平成30年9月試験(9月9日実施)の問題の傾向を解説します。
今回の学科試験は、全体的に普通~易しいレベルの出題でした。各科目において時折難しい問題も散見されましたが、基本問題から確実に得点したい問題でした。合格ラインの60%を考えたときには、全科目均等に基本テーマを学習していれば、間違いなくクリアできるレベルだったと考えられます。
今回の科目1の出題は、頻出・準頻出テーマが多く出題されました。健康保険は後期高齢者医療制度に限定した出題でしたが、基本的な内容ですので確実に得点したいところです。また、雇用保険の失業等給付、国民年金の保険料、老齢厚生年金、公的年金の遺族給付などのテーマは、定期的に出題される問題ですので、取りこぼしのないようにしましょう。確定拠出年金は、個人型(iDeCo)の拠出限度額まで問われています。住宅ローンの借換えをした場合の総返済額(借換え費用を含む)は新しい論点ですので、難しく感じられた方も多いでしょう。<資料>の通りに計算をできれば解けるのですが、初見で解けなくても気にされる必要はありません。損益計算書については、5つの利益(売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益)の順序と記載場所をおさえておきましょう。また、最近の傾向として、第1問は関連法規の定番問題「FPができる・できない」が、他のテーマと絡めて出題されるようになっています。今回は「医療費控除(セルフメディケーション税制)」と絡めた問題が出題されました。
今回は保険法・保険業法の出題はありませんでした。科目2は、科目1と対照的に頻出テーマ中心の問題でしたので、得点を稼げた方が多いのではないでしょうか。生命保険の商品と種類、生命保険と税金、生命保険契約の保険料等の経理処理、損害保険の商品と種類、第三分野の保険などは例年通りの出題です。法人契約の保険と経理処理については、各保険の保険料を支払った場合の資産計上・損金算入の割合を契約形態ごとにおさえておきましょう。 生命保険を利用した家庭のリスク管理についても、非常にオーソドックスな問題です。全体的に難易度の高い問題、ひねった問題は特に見られませんでした。
科目3も頻出テーマと準頻出テーマが多くを占めていました。経済指標は国内総生産(GDP)などの基本的な内容に関する問題でした。債券の仕組みと特徴、株式の投資指標の問題は定番中の定番です。ETF(上場投資信託)、ポートフォリオ理論は準頻出テーマです。シャープレシオは、基本的な内容だったので、得点できたのではないでしょうか。セーフティネットについては、基本問題のため、確実に得点したい出題でした。ただ、遺言信託の特徴は珍しい出題で、難易度が高く苦戦された方も多かったかと思います。このような難問以外の問題を着実に得点していくことがポイントとなります。最後に、近年の傾向通り、NISAが連続で出題されています。前回の講評でも予想として触れましたが、今回はジュニアNISAとつみたてNISAに関する問題でした。 ただ、基本項目をおさえていただければ確実に解けますので、新しい論点だからと敬遠せずに、積極的に学習しておくようにしましょう。
科目4は、例年通りの出題内容でした。各種所得の分類と税金、損益通算、所得控除、税額控除については、欠かすことのできない学習項目です。所得税の分野で毎回必ず出題される所得控除については、今回は「医療費控除」が出題されました。所得控除は各試験で項目を変えて出題されるので、全ての控除項目について基本的な内容を押さえておく必要があります。次回以降の試験では、配偶者控除や配偶者特別控除についても出題される可能性がより高まります。税額控除については住宅ローン控除の内容を、青色申告については対象となる所得を確実に押さえておきましょう。今回の試験では法人にまつわる出題が全体で3問出題されました。消費税も含めると4問です。特に法人税の損金、会社と役員間の取引、消費税は、基本事項で構いませんので、一通り学習しておいてください。FP2級の試験勉強では、法人税・消費税のテーマは基本的なレベルの類似問題が出題されているため、過去問演習で対策するのが有効です。
今回の科目5では、これまでの傾向通り、頻出テーマが多く出題されました。不動産の売買契約、建築基準法、居住用財産の譲渡に係る課税の特例です。これらのうち、建築基準法については、細かい規定まで問われた難易度の高い出題でした。借地借家法では、今回は「借家契約」に限定して出題されていました。ただ、「借地契約」「借家契約」のどちらが出題されてもおかしくありませんので、どちらにも対応できるようにしておく必要があります。その他には、土地の4つの価格、宅地建物取引業法、区分所有法、不動産の保有に係る税金(固定資産税と都市計画税)、不動産の有効活用の手法と定番に近い問題が出題されました。 これら5つの問題については、基礎からしっかり学習されてきた方にとっては、得点しやすい内容だったのではないでしょうか。
今回の科目6では、特に難易度の高い問題は含まれておらず、全体的に得点しやすい内容でした。親族等に係る民法の規定、贈与税の計算、相続人と法定相続分、相続税の申告と納付は最頻出テーマといえます。基礎の学習を着実に行い、しっかりと得点できるようにしておきましょう。その他には、贈与税の課税財産、相続の承認・放棄、相続税の非課税財産、家屋の評価、平成30年中の相続・贈与に係る税制についても問われていましたが、いずれも基本的な内容で、得点を稼げる内容でした。前回の試験に比べると、難易度の高い問題は少なかったため、科目6でも得点を上積みできた方が多かったのではないかと予想しています。
日本FP協会の実技試験は、今回も定番問題を中心に組み立てられていました。目新しい点と言えば、株式の譲渡所得の取得価額の計算において株式分割が含まれたこと、法人契約の生命保険の経理処理において多くの資料が与えられたこと、セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)に特化した問題です。ただ、難易度が上がったわけではないため、試験本番に落ち着いて対処できたかがポイントとなります。保険証券の読み取り問題、総所得金額の計算、相続関係図に基づく法定相続分、キャッシュフロー表の穴埋め計算、6つの係数を使った計算、個人バランスシートの純資産額の計算など、日本FP協会の特徴である問題は今回も健在でした。他の問題も、学科試験とも共通の頻出テーマからの出題でしたので、基本学習と問題演習をしっかり行っていた方は得点しやすかったのではないでしょうか。今後もこの傾向は続くと思われますので、日本FP協会の試験を受験予定の方は、資産設計提案業務の過去問をしっかり解いておきましょう。
こちらも出題形式は大きな変更がなく、通常通りの出題といって良いでしょう。公的年金制度の老齢給付に関する知識、老齢基礎年金・老齢厚生年金の年金額の計算まで問われるのが金融財政事情研究会(金財)の特徴です。年金額の計算式については、資料は与えられるため、暗記の必要はありませんが、計算練習は反復して行っておく必要があります。また、学科試験と同様に、つみたてNISAやセルフメディケーション税制に関する語群選択問題が出題されているのも今回の特徴です。金財の問題は、日本FP協会の問題に比べて、ボリュームがやや多いので時間配分やケアレスミスに注意が必要です。語群選択問題や○×問題かと思いきや、しっかり計算が含まれるという問題もあります。逆に言うと、暗記重視ではないため、理屈を理解し、計算ができるような人は、金財の試験に向いているとも言えるでしょう。
金財の問題は、資料のボリュームが多いのも特徴で、資料の読み取り力が求められます。学科試験対策では、ほぼ資料の読み取りを練習しないので、金財の実技試験を受ける人は、必ず金財の過去問で問題演習をして、出題形式に慣れておきましょう。
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