
看護師をはじめとした医療従事者は、就職先として高い人気を誇ります。
とくに、近年は新型コロナウイルス感染症の流行もあり、より身近な存在として、活躍している姿を見かける機会が増えました。
今回は、看護師として活躍するために歩むべきルートや必要なことをご紹介します。
また、現在社会人や主婦をしている方が、看護師を目指す方法も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
看護師になるには?
看護師になるには、看護師国家試験に合格する必要があります。看護師国家試験を受験できる人は、主に以下のいずれかに該当する人です。
- 看護大学を卒業した人(※卒業見込みの人を含みます)
- 看護短期大学を卒業した人(※卒業見込みの人を含みます)
- 看護師養成所を卒業した人(※卒業見込みの人を含みます)
- 免許を得た後3年以上業務に従事している准看護師または高卒資格を持つ准看護師で、指定大学、指定学校または指定養成所において2年以上修業した人(※修業見込みの人を含みます)
さらに詳しい内容は、厚生労働省の「看護師国家試験の施行」でご確認ください。
看護師国家試験について
看護師国家試験は、看護師免許を取得するための試験です。毎年2月中旬に実施されます。
次回(第115回)の看護師国家試験は、令和8年(2026年)2月に実施される見込みです。
試験科目は以下のとおりです。
- 人体の構造と機能
- 疾病の成り立ちと回復の促進
健康支援と社会保障制度- 基礎看護学
- 地域・在宅看護論
- 成人看護学
- 老年看護学
- 小児看護学
- 母性看護学
- 精神看護学
- 看護の統合と実践
看護師国家試験の問題は、厚生労働省が作成した「看護師国家試験出題基準」に沿って出題されます。
問題の種類は「必修問題」「一般問題」「状況設定問題」に分かれており、それぞれの問題数の内訳は以下のとおりです。
問題の種類 | 問題数 |
---|---|
必修問題 | 50問 |
一般問題 | 130問 |
状況設定問題 | 60問 |
看護師国家試験では「プール問題」と呼ばれる、過去問に類似した問題が一定数出題されます。
全体の25%を「プール問題」が占めるとも言われているので、過去問の研究を入念に行うことが大切です。
看護師国家試験の概要は、こちらの記事で解説しています。

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社会人・主婦からでも看護師になれる
現在、社会人や主婦をしている人も看護師を目指せます。
看護師になるための学校を卒業後、看護師国家試験に合格し、看護師免許を取得しましょう。
入学や受験をするにあたって年齢の制限はないため、いくつになっても看護師になることは可能です。
社会人・主婦から看護師になるメリット
現在、社会人や主婦をしている人が看護師になることで享受できるメリットは、3つあります。
- これまでの経験を強みにできる
- 雇用が安定しており、長く働ける
- 給与水準が高い
一つひとつ解説していきます。
これまでの経験を強みにできる
一点目のメリットは、これまでの経験を強みにできることです。
たとえば社会人の人が同僚や上司、部下と協力しながら仕事を進められる協調性は、看護の現場において、医師や同僚の看護師、多職種と連携するうえで役に立ちます。
また、主婦の人が毎日いくつもの家事を同時にこなせる段取り力などは、マルチタスクが求められる看護の現場で重宝されるでしょう。
このような経験は、新卒の看護師にはない、社会人や主婦の人ならではの強みになります。
雇用が安定しており、長く働ける
二点目のメリットは、雇用が安定しているため長く働けることです。
昨今、高齢化や少子化の影響による人手不足が様々な業界で問題になっています。
日本商工会議所・東京商工会議所が、介護・看護業を含む約2,400社を対象に行った調査では、「人手が不足している」と回答している企業は63%です。
とくに介護・看護業の人手不足は深刻で、介護・看護業の76.9%が「65歳を超える人材を継続雇用している』」と回答しています。
このように看護師の人材としてのニーズは高まっているため、就職先や転職先に困りにくく、長く働けるでしょう。
【参考】日本商工会議所・東京商工会議所「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」
給与水準が高い
三点目のメリットは、給与水準が高いことです。
看護師の平均年収は、基本給や賞与、各種手当などを含めて「508万1,700円」になります。
フルタイムで働く女性労働者の平均年収である「262万6,000円」と比較すると、給与水準が高いと言えます。
ただし基本給や賞与、各種手当の金額は、勤務先の病院や施設によって異なるため、応募する際に確認しましょう。
看護師の年収については、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてチェックしてみてください。

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看護師に求められる能力
看護師には主に、以下の4つの能力が求められます。
- 体力や精神力
- コミュニケーション力
- 共感力や想像力
- 向上心
一つひとつ解説していきます。
体力や精神力
看護師には体力や精神力が求められます。
夜勤があったり、寝たきりの患者さんを介助したりしなければならないためです。
残念ながら患者さんが亡くなってしまうこともあるでしょう。
それでも看護師として、最後まで仕事をする強さが求められます。
感情的になって仕事に支障をきたしたり、心を病んでしまったりしては元も子もありません。
看護師には身体的、精神的なタフさが必要なことを覚えておきましょう。
コミュニケーション力
看護師には双方向の意思伝達力、すなわちコミュニケーション力が求められます。
看護の現場では、医師や同僚の看護師などと連携する必要があります。
その際、誤った情報を伝えてしまうと医療ミスの引き金になるかもしれません。
「こんなはずではなかった」という事態を未然に防ぐために、相手に正しい情報を伝える力と聞く力を養いましょう。
共感力や想像力
看護師には共感力や想像力が求められるでしょう。
患者さんの痛みや苦しみ、不安などに寄り添い、支えなければならない場面があるためです。
たとえば、患者さんの家族の立場になって考えてみましょう。
すると患者さんに対し、「どのように声をかけるべきか」が自然に見えてくるはずです。
共感力や想像力があれば、患者さんや患者さんの家族と良好な関係を構築できるでしょう。
向上心
看護師には向上心も求められます。
医療技術は日々進化しているため、それに対応していく力が必要になります。
学校で勉強したことだけでは「通用しない」と感じる場面も多々あるでしょう。
向上心がある人とない人では、その後の看護師としての能力に大きな差が生じてきます。
いつも「学びたい」気持ちを持ち、勉強会や研究会に積極的に参加しましょう。
学校の選び方
看護師になるには、指定された学校で3年以上の教育を受ける必要があります。
看護師になるための学校の選び方について、次のルートについてそれぞれ解説します。
- 4年制大学
- 3年短期大学
- 3年制養成所・専門学校
1つずつ見ていきましょう
4年制大学
20年ほど前までは、看護師になるために専門学校に通う人が多かったですが、看護師の職務が高度化・専門化したことなどから、看護学部・看護学科を設置する4年制大学は増え続けています。
4年制看護大学を選ぶメリットは、看護師に必要な知識を身につける授業だけでなく、一般教養に関する授業も受けられる点です。
専門外の教養についても幅広く学ぶことができ、看護師として働くだけでなく、一般企業で働く選択肢も生まれます。
4年制大学は、看護師以外のルートも考えたい、広く教養を学びたい方にもおすすめです。
3年制短期大学
3年制短期大学は、ある程度早く現場に出ることができ、専門学校と比較して一般教養も学べるのが魅力です。
一般教養を学ぶことで、看護師として働く際の患者とのコミュニケーションなどに役立ちます。
ただし、4年制の看護大学が増えたことで、短期大学は減少傾向にあります。
3年制養成所・専門学校
看護師になると決めている方や、最短で必要な知識を身につけたい方に最適なのが、3年制の養成所や専門学校です。
3・4年制大学と比べて実技や実習の時間が多く、看護師に必要な知識を体で覚えられます。
ただ、人気の学校は入学試験の倍率が高く、合格するには入念な準備が必要です。
試験対策のために、予備校に通う方もいるようです。
看護師になるための費用
看護師になるには、学校で3年以上の教育を受ける必要があります。入学金や授業料といった諸費用は、以下の表のとおりです。
学校 | 入学金 | 授業料 | 4年間の目安 (その他費用を含む) |
---|---|---|---|
4年制看護大学(私立) | 約24万円 | 約96万円 | 約520万円 |
4年制看護大学(国立) | 約28万円 | 約54万円 | 約243万円 |
3年制短期大学 | 約24万円 | 約73万円 | 約333万円 |
3年制養成所・専門学校 | 約17万円 | 約81万円 | 約326万円 |
ここからは、看護師になるための費用について説明していきます。
4年制看護大学の費用
4年制看護大学には私立大学・国立大学があります。
文部科学省が行った調査では、私立大学において初年度に納める金額は約148万円でした。
その内訳は以下のとおりです。
- 入学料:約24万円
- 授業料:約96万円
- 施設設備費:約17万円
- 実験実習料:約3万円
- その他:約8万円
初年度のみ発生する入学料約24万円に、次年度以降も継続して発生する授業料や施設設備費などを合計すると、4年間では約520万円の費用が発生することになります。
【参考】文部科学省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」
国立大学の場合は、文部科学省によって、以下のとおり標準額が定められています。
- 入学料:282,000円
- 授業料:535,800円
これを基準に計算してみると、4年間では約243万円の費用が発生することになります。
なお以上の標準額は、ほとんどの国立大学において同じです。
しかし最近では、独自に入学料・授業料などを定めている国立大学もあります。
3年制短期大学の費用
3年制短期大学は4年制看護大学と異なり、私立大学しかありません。
文部科学省が行った調査では、その費用は初年度で127万円です。
内訳は以下のとおりであり、初年度のみ発生する入学料約24万円に、次年度以降も継続して発生する授業料や施設設備費などを合計すると、3年間では約333万円の費用が発生します。
- 入学料:約24万円
- 授業料:約73万円
- 施設設備費:約16万円
- 実験実習料:約4万円
- その他:約10万円
先述した私立の4年制看護大学よりは安価ですが、後述する3年制養成所・専門学校とは、あまり変わりません。
【参考】文部科学省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」
3年制養成所・専門学校の費用
ある調査によれば、3年制養成所・専門学校において初年度に納める金額は、約119万円でした。
その内訳は以下のとおりです。
- 入学金:約17万円
- 授業料:約81万円
- 実習費:約6万円
- 設備費:約12万円
- その他:約4万円
初年度のみ発生する入学金約17万円に、次年度以降も継続して発生する授業料や実習費などを合計すると、3年間では約326万円の費用がかかります。
最終的にかかる費用は、先述した3年制短期大学とあまり変わりません。
しかし、初年度にかかる費用は3年制養成所・専門学校のほうが安価です。
その点においては、金銭的な理由で大学に通うことが難しい人にも推奨できるでしょう。
【参考】(公社)東京都専修学校各種学校協会「令和5年度学生・生徒納付金調査結果」
看護師になるために必要な資格
看護師になるために必須の資格は、看護師資格です。
また看護師資格に加えて、保健師・助産師の資格を持っていると活躍の場が広がります。
一つひとつの資格について、解説していきます。
看護師資格
看護師になるうえで必須の資格は、看護師資格です。
看護師資格を取得するために、まずは看護師国家試験を受験しましょう。
看護師国家試験を受験し合格した後、厚生労働大臣から看護師免許が与えられてはじめて看護師と名乗り、看護業に従事できるようになります。
保健師資格
看護師資格に加えて、保健師資格を持っていれば活躍の場が広がるでしょう。
保健師とは、保健指導を介して病気を予防したり、対策したりする地域の人々の健康を守る「公衆衛生(地域保健)」の専門家です。
保健師になるためには、保健師国家試験・看護師国家試験の両方に合格しなければなりません。
保健師国家試験は、毎年2月中旬に行われます。
合格発表は3月下旬で、令和7年2月14日(金)に実施された第111回保健師国家試験の合格率は、94.0%でした。
そのため保健師に必要な基本的知識が身についていれば、十分に合格できると言えるでしょう。
保健師資格と看護師資格は同年に取得することが可能です。
ただし、保健師国家試験と看護師国家試験は、同じ週など、ほぼ同時期に試験が行われます。
2つの試験に同時合格を目指す場合は、難易度が上がる点に注意してください。
助産師資格
さらに助産師資格を持っていても、活躍の場が広がります。
助産師はお産の介助を専門に扱う、女性の強い味方です。
新生児や出産後間もない女性の保健指導を行うこともあり、日本においては女性のみが助産師になれます。
助産師になるには、助産師国家試験・看護師国家試験の両方に合格しなければなりません。
助産師国家試験は毎年2月中旬に行われます。
令和7年2月13日(木)に実施された第108回助産師国家試験の合格率は98.9%に上り、助産師に必要な基礎知識が身についていれば、十分に合格できるでしょう。
助産師資格と看護師資格も、同年取得が可能です。
ただし、助産師国家試験も、やはり看護師国家試験と同じ時期に行われます。
2つの試験に同時合格を目指す人は、難易度が上がることを覚えておきましょう。
看護系資格を活かせる場所
看護師・保健師・助産師の資格を活かして働けるのは、どのような職場なのでしょうか?
ここからは、看護系資格を活かせる場所をご紹介します。
看護師の活躍の場所
厚生労働省の調査によれば、看護師の約70%が病院で働いています。
そのほか診療所や訪問介護ステーション、介護保険施設などでも活躍しているようです。
【参考】厚生労働省「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
看護師が活躍できるフィールドについては、こちらの記事で解説しています。

看護師の活躍のフィールドは病院だけじゃない
看護師が活躍できる場所といえば、代表的なのは病院や診療所ですが、少子高齢化や働き方改革が進んだことで、看護師の需要はさまざまな職場で高まっています。そして、…
看護師が活躍できる場所といえば、代表的なのは病院や診療所です…
保健師の活躍の場所
厚生労働省の調査によると、保健師は次のような場所で活躍しています。
- 市区町村保健センター
- 保健所
- 事業所
- 病院・診療所
- 学校・大学等研究機関
保健師は、働く場所によって名前が変わるのも特徴です。
民間企業で働く保健師は「産業保健師」、教育機関で働く保健師は「学校保健師」、公務員として活躍する保健師は「行政保健師」と呼ばれます。
保健師は、就職先に応じて異なる能力を求められます。
【参考】厚生労働省「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
助産師が活躍する場所
助産師の就職先は、ほとんどが病院や診療所です。
日本看護協会の調査によると、2つの就職先の割合をあわせると、85.4%にのぼります。
その他の就業場所としては、保健所や教育機関、社会福祉施設などが挙げられます。
【参考】日本看護協会出版会『令和5年 看護関係統計資料集』
看護師になるためにまずは看護師国家試験に合格しよう
看護師になるには、指定された学校を卒業し、看護師国家試験合格を目指しましょう。
この記事では、看護師になるための学校の選び方や費用などもお伝えしました。
また現在、社会人や主婦をしている人が看護師を目指すことも可能であり、その場合も、看護師国家試験に合格する必要があります。
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