平成30年1月試験の問題の傾向を解説します。
FP2級学科試験
全体
今回の学科試験は、科目によって難易度の差がありました。科目1と6は少しレベルが高く、他の4科目は定番中心の出題で確実に得点したい問題でした。合格ラインの60%を考えたときには、全科目均等に基本テーマを学習していれば余裕でクリアできるレベルだったと思います。ただし、科目2~5に苦手分野を持っている人にとっては難しい試験になったかもしれません。
科目1
今回の科目1の出題は、準頻出テーマが多く出題されました。「ライフプランニングの考え方・手法」から2問出題されたり、法人の損益計算書に関する穴埋め問題などがそうです。これらの準頻出テーマは、定期的に出題される問題ですので、学習上は必ず押さえておかなければならないテーマですが、今回のように集中して出題されると、何問か取りこぼすことがあるので注意が必要です。また、最近の傾向として、第1問は関連法規の定番問題「FPができる・できない」が、他のテーマと絡めて出題されるようになっています。今回は「遺言」と絡めた問題が出題されました。
科目2
今回も保険業法からの出題があり、これで平成29年度試験では毎回出題されたことになります。科目2は、科目1と対照的に頻出テーマ中心の問題でしたので、得点を稼げた方が多いのではないでしょうか。生命保険の商品と種類から2問、損害保険の商品と種類から2問、生命保険料控除、第三分野の保険などは例年通りの出題で、しいて言えば、家計のリスク管理から2問出題されたことが普段との違いと言えますが、いずれも難易度が高くありませんでした。
科目3
科目3も頻出テーマと準頻出テーマの混合でした。投資信託の特徴、運用スタイル、債券の利回り、株式投資指標の問題は定番中の定番です。外貨建商品、ポートフォリオ理論の期待収益率は準頻出テーマです。しいて言えば、金融派生商品のオプション取引に関する問題が久しぶりに出題されました。ただし、オプション取引は一昨年までは準頻出だったことと、内容が基本的な内容だったので無事クリアできたのではないでしょうか?さらにNISAが連続出題されていて、今回は問題文に「なお、ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)、つみたてNISA(非課税累積投資契約)については考慮しないこと。」という感じで、「つみたてNISA」という言葉も入ってきました。つみたてNISAは平成30年1月からスタートした新制度ですので今回の試験では法令基準日外でしたが、今後出題の可能性が高いテーマです。
科目4
所得税の分野で毎回必ず出題される所得控除については、今年は「雑損・医療費・社会保険料・配偶者控除」が出題されました。所得控除は各試験で項目を変えて出題されるので、全ての控除項目について基本的な内容を押さえておく必要があります。今回の試験では最近の傾向である法人にまつわる出題が多く、全体で4問出題されました。消費税も含めると全体の半分の5問です。FP2級の試験勉強では、所得税に重きを置くことが多いので、苦戦した人が多いと思いますが、法人税のテーマはいずれも基本的なレベルの類似問題が続いているので、過去問練習で対策するのが有効です。
科目5
今回の試験では、不動産の価格と取引に関するテーマが多く全体の半分の5問が出題されました。借地借家関係では、毎回「借地」か「借家」のどちらか1問出題されてきましたが、今回は両方出題されたのも変化の一つです。残りの5問は、建築基準法、区分所有法、不動産の取得に係る税金・不動産の譲渡所得の特例、不動産の投資判断手法と定番の問題が出題されました。
科目6
今回の試験では、科目6に難問が含まれていました。最後の2問の「不動産を相続した場合の相続税の納税資金対策」と「最新の相続・事業承継の動向に関する記述」は、通常レベルから考えると難問ですので、間違えても気にしないでください。特に問題60の「最新の相続・事業承継の動向に関する記述」は、通常の学習範囲を超えているので、捨て問題です。
FP2級実技試験
【資産設計提案業務(日本FP協会)】
日本FP協会の実技試験は、安定の定番問題中心に組み立てられていました。しいて言えば、ファイナンシャル・プランニングの6つのステップに関する問題が久しぶりに出題されたことがトピックです。キャッシュ・フロー表の穴埋め計算、貸借対照表の純資産額の計算、6つの係数を使った計算、保険証券の読取り問題など、日本FP協会の特徴である問題は今回も健在でした。他の問題も、学科試験とも共通のいわゆる頻出テーマからの出題でしたので、基本学習と問題練習をしっかり行っていた方はクリアできたのではないでしょうか。今後もこの傾向は続くと思われるので、日本FP協会の試験を受験予定の方は、資産設計提案業務の過去問練習をしっかりやっておきましょう。
【個人資産相談業務(金融財政事情研究会)】
こちらも出題形式は大きな変更がなく、例年通りの出題といって良いでしょう。ただし、金融財政事情研究会(金財)の問題は、日本FP協会の問題に比べて、計算ボリュームがやや多いので時間配分やケアレスミスに注意が必要です。○×問題かと思ったら、しっかり計算が含まれるという問題もあります。逆に言うと、理屈をしっかり理解していて、計算がしっかりしていれば、暗記重視ではないのでこちらが向いている人もいるでしょう。
金財の問題は、設定(資料)のボリュームが多いのが特徴で、資料の読み取り力が求められます。学科試験対策では、あまり資料の読み取りを練習しないので、金財の実技試験を受ける人は、必ず金財の過去問で問題練習をして、出題形式に慣れておきましょう。