貸金業務取扱主任者資格とは?試験の難易度・合格率を解説 

貸金業務取扱主任者は2009年から国家資格になった比較的新しい資格です。

金融会社や消費者金融、クレジットカード会社といった貸金業者には設置義務があるため、資格を取得すればキャリアアップにつながるでしょう。

そこで、貸金業務取扱主任者の仕事内容や試験の難易度、合格率など、これから試験勉強を始める受験生が知っておきたい情報をご紹介します。

 

貸金業務取扱主任者とは?資格や仕事は?

貸金業務取扱主任者は、金融業界、特に貸金業において非常に重要な役割を担う国家資格です。

まずはじめに、この資格の概要について確認しておきましょう。

貸金業務取扱主任者は貸金業向けの国家資格

貸金業務取扱主任者は貸金業向けの国家資格であり、その主な役割は貸金業におけるコンプライアンス(法令遵守)を徹底することです。

この資格の保有者は、自社が法令を遵守し業務を適正に実施するよう、従業員に対して必要な助言や指導を行います。

また、貸金業務取扱主任者は、貸金業法(第十二条の三)によってその設置が義務付けられています。

貸金業者は営業所または事務所ごとに、その貸金業に従事する従業員50名につき1名以上の貸金業務取扱主任者を設置しなければなりません。

この資格は比較的新しく、2009年の貸金業法改正によって民間資格から国家資格へと移行しました。

これには、過去に社会問題となった「ヤミ金融」などの悪質な貸付行為を排除し、消費者保護を強化するという国の強い意思が背景にあります。

貸金業務取扱主任者が存在するからこそ、私たちは安心して貸金サービスを利用できるのです。

貸金業務取扱主任者を生かせる仕事や年収

貸金業務取扱主任者を生かせるのは、主に消費者金融会社、クレジットカード会社、信販会社などの貸金業を行う金融会社です。

これらの企業では、貸金業法によって貸金業務取扱主任者の設置が義務付けられているため、資格保有者は就職や転職において非常に有利になります。

また、銀行の場合は設置義務がないものの、個人向けのカードローンや住宅ローンなど、貸金業法に関連するローン業務に携わる部署でこの資格を活かすことができます。

貸金業務取扱主任者の具体的な仕事内容は、貸金業法を遵守するための社内体制の整備や社員への研修・指導、そして顧客との契約内容が法律に則っているかどうかのチェックなどです。

金融業界の多くの企業で貸金業務取扱主任者資格の保有者に対して月額5,000円~2万円程度の資格手当が支給されるため、資格の取得は年収アップにつながります。

さらに、この資格取得が昇格や昇給の条件になっているケースも少なくありません。

年収アップだけでなくキャリアアップも視野に入れている方にとって、貸金業務取扱主任者の資格は大きな武器となるでしょう。

貸金業務取扱主任者の試験概要は?受験者・合格率の推移とは?

貸金業務取扱主任者の試験は、貸金業に関する専門知識と実務能力を問うもので、毎年多くの受験者が挑戦しています。

ここでは、試験の概要からこれまでの合格率の推移、さらには受験者の年齢層まで詳しく解説していきます。

試験の概要

貸金業務取扱主任者試験は、日本貸金業協会が指定試験機関となって実施しています。

受験を考えている方は、以下の基本情報をしっかり把握しておきましょう。

試験スケジュール

試験は毎年11月の第3日曜日に実施されます。

令和7年度(2025年度)の貸金業務取扱主任者資格試験のスケジュールは下記のとおりです。

受験申込み受付期間令和7年7月1日(火)~9月10日(水)
試験日令和7年11月16日(日)
合格発表日令和8年1月9日(金)

試験は年に一度なので、受験を希望する場合は申し込み期間を逃さないよう注意しましょう。

受験資格

貸金業務取扱主任者試験には、年齢、性別、学歴などによる受験資格の制限は一切ありません。

 誰でも自由に受験することが可能です。

試験会場(試験地域)

試験は札幌、仙台、千葉、東京、埼玉、神奈川、高崎、名古屋、金沢、大阪、京都、神戸、広島、高松、福岡、熊本、沖縄の全国17地域で実施されます。

受験手数料

貸金業務取扱主任者試験の受験手数料は8,500円です。

試験方式

試験は四肢択一式のマークシート方式で行われます。

試験時間と問題数

試験時間は2時間で、全50問が出題されます。

▼試験の内容(出題範囲・試験科目)

貸金業務取扱主任者試験の内容は、主に以下の4つの分野で構成されています。


分野内容
1法及び関係法令に関すること貸金業法、利息制限法など、貸金業の根幹をなす法律知識
2貸付け及び貸付けに付随する取引に関する法令及び実務に関すること民法、商法、民事訴訟法、倒産法など、貸付けに関連する幅広い法律知識
3資金需要者等の保護に関すること個人情報保護法、消費者契約法など、顧客保護に関する法令知識
4財務及び会計に関すること家計診断や企業会計原則、財務諸表などに関する基礎知識

出題される法令等は、試験実施年の4月1日時点で施行されているものが対象となります。

そのため、最新の法改正情報にも注意を払うようにしましょう。

貸金業務取扱主任者試験の合格率、合格点等の推移

第1回~第19回までの貸金業務取扱主任者試験の合格率は、以下のように推移しています。

年度回数受験者数合格者数合格率合格基準点
令和6年度第19回9,250人2,998人32.4%30問
令和5年度第18回9,448人2,928人31.0%31問
令和4年度第17回9,950人2,644人26.6%28問
令和3年度第16回10,491人3,373人32.2%31問
令和2年度第15回10,533人3,567人33.9%33問
令和元年度第14回10,003人3,001人30.0%29問
平成30年度第13回9,958人3,132人31.5%32問
平成29年度第12回10,214人3,317人32.5%34問
平成28年度第11回10,139人3,095人30.5%30問
平成27年度第10回10,186人3,178人31.2%31問
平成26年度第9回10,169人2,493人24.5%30問
平成25年度第8回9,571人2,688人28.1%30問
平成24年度第7回10,088人2,599人25.8%29問
平成23年度第6回10,966人2,393人21.8%27問
平成22年度第5回12,081人3,979人32.9%30問
平成22年度第4回8,867人5,472人61.7%31問
平成21年度第3回12,101人7,919人65.4%33問
平成21年度第2回16,597人10,818人65.2%30問
平成21年度第1回44,708人31,340人70.1%30問

貸金業務取扱主任者の受験者データ

貸金業務取扱主任者試験の受験者は幅広い年代にわたりますが、特に20代・30代など若い世代の挑戦が目立ちます。

年齢層別の受験者構成と合格率は以下の通りです。

貸金業務取扱主任者の受験者の年齢

年度20歳代以下30歳代40歳代50歳代60歳代以上
令和6年度34.0%28.3%21.3%14.3%2.1%
令和5年度30.1%28.6%21.3%17.3%2.6%
令和4年度29.4%29.2%21.8%17.4%2.2%
令和3年度29.9%27.2%23.7%16.7%2.5%
令和2年度32.8%26.5%22.7%16.1%1.9%
令和元年度28.4%29.7%24.0%16.1%1.9%
平成30年度31.5%30.8%24.0%12.2%1.5%
平成29年度30.1%31.3%24.2%13.1%1.4%
平成28年度24.6%32.3%25.5%16.3%1.4%
平成27年度25.7%31.1%25.5%16.0%1.7%

受験生の年齢別の合格率

年度20歳代以下30歳代40歳代50歳代60歳代以上
令和6年度37.1%35.4%27.6%27.3%30.0%
令和5年度35.0%32.6%27.6%26.8%38.5%
令和4年度30.7%28.1%24.0%22.3%28.4%
令和3年度33.7%31.4%31.4%30.9%42.5%
令和2年度36.8%32.8%32.3%32.5%34.7%
令和元年度30.1%31.1%28.4%30.5%30.6%
平成30年度33.3%31.0%30.3%30.3%33.1%
平成29年度34.5%31.5%30.9%33.3%34.1%
平成28年度28.2%30.4%29.9%36.5%31.6%
平成27年度31.1%29.8%30.5%35.6%32.9%

貸金業務取扱主任者に合格するには?難易度や勉強方法とは?

貸金業務取扱主任者の合格を目指すのであれば、いくつか押さえておくべき情報やポイントがあります。

ここからは、貸金業務取扱主任者試験の難易度、必要な勉強時間、そして効果的な学習方法について詳しく解説していきます。

貸金業務取扱主任者の難易度

貸金業務取扱主任者試験は、決して簡単な試験ではありませんが、他の国家資格と比較すると比較的合格しやすい部類に入るといえるでしょう。

たとえば、試験構成が似ている国家資格の宅建(宅地建物取引士)の合格率が例年15〜17%程度であるのに対し、貸金業務取扱主任者の合格率は概ね30%前後で推移しています。

これは、受験者の約3人に1人が合格するという水準です。

しっかりと対策を立てて学習すれば、十分に合格を狙える資格といえるでしょう。

試験の出題範囲は広すぎることもなく、大きく分けて貸金業法、民法、資金需要者等の保護、財務会計の4分野とされています。

しかし、その多くが法令に関する内容で構成されているため、初学者にとっては法律特有の言い回しや専門用語を理解するのに苦労することがあり、注意が必要です。

合格に必要な勉強時間

貸金業務取扱主任者試験に合格するために必要な勉強時間は、初学者の場合で約180時間が目安とされています。

これは、1日2時間勉強すると仮定すると、およそ3カ月程度です。

実際に、3〜4カ月程度の学習を経て試験に臨む人が多い傾向にあります。

ただし、すでに貸金業での業務経験がある方や、民法など法律に関する事前知識がある方は、さらに短い勉強時間での合格も十分に可能です。

たとえば、貸金業法の知識があれば約90時間、民法等の知識があれば約45〜60時間もの勉強時間を短縮できると言われています。

合格を目指すための勉強方法

貸金業務取扱主任者試験は、効率的な学習が合格への鍵となります。

出題傾向がはっきりしているため、メリハリをつけた学習がポイントです。

貸金業法を最優先で学習する

試験問題の約半数は「貸金業法」から出題されます。

ここでいかに得点を稼げるかが、合否を大きく左右します。

まずは貸金業法を徹底的に学習し、高得点を目指しましょう。

民法も重要!「債権」「契約」を中心に

貸金業法に次いで出題数が多いのが「民法」です。

特に「債権」や「契約」に関するテーマが中心に出題される傾向があります。

貸金業法と民法、この2科目を優先的に勉強することで、効率よく合格に近づけるでしょう。

過去問演習で出題傾向を確認する

過去問演習で出題傾向をしっかりと把握することも大切なポイントです。

知識をただインプットするのではなく、積極的にアウトプットを行うことで、知識の定着にも繋がっていきます。

まとめ

今回は、貸金業務取扱主任者の仕事内容や難易度など、試験勉強を始める前に押さえておきたい基本情報を解説しました。

  • 貸金業務取扱主任者は、貸金業におけるコンプライアンスを徹底するために設置が義務付けられている国家資格
  • 主な仕事は、社内のコンプライアンス体制の整備や従業員への指導
  • 取得すれば、年収アップやキャリアアップにもつながる重要な武器となる
  • 試験は年に一度11月に実施され、年齢・学歴問わず誰でも受験可能である
  • 合格率は例年30%前後で推移しており、他の国家資格と比較すると比較的取得しやすい部類に入る
  • 勉強時間の目安は初学者なら約180時間だが、業務経験や法律の知識があれば短縮が可能
  • 出題数の多い貸金業法と民法を中心に勉強し、過去問演習を繰り返すことが合格への鍵

貸金業務取扱主任者は初学者でも充分に合格を狙える資格ですが、忙しい社会人は勉強時間の確保が難しいため、効率よく学習することが合格への近道となります。

独学での挑戦が不安な方はスタディング 貸金業務取扱主任者講座を活用するのもおすすめです。

スマホやタブレットでいつでもどこでも受講可能なので、通勤電車の中や寝る前などのスキマ時間を有効活用して学習を進められます。

講座は無料で体験できます。短期合格を目指す方は、ぜひチェックしてみてください。