看護師の働き方のひとつに、「公務員看護師」があります。
「公務員」という名称から良い印象を受けるかもしれませんが、さまざまな働き方がある看護師だからこそ、それぞれのメリット・デメリットを比較した上で就職先を考えることが大切です。
今回は、公務員看護師の仕事内容や、ほかの働き方にはないメリット・デメリット、実際の職場などをご紹介します。
公務員看護師として活躍するまでの流れも解説しますので、ぜひ参考にしてください。
公務員看護師とは?
公務員看護師とは、国や地方自治体などが運営する公的な機関で働く看護師のこと。看護師の資格を持ちながら、公務員としても活躍する人材です。
公務員には公務員試験に合格している「正式な公務員」と、試験に合格はしていないものの正式な公務員と同等の職務を行う「みなし公務員」、もしくは「準公務員」がいます。公務員看護師にも両者のタイプが存在しますが、どちらも総称して公務員看護師と呼ぶのが一般的です。
公務員看護師の仕事内容
公務員看護師の仕事内容は、民間の病院で働く看護師と基本的に変わりません。具体的には以下のような業務を日々行います。
・医師が行う診療の補助
・患者さん本人や家族への説明、聞き取り
・ナースコールへの対応
・患者さんのカルテ作成
・医師が行う手術の補助
・往診
・入院患者のお世話
このほかにも、点滴や注射、血圧・脈拍の測定など、さまざまな業務があります。病院の規模や施設の充実度によって仕事内容は変化するため、働く場所に応じて臨機応変な対応が必要です。
公務員看護師として働くメリット
こちらでは、公務員看護師として働く場合のメリットをご紹介します。民間の病院で働く場合と比較することが重要です。
毎年昇給がある
公務員と聞くと「給料が高い」イメージがあるかもしれません。しかし、日本看護師協会の調査によると、公的医療機関で働く看護師の基本給が必ずしも高いわけではありません。勤続10年の看護師で比較すると、一般的な医療法人や開業医と同等の給与水準です。給与面を重視して就職先を選ぶ場合は、民間の病院も選択肢も視野に入るでしょう。
公務員看護師として働く場合は、毎年昇給がある点が魅力です。勤続年数が長くなるほど年収も増えていくため、やりがいを感じる方は多いようです。
【出典】「看護職の働き方改革の推進-看護職の給与データ(2018年版)」(公益社団法人日本看護協会)
https://www.nurse.or.jp/nursing/shuroanzen/chingin/data/suijyun.html
退職金やボーナス制度が充実している
公務員看護師は退職金やボーナス制度が充実しているため、最終的な年収が民間の病院で働く場合より高くなるケースもあります。国内の景気によって金額が変わることはあるものの、職場が倒産する心配はなく、必ず受け取れます。退職金はまとまった金額をもらえるため、退職後の人生設計にもゆとりを持ちやすいのが魅力です。
収入が安定している
公務員の給与は、国内の景気や一般企業の平均給与をもとに決定されます。そのため、大きな不況に見舞われると給与が下がったり、ボーナスが減額されたりする可能性があります。実際、新型コロナウイルスによる経済的打撃を受けた2020年、2021年にはボーナス支給額の引き下げが行われました。
しかし、公的医療機関は、一般的な病院と異なり倒産する心配がありません。金額の上下はあるもののボーナスも確実に支給されるため、安定した収入を得られます。
福利厚生が充実している
公的医療機関は、民間の医療機関と比べて福利厚生が充実している傾向にあります。公務員は一般企業の見本となるべく、国が打ち出した働き方改革関連の施策をいち早く導入しているためです。具体的には、以下のような福利厚生制度を設けている病院が多いようです。
・年次有給休暇の取得
・夏季休暇の取得
・通勤手当
・住宅手当
・育児休暇
・育児休業手当金
・産前産後休暇
・介護休暇
・不妊治療のための特別休暇
特に近年は、「女性が活躍しやすい社会」や「ワークライフバランス」が重視されており、育児休暇や年次有給休暇を取得しやすい環境となっています。安定した収入を得ながら、定年まで安心して働きたい、という方におすすめの職場です。
研修制度が整備されている
公的医療機関は、施設の医療水準を高く保つために、さまざまな研修制度が用意されています。中には海外の病院との交流を通して最先端の医療技術を学ぶ機会もあり、看護師としてのキャリアアップにも役立ちます。
公務員看護師として働くデメリット
公務員看護師には多くのメリットがある一方、就職先に選ぶ場合は以下の点に注意する必要があります。こちらでは、公務員看護師として働くデメリットを解説します。
副業禁止規定が設けられている
公務員には法律で「副業禁止規定」が設けられており、これは公務員看護師にも適用されます。そのため、「収入を増やしたい」「ほかの職業も体験してみたい」「長期休暇にやることがない」「スキルアップをしたい」などの理由があっても、アルバイトやダブルワークはできません。
雇用保険に加入できない
看護師に限らず、公務員は雇用保険に加入できません。一般的な企業の会社員と異なり、倒産のリスクがないのが理由です。そのため、公務員看護師を退職した場合は、失業保険を利用できず、再就職時の手当も受けることができません。
設備の古い職場が多い
公的機関は税金で運営されており、それは病院も同様です。そのため、設備投資に費用を充てられないケースもあり、古い設備を長年使い続けている現場も少なくありません。最新の設備に触れたい方や、新しい病院で働きたい方は不満に感じる可能性があります。
年功序列(メンバーシップ型)の雇用制度を採用しているケースが多い
公務員の職場は、給与制度も含めて年功序列主義であり、能力が高くても急に給与が高くなったり、同期との差を広げたりはできません。年齢や勤続年数に応じて評価されるため、コツコツと長く働き続ける必要があります。実力主義の世界を希望している場合は、あまり適さないかもしれません。
公務員看護師の職場の例
公務員看護師が活躍できる職場は、全国に数多くあります。こちらでは、公務員看護師の職場について、国家公務員と地方公務員に分けてご紹介します。
国家公務員の場合
国家公務員の看護師として働く場合は、以下のような施設が候補です。みなし公務員や準公務員として就職する場合も含みます。
・国立病院機構
・国家公務員共済組合連合会(KKR)所属の病院
・国立がん研究センター
・国公立の大学病院
・厚生労働省(国立ハンセン病療養所、看護系技官)
・防衛省(自衛隊病院)
・法務省(医療刑務所)
・宮内庁(宮内庁病院)
それぞれ応募資格が定められているため、就職先として選ぶ場合は募集要項を確認しましょう。
地方公務員の場合
地方自治体が運営する看護師の職場には、以下のような場所があります。
・県立・市立病院、診療所
・公立教育機関
・児童福祉機関
・保健所、保健センター
このほかにも、公立の保育園や幼稚園などで働く看護師もいます。
公務員看護師になるには
公務員看護師として働くには、公務員試験に合格する必要はありません。看護師資格を持っていれば、病院や自治体の求人に応募し、採用試験に合格することで就職可能です。
ただ、公務員看護師の求人は決して多くありません。年に1回、数人の採用を行っているだけというケースも珍しくないため、常にアンテナを張って情報をキャッチする必要があります。
まとめ
公務員看護師は、看護師の働き方のひとつです。民間の医療機関と比べて収入が安定しており、福利厚生や研修制度など働きやすい環境が整っています。
しかし、副業禁止規定や年功序列主義などのデメリットもあるため、自身のキャリアパスを踏まえて就職先を選ぶ必要があります。
また、公務員看護師として働くには、看護師試験に合格しなければなりません。現在別の仕事をしている、独学でうまくいかないなどの悩みを抱えている場合は、オンライン講座を受講してみてはいかがでしょうか。効率良く試験対策を行い、合格に近づくことができます。