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2019年(令和元年)5月試験 FP2級試験の出題講評

2019年(令和元年)5月試験(5月26日実施)の問題の傾向を解説します。

FP2級学科試験

全体

今回の学科試験は、全体的に普通レベルの出題でした。各科目において一部難しい問題も散見されましたが、基本問題で確実に得点していきたい内容でした。合格ラインの60%を考えたときには、全科目均等によく出るテーマを学習していれば、難しい問題ができなかったとしても、十分に合格できるレベルだったと考えられます。

科目1

今回の科目1は、頻出テーマを中心に出題されました。関連法規として、生命保険募集人や社会保険労務士などの資格を有していない場合について的確な判断ができるか問われています。次に、学科試験では珍しく、ライフプランニングに関する各種の表(個人バランスシート、キャッシュフロー表)の作成方法について問われましたが、実技試験対策もしていれば問題なく正解できる内容でした。また、公的医療保険、雇用保険、厚生年金保険、公的年金の老齢給付・遺族給付などのテーマは、定期的に出題される問題ですので、取りこぼしのないようにしましょう。また、最近の傾向として、確定拠出年金の出題が増えていますが、今回の5月試験でも1題出題されています。個人型年金(iDeCo)の掛金の拠出限度額については、種別ごとに確実におさえておきたいものです。また、日本学生支援機構の奨学金についても、近年出題頻度が上がっている問題です。国の教育ローンとの重複ができるかといった内容はしっかり覚えておきましょう。貸借対照表については、資産・負債・純資産の勘定科目の並び方をおさえておけば、問題なく解答できるでしょう。問題2のライフプランニングに関する表の作成方法はやや珍しかったものの、科目全体ではオーソドックスな問題でした。

科目2

科目2では、今回も保険法・保険業法の出題はありませんでした。科目2は、前回に続き頻出テーマ中心の問題でしたので、対策をしっかりしていた方は得点を稼げたのではないでしょうか。生命保険の保険料・契約者配当金の仕組み、生命保険の商品性(2題)、生命保険料控除、法人契約の生命保険の経理処理、自動車保険の商品性、傷害保険の商品性、個人の損害保険の税金、第三分野の保険の商品性は例年通りの出題です。法人契約の保険と経理処理については、各保険の保険料を支払った場合の資産計上・損金算入の割合、保険金・給付金等を受け取った場合の処理を保険の種類ごとにおさえておきましょう。損害保険を利用した家庭のリスク管理、生命保険等を利用した法人の福利厚生についても、各種保険の補償(保障)内容をおさえていれば、対応可能な問題です。全体的に難易度の高い問題、珍しい問題は特に見られませんでした。

科目3

科目3は幅広い分野から出題される傾向にありますが、今回は頻出テーマと準頻出テーマの中に、一部珍しい問題が含まれていました。銀行等の預金の商品性については、仕組預金についても問われましたが、非常に基礎的な問題でした。上場投資信託(ETF)については、どのような指数や指標に連動するETFが上場されているかおさえておけば、確実に得点できる問題でした。債券は利回りと市場金利の変動との関係についてでしたが、珍しく最終利回り・応募者利回り・所有期間利回りの関係性まで問われた内容となっていました。株式市場の各種指数については、日本国内の指数だけでなく、米国・英国の指数も問われ、若干レベルが高い問題となっていました。株式の投資指標については、会社のデータが与えられていますので、計算式を覚えておけば、確実に解ける問題でした。デリバティブ取引等は、難易度の高い選択肢が混ざっていましたが、基本をしっかり理解できていれば正解できる問題でした。効率的市場仮設(ポートフォリオ理論)についても、一見難易度の高い問題に見えますが、基本的な選択肢が1つあるため、その選択肢を落ち着いて解答できれば得点できる問題でした。ジュニアNISA・つみたてNISAについては、話題の制度で、FP試験でも出題頻度が上がっていますので、両制度の概要を一通りおさえておく必要があります。個人のセーフティネットについては、非常に基礎的な内容で確実に得点したい内容でした。最後に出題された投資主体別の売買動向は難易度の高い問題でした。国内市場における投資主体は国内・海外のどちらの投資家が多くを占めているか、法人においても売買額の順序まで問われていました。なお、今回はGDPや日銀短観などの経済指標は出題されませんでした。全体的には一部に珍しい問題も見られたため、解けない問題や自信のない問題もあったかと思いますが、基本問題で得点を重ね、10問中6問以上はなんとかして確保したい内容でした。

科目4

科目4は、例年通りに出題されています。所得税の仕組み、各種所得の分類、損益通算、所得控除、税額控除については、いずれも欠かすことのできない学習項目です。所得税の分野で毎回出題される所得控除については、医療費控除が出題されました。所得控除は各試験で項目を変えて出題されるので、すべての控除項目について基本的な内容をおさえておく必要があります。税額控除については住宅ローン控除の内容を確実におさえておきましょう。所得税の確定申告についても、よく出題される問題ですので、申告の要・不要を確実に判断できるようにする必要があります。今回の試験では、前回に続き法人にまつわる問題が全体で3問出題されました。消費税も含めると4問です。特に法人税の仕組み、法人税の損金、会社と役員間の取引、消費税は、基本的な内容を一通り学習しておいてください。FP2級の試験勉強では、法人税・消費税のテーマは基本レベルの類似問題が出題されているため、過去問演習で対策するのが効果的です。

科目5

科目5では、これまでの傾向通り、頻出テーマが多数出題されました。不動産の売買契約、建築基準法、不動産の譲渡です。これらのうち、建築基準法については、今回も細かい規定まで問われた難易度の高い出題でした。不動産の譲渡については、3,000万円特別控除と軽減税率の特例といった定番問題でした。借地借家法では、今回も「借地契約」に限定して出題されていました。ただ、「借地契約」「借家契約」のどちらが出題されてもおかしくありませんので、どちらにも対応できるようにしておく必要があります。その他には、土地の価格、不動産の登記、都市計画法、不動産の取得に係る税金(不動産取得税・登録免許税)、固定資産税・都市計画税と定番に近い問題が出題されました。これら5つの問題については、基本的な内容が問われているため、得点しやすい内容となっています。最後の不動産の投資判断手法(DCF法、IRR法など)は、難易度が高い項目ではありますが、覚えておけば得点につながるため、上記の頻出テーマをおさえた後に学習されることをお勧めします。

科目6

今回の科目6では、特に難易度の高い問題は含まれておらず、全体的に得点しやすい内容でした。贈与税の計算(相続時精算課税贈与を含む)、贈与税の課税財産、遺産分割(対策を含む)、相続税の課税財産は最頻出テーマです。基礎的な学習をしっかり行い、確実に得点できるようにしておきましょう。その他には、民法上の贈与、宅地の評価、不動産等に係る相続対策についても問われていましたが、いずれも基本的な内容で得点をすることは十分可能です。ただ、各種金融資産の相続税評価については、難易度が高かったため、この問題については正解できなくても仕方がなかったといえます。また、相続税の納税資金対策・事業承継対策については、上記の知識を固めてから応用的な内容としておさえておくようにしましょう。今回も難易度の高い問題は多くなかったため、科目6で着実に加点できた方が多かったのではないでしょうか。

FP2級実技試験

【資産設計提案業務(日本FP協会)】

日本FP協会の実技試験は、今回も定番問題を中心に構成されていました。目新しい点・珍しい点と言えば、少額短期保険の概要に関する問題、定年退職後にアルバイトを始めた人の所得の分類、大学の入学費用の内訳、つみたてNISAとiDeCo(個人型確定拠出年金)の概要に関する問題、自営業者の損益計算書に関する問題です。ただ、全体として難易度が上がったわけではないため、試験本番にできる所から落ち着いて対処できたかがポイントとなります。保険証券の読み取り問題、総所得金額の計算、親族関係図に基づく法定相続分、キャッシュフロー表の穴埋め問題、6つの係数を使った計算、個人バランスシートの純資産額の計算など、日本FP協会の特徴である問題は今回も出題されていました。他の問題も、学科試験とも共通の頻出テーマから多く出題されているため、基本学習と問題演習をしっかり行っていた方は得点できたのではないでしょうか。今後もこの傾向は続くと予想されますので、日本FP協会の試験を受検予定の方は、資産設計提案業務の過去問をしっかり解いておきましょう。

【個人資産相談業務(金融財政事情研究会)】

こちらも出題形式は大きな変更がなく、通常通りの出題といって良いでしょう。公的年金制度の老齢給付に関する知識だけでなく、老齢厚生年金の年金額の計算まで問われるのが金融財政事情研究会(金財)の特徴です。年金額の計算式については、資料は与えられるため、暗記の必要はありませんが、計算練習は反復して行っておく必要があります。株式の購入については、税金や権利付き最終日など若干細かい内容まで問われています。タックスプランニングの分野では、学科試験のように、損益通算の概要や所得控除、総所得金額の計算が出題されているのも今回の特徴です。また、相続・事業承継の分野では、今回も相続税の総額を順序だてて計算させる問題が出題されています。金財の問題は、日本FP協会の問題に比べて、ボリュームがやや多いので時間配分やケアレスミスに注意が必要です。語群選択問題や○×問題かと思いきや、しっかり計算させるという問題もあります。逆に言うと、暗記重視ではないため、理屈を理解し、計算ができるような人は、金財の試験に向いているとも言えるでしょう。
金財の問題は、資料のボリュームが多いのも特徴で、資料の読み取り力が求められます。学科試験対策では、ほぼ資料の読み取りを練習しないので、金財の実技試験を受ける人は、必ず金財の過去問で問題演習をして、出題形式に慣れておきましょう。