または制限がある職場で活躍できるようになり、自分の興味やライフスタイルに合った働き方を選べるでしょう。
年収が上がる
看護師は、准看護師に比べて企業規模にかかわらず給与が高い傾向にあります。
准看護師と看護師の平均月収を企業規模別に比較した表をご覧ください。
企業規模 | 10~99人 | 100~999人 | 1,000人以上 |
准看護師 | 386万7,600円 | 413万7,700円 | 407万1,100円 |
看護師 | 452万6,900円 | 486万4,000円 | 557万1,200円 |
企業規模にかかわらず、准看護師よりも看護師のほうが給与が高いことがわかります。
看護師は准看護師よりも高収入が期待でき、経済的な安定につながるでしょう。
業務上の差がなくなる
看護師になると医療行為における制限が減り、より幅広い業務を担えるようになる点がメリットです。
たとえば、准看護師には医療行為に関する業務の制限があります。
准看護師は医師や看護師の指示がないと、点滴や注射、採血、薬の投与などの医療行為を行えません。
また、患者さんやその家族への療養指導や健康教育なども、看護師の指示のもとで行う必要があります。
一方、看護師は患者さんの状態を判断し、適切なケアを提供する責任を担っており、幅広い知識や技術、判断力が求められる資格です。
看護師資格を取得することで、医療現場でより主体的に活躍できるようになり、自分自身の成長にもつながるでしょう。
准看護師と看護師の試験の合格率
准看護師と看護師になるには、それぞれ異なる試験に合格する必要があります。
本章では、准看護師と看護師の試験の合格率について紹介します。
それぞれの合格率は以下のとおりです。
資格試験 | 合格率 |
准看護師試験(令和4年度) | 97.9% |
看護師国家試験(第113回) | 87.8% |
試験の合格率を比較することで、どのような違いがあるのかみてみましょう。
准看護師試験の合格率
厚生労働省が公表している「令和4年度准看護師試験の実施状況」によると、准看護師試験の合格率は97.9%と比較的高く、多くの方が合格しています。
准看護師試験は試験範囲が限定されており、学校で学んだ内容を身につければ合格が期待できるためです。
准看護師試験は看護師試験と比べて試験内容が基礎的な知識に絞られているため、合格率が高くなっています。
准看護師試験は、看護師を目指すための第一歩としてチャレンジしやすい試験だといえるでしょう。
【参考】「厚生労働省」令和4年度准看護師試験の実施状況を公表します|厚生労働省
看護師国家試験の合格率
厚生労働省が発表している「国家試験合格発表」によると、第113回看護師国家試験の合格率は87.8%です。
准看護師試験と比べると合格率はやや低いですが、それでも約9割の受験者が合格していることがわかります。
看護師国家試験は、国家資格の中では比較的合格しやすい試験だともいわれています。
しっかりと試験対策を行えば、合格できる資格です。
【参考】「厚生労働省」第107回助産師国家試験及び第113回看護師国家試験の合格発表
准看護師と看護師のどちらを選ぶべきか
准看護師と看護師のどちらの資格を選ぶべきかは、自分の性格やライフスタイル、将来の目標に応じて異なります。
本章では、それぞれの資格に向いている方の特徴を解説します。
准看護師に向いている人
准看護師は、看護師に比べて短期間で資格を取得し、医療現場で働ける点が特徴です。
准看護師に向いているのは、次のような方です。
- 早く医療現場で働きたい方
- 実務経験を重視する方
- 資格取得に関する費用を抑えたい方
- 家庭と仕事を両立したい方
准看護師は、実務経験を積みながらスキルアップが可能です。
資格取得後すぐに現場で働くことが多いため、できるだけ早く医療に貢献したい方に向いています。
看護師に向いている人
一方で、看護師に向いているのは次のような方です。
- 学ぶことが好きな人
- 責任感の強い人
- 専門性を高め、キャリアアップを目指したい人
- 幅広い医療知識を身につけ、さまざまな分野で活躍したい人
- リーダーシップを発揮し、チーム医療に貢献したい人
看護師の仕事は大変なこともありますが、それ以上にやりがいのある職業です。
患者さんの笑顔や「ありがとう」の言葉は、看護師にとって大きな喜びとなります。
看護師としてキャリアアップを目指したい方は、ぜひ看護師資格の取得を目指してみてはいかがでしょうか。
准看護師から看護師国家試験突破を目指そう
本記事では、准看護師と看護師の違いや准看護師から看護師を目指すメリットについて解説しました。
准看護師として医療現場で経験を積んだあと、ステップアップを目指して看護師資格を取得する方も多くいます。
准看護師として働きながら看護師を目指すには、効率的な学習が重要です。
試験対策には、参考書や問題集の活用に加えて、オンライン学習サービスを利用することがおすすめです。
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スタディングで効率よく試験対策を進め、看護師資格を目指してみませんか。