看護師は、「年収が高い」「就職や転職に困らない」などのイメージが強く、現在も人気の高い職業です。しかし、現場の看護師からは、「業務内容や労働環境に給料が見合っていない」との声も上がっています。実際はどちらなのでしょうか。
看護師の年収や給料は、大きく分けて以下の4つの要素から成り立っています。
この他には、さまざまな手当がつくことがあります。代表的な手当は、下記の通りです。
その他の代表的な手当て
・通勤手当
・住宅手当
・扶養/家族手当
・皆勤手当
こちらの手当は、会社が任意で支給の有無を決められます。そのため、病院やクリニックごとに支給条件や内容が異なります。
外せない条件がある場合は、就職前に確認しておきましょう。
看護師の平均年収は、厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、「491万8300円」です。
こちらの金額には、年間の賞与だけでなく、時間外手当や深夜労働手当などの各種手当も含まれています。
また、所得税や社会保険料が引かれる前の額面の金額となっているため、実際の手取り年収は360〜390万円ほどが平均となるでしょう。
出典:厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
厚生労働省の同様の調査によると、看護師以外も含めた職種の平均年収は「487万3000円」でした。看護師のほうが平均年収は高い傾向にあり、「看護師は年収が高い」とのイメージの裏付けにもなっています。
また、女性の全職種の平均年収は「381万9000円」となっており、看護師と比較すると、その差はさらに大きくなります。
看護師は、9割以上が女性のため、一段と高収入のイメージが強くなるのです。
ただ、上記の年収には、深夜労働手当などが含まれています。金額だけを確認して「高い」「安い」と判断しないように注意しましょう。
出典:厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
新卒看護師の基本給は、日本看護協会の「2020年病院看護実態調査」によると、20〜21万円となっています。
具体的には、専門学校卒業の場合「20万2289円」、大学卒業の場合「20万8918円」が平均です。専門卒と大卒の基本給を比べると、大卒のほうがやや高い傾向にあり、6629円の差です。なお、この金額には先ほどの手当は加味されていません。
看護師の基本給は、年に4000〜5000円ほど昇給するのが一般的で、10年目を迎えると24〜25万が基本給となります。
役職についている場合は、基本給に加えて役職手当が付与されます。
看護師の基本給だけを見ると、それほど多くないと感じる方もいるかもしれません。その理由は、看護師が受け取っている手当が関係しています。
看護師の初任給の平均は、深夜労働手当などを含めると、専門卒の場合で「26万2277円」、大卒の場合で「27万292円」です。
こちらでは、看護師の年収に大きな影響を与える、手当についてご紹介します。
時間外手当とは、主に「残業代」を表します。看護師の場合、当番制やシフト制を採用している病院や施設がほとんどのため、極端に多くの残業が発生することはなく、時間外手当が収入に占める割合もそれほど多くありません。
看護師の残業時間の平均は、厚生労働省の発表ではひと月あたり6時間、日本看護師協会の調査では5.2時間となっています。
このデータをもとに、先ほどの基本給を踏まえて時間外手当を算出すると、ひと月あたり約1〜1.2万円、年間で13万円前後です。
深夜労働手当とは、いわゆる「夜勤」によって発生する手当です。深夜労働とは、22時から翌朝の5時までを指し、この時間帯の労働に対して割増賃金が発生します。深夜労働手当は、看護師の収入のなかでも多くの割合を占めており、なかには積極的に夜勤を希望する方もいるようです。
日本看護協会のデータをもとに、看護師の深夜労働手当の平均額を算出すると、2交代制の職場ではひと月あたり5万円前後、3交代制の病院では3万5000円前後となります。年収に換算すると、40〜60万円ほどが深夜労働手当という計算です。
なお、入院患者のいない病院や、夜間の稼働がない施設では深夜労働手当は発生しません。その場合、年収は低下する可能性が高いでしょう。
賞与とは、いわゆる「ボーナス」のことです。一般的には、夏と冬で2回支給され、看護師でもそれは変わりません。
厚生労働省のデータによると、看護師の平均賞与額は「85万7500円」となっています。
賞与額は、勤続年数や経験によって変化するのが特徴です。新卒で看護師として働き始めた場合、賞与額は40〜50万円でスタートします。
その後、勤続年数に応じてボーナスも上がっていき、50歳前後で100万円を超えるのが例年の傾向です。
看護師の年収は、性別や年齢、地域、施設規模などによって変化するのでしょうか。こちらでは、実際のデータを用いて年収の変化をご紹介します。なお、以下で挙げる数字は、すべて厚生労働省の発表に基づいています。
看護師の平均年収は、男性の場合「505万9000円」、女性の場合「490万200円」となっており、男性看護師のほうがやや高い傾向にあります。
これは、女性看護師が出産や育児をきっかけに休職・退職する方が多いことや、男性看護師は大きな病院に勤めているケースが多いこと、家族手当が多くついていることなどが理由に挙げられます。
看護師の年収は、勤続年数や経験によって違いが生じます。新卒で看護師として働き始めた場合、年収は400万円前後でスタートし、毎年少しずつ昇給していきます。その後、50代でピークを迎えるのが一般的で、その金額は560万円前後です。
また、看護師は女性が多いこともあり、20代後半から30代にかけて時短勤務や深夜労働のない働き方を選択する方も少なくありません。そのため、この期間は年収があまり伸びないのも特徴です。
看護師の年収は、勤めている施設のある地域によっても変化します。看護師の平均年収が高い地域と低い地域について、以下の表にまとめました。
上位 |
都道府県名 (平均年収) |
下位 |
都道府県名 (平均年収) |
1 |
青森県 (540万5000円) |
1 |
大分県 (405万円) |
2 |
岐阜県 (530万4000円) |
2 |
熊本県 (424万4200円) |
3 |
神奈川県 (521万8400円) |
3 |
高知県 (440万6700円) |
平均年収の調査は毎年行われており、都市部と地方を比較すると、都市部のほうが高い傾向にあるようです。
ただし、今回の調査では青森県がもっとも高かったように、需要と供給のバランスによっては変動する可能性があります。
看護師の年収は、就業している施設規模によっても変動します。大まかに説明すると、施設規模が大きいほど年収は高くなり、在籍する看護師の平均年齢が若くなる傾向にあります。これは看護師に限ったケースではなく、一般企業でも同様です。より年収の高い職場を求めるのであれば、都市部の大きな病院などに転職する必要があるでしょう。
今回は、看護師の年収についてさまざまな側面からお伝えしました。看護師は、年収が高いというイメージがありますが、交代勤務制や深夜労働など、ハードワークの側面も持ち合わせています。
また、近年は新型コロナウイルス感染症の流行もあり、看護師をはじめとした医療関係者の需要が高まっています。安定的な職種として、今後も高い人気を誇るでしょう。
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