看護師国家試験を受験する場合、必ず確認しなければならないのが「出題基準」です。
出題基準は、定期的に改定が行われるため、確認が遅れると勉強方法にズレが生じる可能性があります。
今回は、看護師国家試験の出題基準について、厚生労働省の公式発表を踏まえてご紹介します。
出題基準とは?
出題基準とは、簡単に説明すると国家試験の「出題範囲」のことを指します。例えば、看護師国家試験と同じく国家試験である司法試験は、日本で施行されたすべての法律が出題されるわけではありません。法務省が事前に出題範囲を制定しており、そこで決められた法律が出題されています。出題範囲を限定することで、内容の妥当性や適切性を担保しやすくなるのです。
看護師国家試験の場合は、厚生労働省から出題基準が発表されています。
なぜ出題基準が重要なのか
看護師国家試験を受験する場合は、事前に出題基準を確認することが大切です。その理由は、主に3つあります。
- 勉強方針やスケジュール管理に役立つ
国家試験への挑戦は、長丁場になることが予想されるため、勉強方針やスケジュール管理が大切です。やみくもに勉強をスタートするのではなく、「何から学ぶべきか」「どうやって勉強を進めるべきか」などをはっきりさせておくことで、勉強の効率は上がります。
事前に出題基準を確認することで勉強方針が明確になり、より効率的な学習ができるようになります。
- 過去問研究に役立つ
出題基準を確認することで、過去問研究の際に不要な部分を勉強する心配がなく、効率的に学習を進められます。
特に、類似した問題が出題されることが多い看護師国家試験では、過去問研究の重要性が高いため、必ず出題基準を確認しておきましょう。
また、出題基準には大項目・中項目・小項目が設定されており、それぞれの問題について出題の目標(ねらい)が定められています。
詳しくは以下に出題基準の一例をまとめていますので、参考にしてみてください。
- モチベーションアップが期待できる
出題基準を確認し、目標や勉強範囲を明確にすることで、モチベーションのアップも期待できます。
長期間勉強を続ける必要のある国家試験対策では、モチベーションが重要です。順調に勉強をスタートさせた方でも、試験日が近づくにつれてモチベーションが低下してしまうケースはよくあります。出題基準を確認し、無理のない学習スケジュールを立てて意欲的に勉強を進めていきましょう。
看護師国家試験の出題基準
看護師国家試験では、厚生労働省が定める「保健師助産師看護師国家試験出題基準」に基づいた問題が出題されます。看護師国家試験出題基準の特徴は、主に以下の2つです。
・それぞれの問題について出題の目標(ねらい)が定められている
・大項目・中項目・小項目が設定されている
上記を踏まえて、看護師国家試験の「必修問題」に関する出題基準の一部を下記の表でご紹介します。
【必修問題 出題基準(一部抜粋)】
目標Ⅰ.健康および看護における社会的・倫理的側面について基本的な知識を問う。
大項目 | 中項目 | 小項目 |
1.健康の定義と理解 | A.健康の定義 | 世界保健機関<WHO>の定義 |
ウェルネスの概念 | ||
B.健康に関する指標 | 総人口 | |
年齢別人口 | ||
労働人口 | ||
将来推計人口 | ||
世帯数 | ||
婚姻、家族形態 | ||
出生と死亡の動向 | ||
死因の概要 | ||
平均余命、平均寿命、健康寿命 | ||
C.受療状況 | 有訴者の状況 | |
有病率、罹患率、受療率 | ||
外来受診の状況 | ||
入院期間 |
※参考:厚生労働省「看護師国家試験出題基準(令和5年版)」
出題の目標には、その問題を通じてどのような知識を会得してほしいのかが記載されています。どれも看護師として活躍するために欠かせない知識です。
また、それぞれの出題範囲には大項目・中項目・小項目が設定されています。試験問題は、各項目をもとに作成されているため、事前に確認することが大切です。ちなみに、必修問題だけで、小項目は243個設定されています。すべて覚えるのは難しいため、暗記する部分と理解する部分を分ける必要があります。看護師国家試験を受験する場合は、厚生労働省のホームページをチェックして、出題基準を確認しましょう。
出題基準の改定について
看護師国家試験の出題基準は、社会情勢の変化や看護師の役割、法律の変化によって、定期的に改定が行われます。
改定のスパンは決まっていませんが、4〜5年に一度行われるのが一般的で、2022年の前は2018年に改定されました。
2020年の秋ごろから次の改定に向けての動きが活発化し、2021年3月31日に、看護師国家試験の出題基準の改定に関する報告書が取りまとめられました。看護師国家試験の出題基準の改定は、「医道審議会保健師助産師看護師分科会保健師助産師看護師国家試験制度改善検討部会」(以下、「検討部会」)が担当しています。
2022年3月28日には令和5年版の新しい出題基準が発表され、2023年から新基準での試験が実施されています。
※参考:医道審議会保健師助産師看護師分科会「保健師助産師看護師国家試験制度改善検討部会報告書」
出題基準を踏まえた勉強のポイント
試験勉強を行う場合、試験の性質や特徴を押さえたうえで方法を検討する必要があります。こちらでは、出題基準を踏まえた勉強のポイントを解説します。
❶基本の徹底
看護師国家試験対策を行ううえで、もっとも重要なのが基本の徹底です。看護師国家試験は、「受験生を落とすための試験」ではなく、看護師として必要な知識が身についているか確認するための試験です。発展的な問題はあまり出題されず、合格率は毎年90%前後を記録しています。そのため、試験勉強の初期段階から基礎を徹底しておくことで、本番で必要となる知識の土台作りにつながります。
看護師国家試験対策のなかでも、もっとも基礎的な内容とされているのが「人体の構造と機能」の分野です。出題数では、「基礎看護学」や「成人看護学」のほうが多いものの、あらゆるテーマの基礎にあるのが「人体の構造と機能」であるためです。合格に向けて、どの分野から手をつければ良いかわからない場合は、こちらを参考にしてみてください。
❷過去問研究が重要になる
看護師国家試験に向けて勉強する場合、過去問研究が重要です。看護師国家試験では、「プール問題」と呼ばれる過去問に類似した問題が必ず出題されます。完璧に同じ問題ではなくても、選択肢が同様であったり、問題文が同じであったりします。そういった問題を確実に解くためには、過去問研究をしておくことが重要です。
検討部会が作成した、看護師国家試験の出題基準の改定に関する報告書でも、プール問題について触れられています。
報告書の「既出問題について」では、プール問題について「難易度の安定化の観点からも有用であり、引き続き活用する」と記載されています。そのため、今後出題基準の改定が行われた後も、過去問研究の重要度は変わりません。
研究する過去問の量は、最低でも過去3年間、できれば5年分の試験問題を解き直すのが理想です。
5年の期間が経過すると、法律が改正されたり看護師を取り巻く環境が変化したりします。その結果、出題される問題のテイストが変化する可能性があるため、5年程度の問題を振り返りましょう。
まとめ
看護師国家試験の出題基準は、定期的に専門家による見直しが行われています。
そのため、受験前に一度は厚生労働省のホームページで出題基準を確認しておくとよいでしょう。