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2019年(平成31年)1月試験 FP2級試験の出題講評

2019年(平成31年)1月試験(1月27日実施)の問題の傾向を解説します。

FP2級学科試験

全体

今回の学科試験は、全体的に普通~易しいレベルの出題でした。各科目において時折難しい問題も散見されましたが、基本問題から確実に得点したい問題でした。合格ラインの60%を考えたときには、全科目均等に基本テーマを学習していれば、間違いなく合格できるレベルだったと考えられます。

科目1

今回の科目1は、頻出テーマを中心に出題されました。ライフステージ別の資金活用については、各年代別に常識的な判断ができるようにしておく必要があります。また、公的介護保険、雇用保険、国民年金、公的年金の老齢給付などのテーマは、定期的に出題される問題ですので、取りこぼしのないようにしましょう。離婚時における厚生年金の合意分割制度については、基本的な内容ではあるものの、出題頻度が高くないため、自信を持って解けなかった方もいるのではないでしょうか。住宅ローンの借換えをした場合の総返済額(借換え費用を含む)は比較的新しい論点ですが、<資料>をよく読み係数を正しく選択すれば解ける問題です。損益計算書については、財務比率に関する計算問題でしたが、売上高営業利益率(営業利益÷売上高×100)や自己資本比率(自己資本÷総資産(総資本)×100)などを落ち着いて計算できれば問題ないでしょう。なお、最近の傾向として、1月試験の第1問では関連法規だけでなく職業倫理もあわせて問われています。

科目2

科目2では、今回も保険法・保険業法の出題はありませんでした。科目2は、頻出テーマ中心の問題でしたので、得点を稼げた方が多いのではないでしょうか。生命保険、個人年金保険、総合福祉団体定期保険の商品性、生命保険料控除、生命保険の税金、生命保険契約の経理処理、傷害保険の商品性、損害保険の税金、第三分野の保険の商品性は例年通りの出題です。法人契約の保険と経理処理については、各保険の保険料を支払った場合の資産計上・損金算入の割合、保険金等を受け取った場合の処理を保険の種類ごとにおさえておきましょう。損害保険を利用した事業活動のリスク管理についても、オーソドックスな問題です。全体的に難易度の高い問題、珍しい問題は特に見られませんでした。

科目3

科目3も頻出テーマと準頻出テーマが多くを占めていました。経済指標は日銀短観(全国企業短期経済観測調査)に関する基本的な内容に関する問題でした。投資信託についても分類に関するオーソドックスな問題です。債券については一般的な特徴と債券利回りの計算、株式の投資指標についても計算式が問われるシンプルな問題でした。外貨建て金融商品については、各商品の概要を押さえておけば正解できる問題でした。ポートフォリオ理論は準頻出テーマです。そのうちシャープレシオは近年よく出題されるテーマのため、計算式と効率的な運用の判断方法をおさえておく必要があります。アセットアロケーションはやや出題頻度が低いテーマですが、今回は問題文をよく読めば正解できる問題です。金融商品の税金については、今回はNISAではなく、上場株式等の配当・譲渡が取り上げられています。金融商品販売法・消費者契約法・犯罪収益移転防止法については、細かい内容に深入りせず、基本的な内容をおさえておくようにしましょう。

科目4

科目4は、例年通りに出題されています。所得税の仕組み、各種所得の分類と税金、損益通算、所得控除、税額控除については、いずれも欠かすことのできない学習項目です。所得税の分野で毎回出題される所得控除については、前回の講評で指摘した通り、「配偶者控除・配偶者特別控除」が出題されました。所得控除は各試験で項目を変えて出題されるので、すべての控除項目について基本的な内容をおさえておく必要があります。税額控除については住宅ローン控除の内容を確実におさえておきましょう。今回の試験では、法人にまつわる問題が全体で3問出題されました。消費税も含めると4問です。特に法人税に関する手続き、法人税の損金、会社と役員間の取引、消費税は、基本的な内容を一通り学習しておいてください。FP2級の試験勉強では、法人税・消費税のテーマは基本レベルの類似問題が出題されているため、過去問演習で対策するのが効果的です。

科目5

科目5では、これまでの傾向通り、頻出テーマが多数出題されました。不動産の売買契約、建築基準法、不動産の譲渡です。これらのうち、建築基準法については、今回も細かい規定まで問われた難易度の高い出題でした。延べ面積の限度に関する問題は、比較的難易度の高い問題でした。前面道路反対側ががけ地の場合のセットバックが問題を解くカギとなります。借地借家法では、今回は「借地契約」に限定して出題されていました。ただ、「借地契約」「借家契約」のどちらが出題されてもおかしくありませんので、どちらにも対応できるようにしておく必要があります。その他には、不動産の登記、都市計画法、区分所有法、固定資産税・都市計画税、不動産の有効活用の手法と定番に近い問題が出題されました。これら5つの問題については、基本的な内容が問われているため、得点しやすい内容となっています。

科目6

今回の科目6では、特に難易度の高い問題は含まれておらず、全体的に得点しやすい内容でした。親族等に係る民法の規定、贈与税の計算(贈与税の配偶者控除)、相続人と相続分、相続税の計算は最頻出テーマです。基礎的な学習をしっかり行い、確実に得点できるようにしておきましょう。その他には、民法上の贈与、贈与税の非課税財産、遺産の分割、小規模宅地等の特例、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例についても問われていましたが、いずれも基本的な内容で得点をすることは十分可能です。取引相場のない株式の評価については、会社規模(大会社・中会社・小会社)に応じた評価方法をおさえておくようにしましょう。今回も難易度の高い問題は少なかったため、科目6で得点を上積みできた方が多かったのではないでしょうか。

FP2級実技試験

【資産設計提案業務(日本FP協会)】

日本FP協会の実技試験は、今回も定番問題を中心に構成されていました。目新しい点と言えば、火災保険・地震保険の保険証券の資料問題、配偶者控除・配偶者特別控除の額を求める問題、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関する問題、つみたてNISAとiDeCoの概要に関する問題、相続税の総額の計算問題です。ただ、やや難易度の高い問題はあるものの、全体の傾向は大きく変わっていないため、試験本番に落ち着いて対処できたかがポイントとなります。保険証券の読み取り問題、総所得金額の計算、贈与税額の計算、宅地の相続税評価額の計算式、キャッシュフロー表の穴埋め問題、6つの係数を使った計算、個人バランスシートの純資産額の計算など、日本FP協会の特徴である問題は今回も出題されています。他の問題も、学科試験とも共通の頻出テーマから多く出題されているため、基本学習と問題演習をしっかり行っていた方は得点できたのではないでしょうか。今後もこの傾向は続くと予想されますので、日本FP協会の試験を受検予定の方は、資産設計提案業務の過去問をしっかり解いておきましょう。

【個人資産相談業務(金融財政事情研究会)】

こちらも出題形式は大きな変更がなく、通常通りの出題といって良いでしょう。公的年金制度の遺族給付に関する知識だけでなく、遺族厚生年金の年金額の計算まで問われるのが金融財政事情研究会(金財)の特徴です。年金額の計算式については、資料は与えられるため、暗記の必要はありませんが、計算練習は反復して行っておく必要があります。また、学科試験のように、一般NISAとつみたてNISAや教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関する知識問題が出題されているのも今回の特徴です。金財の問題は、日本FP協会の問題に比べて、ボリュームがやや多いので時間配分やケアレスミスに注意が必要です。語群選択問題や○×問題かと思いきや、しっかり計算が含まれるという問題もあります。逆に言うと、暗記重視ではないため、理屈を理解し、計算ができるような人は、金財の試験に向いているとも言えるでしょう。
金財の問題は、資料のボリュームが多いのも特徴で、資料の読み取り力が求められます。学科試験対策では、ほぼ資料の読み取りを練習しないので、金財の実技試験を受ける人は、必ず金財の過去問で問題演習をして、出題形式に慣れておきましょう。