不適切問題は、看護師国家試験の運営元である厚生労働省が、自発的に「この問題が間違っていました」と発表するものではありません。まず、試験終了後に一般社団法人日本看護学校協議会から「第●回看護師国家試験の実施に関する要望書」が提出され、その中で「不適切と思われる問題」の指摘がなされます。次に、厚生労働省内で要望書に関する検討が行われ、合格発表時に「採点除外等の取扱いをした問題」が発表される、という流れです。そのため、日本看護学校協議会が「不適切と思われる」と指摘した問題が、すべて不適切問題とされるわけではありません。
こちらでは、日本看護学校協議会が過去に「不適切と思われる」と指摘した問題の出題例や、要望書の内容をご紹介します。要望書の全文はホームページで確認可能です。気になる場合はチェックしてみましょう。
第109回看護師国家試験に関する要望書で、「不適切と思われる」と指摘された問題は、以下の12問です。
【午前問題】 第11問/第33問/第53問/第85問/第118問 【午後問題】 第15問/第26問/第65問/第72問/第93問/第111問/第117問 |
次に、取り上げられた問題の一部と要望書の内容を確認します。
【午前問題】第53問 軽度認知障害で正しいのはどれか。
【要望書の内容】 FASTによる軽度の認知機能低下について、臨床的特徴に重要な約束を忘れることや、複雑な作業を行う場合の作業の遂行障害があげられている。そのため、選択肢2と3の2つの正解が考えられる。 |
【午後問題】第118問 Aさん(75歳、女性)は、脂質異常症dyslipidemiaと高血圧症hypertensionで通院中で、定期受診のため、外来待合室で順番を待っていた。Aさんは、待合室の雑誌を取ろうと立ち上がり、歩こうとしたところ、右足が思うように動かず引きずって歩いた。外来看護師が声をかけると、Aさんは「らいじょうぶ」と返答したが、ろれつが回らなかった。 この時のAさんの症状はどれか。
【要望書の内容】 Aさんに関する症状の説明が不十分であるため、選択肢2と3の正解が考えられる。 |
なお、第109回試験で実際に「採点除外等の取扱いをした問題」となったのは、午前問題の「第11問/第53問/第85問」、午後問題の「第18問」の計4問です。
一般社団法人日本看護学校協議会..「第106回保健師・第103回助産師及び第109回看護師国家試験の実施に関する要望書」.(参照 2022-3-10)
第108回看護師国家試験に関する要望書で、「不適切と思われる」と指摘された問題は、以下の11問です。
【午前問題】 第5問/第49問/第63問/第72問/第95問/第109問/第110問 【午後問題】 第27問/第99問/第114問/第115問 |
次に、取り上げられた問題の一部と要望書の内容を確認します。
【午前問題】第5問 呼びかけに反応のない患者に対し、医療従事者が行う一次救命処置で最も優先するのはどれか。
【要望書の内容】 医療従事者が行う一次救命処置は、反応がなければまず呼吸をみる。正常な呼吸があれば気道確保を実施。呼吸がなければ直ちに胸骨圧迫となっている。医療従事者向け「JRC 蘇生ガイドライン 2015」では、呼びかけに反応がない場合はまず、呼吸の確認、正常な呼吸があれば→気道確保、呼吸がなければ胸骨圧迫となっている。 呼吸の有無について触れられていないので、1.気道確保、2.胸骨圧迫のどちらも正解となり得ると考える。 |
【午後問題】第27問 標的細胞の細胞膜に受容体があるのはどれか。
【要望書の内容】 設問内容そのものが看護師に求める知識レベルとしては、難易度が高いと考える。 |
なお、第108回試験で実際に「採点除外等の取扱いをした問題」となったのは、午前問題の「第5問/第33問/第110問」の計3問です。第33問については、日本看護学校協議会からの指摘はありませんでしたが、不適切問題として扱われています。このことから、厚生労働省内でも独自に問題の適切性について調査していると考えられます。
一般社団法人日本看護学校協議会..「第102回助産師及び第108回看護師国家試験の実施に関する要望書」(参照 2022-3-10)
不適切問題の有無や採点方法は、点数や試験結果に大きな影響を与える可能性があります。例えば、看護師国家試験の必修問題では、1問1点の問題が50問出題され、8割、つまり40点以上の得点が必要です。しかし、不適切問題が3問存在しすべて採点から除外された場合、満点が47点となるため、合格基準点も「47点×0.8=37.6点」、つまり38点まで下がります。自己採点の結果が39点で諦めていた方が、合格できる可能性が生まれるのです。
実際の試験では、結果への影響を最小限にするために、不適切問題は内容に応じてさまざまな形で採点されます。ここでは、過去の試験結果をもとに、不適切問題の採点方法のパターンを3つご紹介します
もっとも重要なのは、不適切問題の有無にかかわらず合格点を勝ち取れるよう、試験対策に力を入れることです。看護師国家試験は、「落とすための試験」ではなく、「現場に必要な知識を備えているか確認するための試験」と表現されます。そのため、スケジュール立てを行い、コツコツと勉強していれば、合格できる力を着実につけられるはずです。
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不適切問題は1年に複数個報告されるケースも珍しくなく、試験中に受験者が気付く可能性もあります。万が一不適切と思われる問題を発見しても、必要以上に時間をかけすぎないように注意しましょう。問題用紙にマークをつけておき、時間に余裕があったら確認する程度で十分です。
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