看護師は正社員だけでなく、パート・アルバイト・派遣など、さまざまな雇用形態で働けます。
しかし、派遣看護師がどのような働き方をするのかわからず、正社員か派遣かで迷っている人も多いでしょう。
そこで本記事では、看護師の派遣について徹底解説します。
パートとの違いや働き方、メリット・デメリット、派遣看護師に向いている人についてまとめているので、雇用形態に迷っている方はぜひ参考にしてみてください。
看護師の派遣とは?
看護師の派遣とは、派遣会社と雇用契約を結び、派遣先の職場で働く雇用形態のことを指します。
仕事内容は正社員の看護師と同じですが、派遣会社に所属しながら派遣先の病院や施設に勤務して働くのが派遣看護師の特徴です。
給与の支払いや手続きなどは、派遣先の職場ではなく、派遣会社によって行われます。
看護師の派遣は禁止されている?
原則として、病院や医療機関に看護師を派遣することは禁止されています。
ただし例外があり、派遣しても問題ないとされているケースは以下のとおりです。
- 紹介予定派遣による業務
- 社会福祉施設など病院・診療所等以外の施設で行われる業務
- 産前産後休業・育児休業・介護休業中の看護師の代替業務
- 就業の場所がへき地や離島の医療機関
派遣の条件を満たしていないにもかかわらず、違法な派遣求人が掲載されている場合もあります。
派遣で働くことを検討する際には、信頼できる派遣会社を選び、違法な求人に応募しないように注意しましょう。
派遣看護師の社会保険はどうなる?
派遣で看護師を行う場合は、以下の条件を満たしていれば社会保険に加入できます。
- 1年以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 原則2カ月を超える雇用期間であること
- 「1カ月の所定労働日数」と「1日または1週間の所定労働時間」 が、いずれも派遣会社の正規雇用従業員のおおむね4分の3以上であること
※正規雇用従業員の4分の3以下の労働日数・時間であっても、従業員が51人以上の事業者に所属していれば、
- (1)週の所定労働時間が20時間以上
- (2)月額賃金が8.8万円以上
- (3)2ヶ月を超える雇用の見込みがある
- (4)学生ではない
の4つの条件をすべて満たす労働者は社会保険が適用されます。
働く条件によっては、社会保険に加入できないケースもあります。
上記の要件に該当しない場合は、国民健康保険および国民年金への加入が必要なことを把握しておきましょう。
看護師の派遣とパートの違い
パートやアルバイトの看護師は、勤務先の職員として働きます。
福利厚生や待遇・給料などの条件は、すべて勤務先である医療機関の規定が適用されます。
一方、派遣で働く看護師の場合は派遣会社に雇用されるため、福利厚生・待遇・給料などはすべて派遣会社の規定が適用される点が大きな違いです。
また、派遣であっても正社員並みに福利厚生が充実している場合が多く、時給はパート・アルバイトよりも数百円高い傾向にあります。
看護師派遣の働き方
看護師の派遣として働く場合、大きく分けて以下3種類の働き方があります。
- 単発でも働ける「登録型派遣」
- 派遣会社の正社員として働ける「常用型派遣」
- 直接雇用の前に派遣として働ける「紹介予定派遣」
それぞれの特徴をチェックしてみましょう。
単発でも働ける「登録型派遣」
登録型派遣とは、派遣会社で派遣登録し、勤務する期間のみ雇用契約を結ぶ働き方を指します。
契約した派遣期間の満了をもって、雇用契約は終了します。
フルタイムや単発・短期間など、働き方の選択肢が多いのが登録型派遣の特徴です。
自分のライフスタイルにあわせて、働く期間や時間を選びたい人に向いているでしょう。
派遣会社の正社員として働ける「常用型派遣」
常用型派遣は、派遣会社の社員として雇用契約を結び、派遣先で業務を行う働き方をする派遣です。
派遣先での就業期間が終了しても、派遣会社との雇用関係は継続されるのが大きな特徴です。
次の派遣先が見つかるまで、雇用主である派遣会社から給与が継続して支払われるため、収入面での安定性を確保したい人に向いています。
直接雇用の前に派遣として働ける「紹介予定派遣」
紹介予定派遣とは、派遣期間終了後に、派遣先で正社員または契約社員として直接雇用されることを前提として働く派遣です。
派遣看護師として最長6カ月間働き、直接雇用される前に仕事内容や職場の人間関係を確認できるのがメリットです。
「正社員の看護師として働きたいけど、まずは派遣看護師として職場の様子をチェックしたい」という人に向いているでしょう。
看護師派遣のメリット5つ
看護師の派遣として働くメリットは、以下の5つです。
- パート・アルバイトに比べて時給が高い
- 勤務時間の融通が効きやすい
- 残業が少ない
- 人間関係のトラブルに巻き込まれにくい
- 責任が問われる仕事を避けやすい
それぞれ解説します。
1. パート・アルバイトに比べて時給が高い
派遣の多くは時給制となり、相場はパートやアルバイトよりも数百円高い傾向にあります。
派遣の時給が高めに設定されている理由は、以下のとおりです。
- 企業側が派遣の採用コストを抑えられているため
- 限りある期間のなかで専門性の高い人材を集めたいため
給料の水準が低い地方エリアや給料の低い職場でも、派遣であればパートやアルバイトよりも高収入を得られる可能性があります。
時給2,000円以上と高時給の求人もあるため、効率的に稼ぎたい場合には派遣での勤務がメリットになるでしょう。
夜勤が伴う職場であれば、基本時給に加えて深夜手当もつきます。
夜勤看護師は体力を使う仕事ですが、時給の高さに魅力を感じるなら、挑戦してみるとよいでしょう。
2. 勤務時間の融通が利きやすい
正社員の看護師は、労働時間がある程度決まっていますが、派遣であれば勤務時間や期間の融通が利きやすいです。
育児や親の介護などで長時間働けない人は、派遣のほうが都合がつきやすいでしょう。
高時給でありながら、自分のペースで働けるのはメリットです。
自分の希望条件を派遣先へ伝えておけば、条件が合致する職場を選ぶことでトラブルなく働けるでしょう。
3. 残業が少ない
直接雇用と違い、派遣は職場と個人の間に派遣会社が入るため、残業が少ない傾向があります。
派遣先は残業代を支払いたくないため、派遣看護師は提示どおりに退勤しやすいのです。
残業をした場合は、以下のとおりに手当が支給されます。
- 1日の労働時間が8時間を超えると、1時間あたり時給の25%以上の残業手当が支給される
- 22:00~翌5:00の労働は深夜手当の支給対象となり、時給の25%以上の手当が支給される
※22時以降に残業した場合は、深夜手当と残業手当の両方が支給されることになります
たとえば、時給1,500円の職場であれば、残業した時間は最低25%の375円が割増され、時給が1,875円に上がります。
4. 人間関係のトラブルに巻き込まれにくい
多くの職場では、派遣看護師は外部の人間として丁重に扱われます。
職場で正社員として働く看護師と適度な距離を置いた人間関係を保てるため、トラブルには巻き込まれにくいです。
直接雇用の場合は長期間同じ場所で働くケースがほとんどであり、人間関係で問題を抱えると面倒でしょう。
一方、派遣は期間が終了すれば職場を変えられるため、人間関係にかかわるストレスを抱えにくいのがメリットになります。
5. 責任が問われる仕事を避けやすい
対応の難しい患者さんや重たい責任を伴う仕事は、優先的に正社員看護師に割り振られることが多いです。
責任が問われる仕事はストレスもかかりやすいため、避けられるのはメリットとなります。
また、係・委員会・勉強会も、派遣看護師に参加させると医療機関が残業代を支払う必要があるため、免除される傾向があります。
看護師派遣のデメリット4つ
派遣看護師には、メリットだけでなくデメリットもあります。
以下4つのデメリットを把握し、派遣看護師として働くべきか検討してみましょう。
- 正社員看護師よりも給料が少ない
- 同じ職場で長期間働けない
- 研修が手薄な場合がある
- 求人倍率が高い
正社員看護師よりも給料が少ない
派遣看護師は、パート・アルバイトに比べたら高時給ですが、正社員のように昇給やボーナスがないのはデメリットです。
さらに、派遣看護師の給与は年齢・経験に関係なくほぼ一定です。
ベテランの派遣看護師が同年代の正社員看護師と給料を比べると、少なく感じることもあるでしょう。
正社員看護師と仕事内容が同じでも、年収や長期的に見た場合に受け取れる給料が少ない傾向がある点には注意しましょう。
同じ職場で長期間働けない
派遣看護師として働く場合、ほとんどの場合は1年〜1年半程度で労働期間が終了し、最長でも原則3年までです。
雇用期間に制限があるため、「居心地がよいから派遣先で長く働きたい」と考える人にとってはデメリットになるでしょう。
気に入った職場があり、そのまま働き続けたい場合は直接雇用してもらう必要があります。
自身で交渉するか、最初から長く働きたい職場が決まっていれば紹介予定派遣を利用するのもおすすめです。
研修が手薄な場合がある
派遣看護師は即戦力を求められることが多いため、直接雇用の看護師と比べると研修が手薄な場合があります。
看護師経験にもとづいて考慮されることもありますが、キャリアが浅いと不安に感じる人もいるでしょう。
一方で、長期研修を受ける必要がないのはメリットでもあります。
研修を受ける時間や手間をカットしたい人は、派遣であれば働きやすいでしょう。
求人倍率が高い
医療機関で働く看護師の多くは、派遣看護師ではなく常勤の看護師です。
医療機関への看護師派遣は原則禁止であるため、そもそもの募集枠が少ないという現状もあります。
また、社会福祉施設であれば派遣でも働けますが、看護師をそこまで多く必要としていません。
派遣看護師が働ける求人枠があまり多く設けられていないため、求人倍率は高くなりやすいことを把握しておきましょう。
派遣看護師に向いている人
派遣看護師の働き方に向いているのは、以下のような人です。
- 多くの職場で経験と知識を積みたい人
- プライベートを優先して働きたい人
- 期間限定で働きたい人
ひとつでも当てはまる場合は、派遣看護師を検討してみるとよいでしょう。
多くの職場で経験と知識を積みたい人
派遣看護師は基本的に3年以上同じ職場で働けないため、複数の職場でさまざまな経験を積みたい人に向いています。
複数の職場を経験することで、幅広い知識や技術を習得できるでしょう。
正職員看護師の場合、職場を変えるには引継ぎや退職手続き、転職活動など多くの労力が必要です。
その点、派遣看護師であれば契約が満了しても新たな派遣先に変わるだけなので、正社員と比べてほかの職場への切り替えがスムーズなのもメリットです。
プライベートを優先して働きたい人
派遣看護師であれば、自分の都合にあわせて、仕事の時間や場所を決められます。
一般的に正社員看護師の職場では、夜勤や土日祝の出勤が多いところが大半です。
一方、派遣看護師であれば、平日のみ・日勤のみといった条件で働くことも可能です。
プライベートを優先しつつ、看護師として働きたい人には派遣のほうが向いているでしょう。
期間限定で働きたい人
派遣看護師であれば、契約で定められた期間が満期になれば契約終了となります。
数カ月〜1年といった短期間だけ働きたい場合に向いていると言えます。
「臨時収入が必要だから半年だけ働きたい」「転職の繋ぎとして1カ月だけ働きたい」など自分の都合にあわせて働きやすいのが派遣です。
パートやアルバイトよりも時給が高いため、短期間で効率的に働きたい場合は派遣を検討してみるとよいでしょう。
融通が利く働き方を目指すなら派遣看護師を検討しよう
派遣看護師には、登録型派遣・常用型派遣・紹介予定派遣という3つの種類があります。
いずれもパート・アルバイトよりも時給が高く、正社員よりも残業が少ないといったメリットがあります。
勤務時間や期間もある程度指定できるため、自分の都合にあわせて柔軟な働き方をしたい人に向いているでしょう。
ただし、派遣看護師は求人数が少なく、求人倍率が高い傾向があります。
派遣として働けない可能性もあるため、正社員や契約社員も視野に入れながら、検討してみるのがおすすめです。
勤務形態にかかわらず、看護師として働くには看護師国家試験に合格する必要があります。
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