平成30年5月試験(5月27日実施)の問題の傾向を解説します。
FP2級学科試験
全体
今回の学科試験は、全体的に普通レベルの出題でした。定番問題が中心でしたが、時折難しい問題が混ぜられた出題で、できる所から確実に得点したい問題でした。合格ラインの60%を考えたときには、全科目均等に基本テーマを学習していれば間違いなくクリアできるレベルだったと考えられます。
科目1
今回の科目1の出題は、準頻出テーマが多く出題されました。公的介護保険、雇用保険の高年齢雇用継続給付、法人の貸借対照表に関する問題などがそうです。これらのテーマは、定期的に出題される問題ですので、学習上は押さえておきたいテーマですが、今回のように集中して出題されると、何問か取りこぼすことがあるので注意が必要です。また、最近の傾向として、第1問は関連法規の定番問題「FPができる・できない」が、他のテーマと絡めて出題されるようになっています。今回は「ふるさと納税」と絡めた問題が出題されました。
科目2
今回は保険法からの出題があり、平成29年度試験では毎回出題されていた保険業法に代わる出題となりました。科目2は、科目1と対照的に頻出テーマ中心の問題でしたので、得点を稼げた方が多いのではないでしょうか。生命保険の商品と種類、生命保険と税金、損害保険の商品と種類から2問、第三分野の保険などは例年通りの出題で、しいて言えば、法人契約の保険と経理処理から2問出題されたことが普段との違いと言えますが、いずれも難易度が高くありませんでした。
科目3
科目3も頻出テーマと準頻出テーマの混合でした。債券の特徴と株式の投資指標の問題は定番中の定番です。ETF(上場投資信託)、株式市場の各種指数、外貨建商品、ポートフォリオ理論は準頻出テーマです。オプション取引は、内容が基本的な内容だったので無事得点できたのではないでしょうか?さらにNISAが連続で出題されています。今回はジュニアNISAでしたが、つみたてNISAもあわせて今後も要注意のテーマです。
科目4
所得税の分野で毎回必ず出題される所得控除については、今回は「医療費・社会保険料・配偶者・障害者控除」が出題されました。所得控除は各試験で項目を変えて出題されるので、全ての控除項目について基本的な内容を押さえておく必要があります。今回の試験では法人にまつわる出題が全体で3問出題されました。消費税も含めると4問です。FP2級の試験勉強では、所得税に重きを置くことが多いので、苦戦した人が多いと思いますが、法人税のテーマはいずれも基本的なレベルの類似問題が続いているので、過去問練習で対策するのが有効です。
科目5
今回の科目5では、頻出テーマが多く出題されました。不動産の登記、不動産の売買契約、建築基準法、居住用財産の譲渡に係る課税の特例です。借地借家関係では、「借地」と「借家」のどちらも出題されているのが特徴の一つです。その他には、不動産の鑑定評価の手法、不動産の保有に係る税金、不動産の有効活用の手法、不動産の投資判断の手法と定番に近い問題が出題されました。
科目6
今回の科目6には、やや難しい問題が含まれていました。相続税・贈与税の財産の評価、不動産に係る相続対策です。これらは頻繁に出題される問題ではないため、間違えても気にする必要はありません。法定後見制度は久々の出題でしたが、基本をおさえていれば得点できる問題でした。取引相場のない株式に係る類似業種比準価額については、一見難しそうですが、計算式の意味合いをつかめていれば、得点も十分可能です。その他には、贈与に関する知識、贈与税の課税財産、贈与税の申告と納付、相続税の遺産に係る基礎控除額、相続税の計算に関する知識、宅地等の評価が出題されました。
FP2級実技試験
【資産設計提案業務(日本FP協会)】
日本FP協会の実技試験は、今回も定番問題を中心に組み立てられていました。目新しい点と言えば、生命保険だけでなく、火災保険の保険証券の読取り問題も出題されたことです。キャッシュ・フロー表の穴埋め計算、6つの係数を使った計算、個人バランスシートの純資産額の計算など、日本FP協会の特徴である問題は今回も健在でした。他の問題も、学科試験とも共通のいわゆる頻出テーマからの出題でしたので、基本学習と問題練習をしっかり行っていた方はクリアできたのではないでしょうか。今後もこの傾向は続くと思われるので、日本FP協会の試験を受験予定の方は、資産設計提案業務の過去問練習をしっかりやっておきましょう。
【個人資産相談業務(金融財政事情研究会)】
こちらも出題形式は大きな変更がなく、通常通りの出題といって良いでしょう。ただし、金融財政事情研究会(金財)の問題は、日本FP協会の問題に比べて、計算ボリュームがやや多いので時間配分やケアレスミスに注意が必要です。語群選択問題や○×問題かと思いきや、しっかり計算が含まれるという問題もあります。逆に言うと、理屈をしっかり理解していて、計算がしっかりしていれば、暗記重視ではないのでこちらが向いている人もいるでしょう。
金財の問題は、設定(資料)のボリュームが多いのが特徴で、資料の読み取り力が求められます。学科試験対策では、あまり資料の読み取りを練習しないので、金財の実技試験を受ける人は、必ず金財の過去問で問題練習をして、出題形式に慣れておきましょう。