ダブルライセンスインタビュー 大原有樹さん

非IT社員が挑む工場のDX。ビジ法×ITストラテジストで牽引役に

ダブルライセンスインタビュー 大原 有樹さん

薬学部を卒業し、製薬会社の工場で働く大原有樹さん。
製造の外部委託や工場のDXなど、専門外の知識が必要とされる業務に対応するため、法律系・IT系の資格を複数取得。
スタディングではビジネス実務法務検定試験(ビジ法)2級とITストラテジストを取得しました。

業務上の必要性からスタートした大原さんの資格取得ですが、
人生100年時代に自分の理想の生き方を実現するためにも、資格が大いに役立つと考えているそうです。

複数資格を現在そして未来の仕事にどう生かすのか、
難関の資格に次々とチャレンジするその思いについてお話を伺いました。

大原 有樹さんのキャリア

業務で専門外のビジネススキルが必要に
製造の外部委託のためにビジ法2級取得
DX推進のためITストラテジストなどのIT系資格を取得
健康寿命まで長く活躍できる生き方に憧れ
さらなる資格取得に挑戦中

01薬学の知識だけで
いい時代ではなくなった

――現在のキャリアについて教えてください。

大学の薬学部を卒業して製薬業界に進み、現在は薬の研究開発に関わる幅広い業務を担当しています。薬学の道に進んだきっかけは、子どものころの思い出。持病があり毎日2回の注射が必要な家族がいたのですが、新しい薬が開発されるたびに注射の回数が減り、最終的には数日に1回でよくなったのを目の当たりにしました。新薬がもたらす効果がとても興味深く、薬の開発に携わりたいと思うようになったんです。

新卒で入社した会社では4年ほど働き、主に医薬品の研究を担当して薬学や生物化学工学の専門知識を使った基礎研究に注力しました。今の会社に転職したのは2020年。会社の規模が大きく、より多くの人に必要とされる医薬品に関われるようになりました。

この転職を機に業務内容に変化がありました。組織のマネジメントや新製品の企画を任され、生物化学や薬学の知識だけではなく幅広いビジネススキルが求められるようになったんです。薬学の知識だけあればいいという時代ではなくなったと感じましたね。

新しい技術や手法を積極的に取り入れようとする社内の雰囲気にも後押しされ、法律やITに関わる資格に興味をもち、2021年にビジネス実務法務検定試験(ビジ法)2級、2023年にITストラテジストをそれぞれ取得しました。

大原さん写真1

02製造の外部委託は契約が不可欠
ビジ法で法律の基礎を習得

――薬学以外の知識に目を向けるなかで、ビジ法2級を取得した経緯を教えてください。

自社で工場を持たずに外部に委託する「ファブレス化」があらゆる業界で導入されています。製薬業界でも2000年代からファブレス化が進み、弊社もその流れの中にありました。しかし、外部への委託というのはそう簡単に進む話ではないんです。

製造業の現場には、ものづくりの知識や経験は豊富にあるのですが、外部と協力してビジネスを進めた経験がある人材はほとんどいません。弊社でも契約に伴う手続きなど何もかもを手探りで進めている状況でした。そんなとき、ビジ法を取得して法律の基本を身につければ業務の役に立つのではないかと思ったんです。

――取得後にはどのような変化がありましたか?

今までは契約の内容も法務部に任せっきりでしたが、取得してからは「ここは契約に盛り込んだほうがいい」「この項目に違反すると大変だ」など、実務を進めるうえで必要な法律の肌感覚のようなものが身についたと思います。

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03誰もが手探りの製造業DX
資格を取得して旗振り役に

――資格が実務に役に立つ実感を得て、ITストラテジストも取得されました。こちらも経緯を教えてください。

社会全体でDXが進む中、弊社でも「工場の運営にデジタル技術を活用したい」という声があり、2023年からDXプロジェクトが始動しました。といってもまだ始まったばかりなので、どんなことができそうかを探っている段階です。DXに関心がある有志約20人が集まり、業務効率化、機械のIoT化、サイバー上に仮想工場を作るデジタルツインなどについて情報収集や導入の検討をしています。

取り組む中で出てきた課題が、DXの戦略を担う人材がいないことでした。技術を持つ企業の話やDXのコンサルタントの提案を聞いても、情報を取捨選択できる人材が社内にいなかったため、プロジェクトをこの先どう進めればいいのかわからない状況だったのです。

――さまざまな情報を俯瞰したうえで、適切に選択して自社に落とし込む必要がありますね。

この状況を脱するには「IT戦略とはこうあるべき」という王道の考え方をまず理解したいと考えました。その手段として選んだのがITストラテジストの資格取得だったのです。ITストラテジストは12種類ある情報処理技術者試験の中でも最難関資格の1つなので、取得すれば社内でプロジェクトの旗振り役にもなれると考えてのことです。

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04スマホで細切れに勉強
100時間でITストラテジストに合格

――取得されて間もないITストラテジストの勉強についてお伺いします。数ある勉強法の中で、スタディングを選んだ理由は?

実はITストラテジストを受ける前に、1つ下のレベル3の資格である応用情報技術者を独学で取得していました。ITストラテジストも最初は独学も考えましたが、最難関の資格だけあって問題のレベルが非常に高く、1人では歯が立たないと感じたんです。そこで講座を受講することにして、仕事や子育てで忙しい中でも続けやすそうだったスタディングを選びました。

――どのように勉強を進めていきましたか?

まとまった勉強時間を確保するのが難しかったので、時間を細かく区切って勉強しました。通勤の車の中で講義を聞く、昼休みの15分間で問題を解く、夜は子どもが寝た後の30分間集中するなど1日の中で時間を積み重ね、平日は1日1〜2時間ほど取り組みました。

合格までの勉強時間は100時間ほど。私はIT部署にいるわけでもないですし、一般的に合格まで150〜200時間程度かかるといわれる資格なので、想定より早く合格できました。スマホ1台で細切れに勉強できるスタディングのスタイルが、自分に合っていたのだと思います。

――ITとは関係のない部署にいながら勉強をしてきて、特に苦労したことはありましたか?

大きくつまずくことはありませんでしたが、やはりテクノロジーの分野の勉強は難しかったですね。コンピューターの基礎知識や2進数といったテクノロジー分野の勉強は、ITを初めて学ぶ人にとって一番の鬼門ですが、学習の基礎となる重要な部分です。

しっかり理解するために動画を繰り返し見て、何度も復習しました。時間はかかりましたが、スタディングの講義は初学者でも理解しやすいように作られていたので、最後まで気持ちが折れることなく取り組めたと思います。

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05ダブルライセンスで
社内のIT戦略を加速させる

――ビジ法とITストラテジスト、2つの資格を仕事にどう生かしていますか?

いずれの資格も社内に知見がなく、仕事の進め方がわからない状態から前進する助けになっています。また、現在進行中のDXプロジェクトにも2つの資格が生かせると思っています。

プロジェクトの上流工程で必要になるのが、ITストラテジストの知識です。ITストラテジストの役割は、社内の課題や要望をまとめて仕事の方向性(戦略)を示すこと。コンサルティング会社を頼ることもできますが、自社の課題を理解してもらうだけで一苦労なんです。ITストラテジストの勉強をしてIT戦略の王道を理解できたので、外部に頼らずとも自社に合う戦略を立てられるのは大きな強みになると思います。

プロジェクトの下流工程、つまりプロジェクトを実行するときに役に立つのは、ビジ法の知識です。社外の関係者とのやりとりの中で法律の知識を生かせれば、自社にとってより良い結果が得られると考えています。

――大原さんの会社では新しい技術や手法を積極的に取り入れていますが、製薬業界全体としてもこうした動きがあると感じますか?

残念ながら製薬業界は硬直性が強く、業界全体の慣習や規制は昔からほとんど変わっていないんです。新薬はどんどん開発されていますが、20〜30年前に承認を取った方法をそのまま続けている企業も少なくありません。業務改善や安定生産に向けた取り組みはまだまだ改良の余地が大きいので、まずはITやビジネスの知識を使って自社を改善し、ひいては業界全体を新しい技術や手法に前向きな雰囲気に変えていきたいです。

業界全体が新しい技術にオープンになれば、より効率的な方法が確立し、結果としてより多くの人に薬を届けることができます。社会的意義の大きい製薬業界に、資格を生かして自分なりの貢献ができたらうれしいですね。

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06「社会人としての寿命」を
「健康寿命」に近づけたい

――現在30代前半とのことですが、今後のキャリアはどのように考えていますか?

会社の業務に生かすために資格を取ってきましたが、今はいずれ会社を離れた後のキャリアも視野に入れています。『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(東洋経済新報社)という本に大きな影響を受けました。人間が100年以上生きる時代の人生戦略についての本で、大ヒットしたのでご存知の方も多いでしょうか。

人間には社会人としての寿命、健康寿命、生物としての寿命があり、これら3つの寿命の間隔をできるだけ縮める生き方が理想的と言えます。でも、人生100年時代になると3つの寿命の間隔はどんどん開いてしまいます。中でも社会人としての寿命を健康寿命に近づけることが特に難しいですよね。

会社員として勤め上げるだけでは、この差は開いたまま。会社を辞めても通用するスキルが必要です。そのために一番手っ取り早い方法が資格取得だと私は考えています。

国家資格を持っている人の中には、亡くなったことを理由に資格を取り消される方がいます。私にとって、これこそが3つの寿命が一致した理想の形だと思いました。資格を生かして最期まで社会に貢献する、そんな人生の幕引きに憧れます。

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07資格取得は今後も続く
中小企業診断士や弁理士にも意欲

――複数資格を生かして、大原さんが今後成し遂げたいことを教えてください。

工場での経験と国家資格を組み合わせ、将来的には製薬工場のコンサルタントとして個人で仕事ができればと考えています。製薬業界では、工場に長年勤めた経験や厳しい規制に精通しているという強みを生かし、退職後に工場コンサルタントとして独立する方は珍しくありません。私も会社を離れても自分の力で働き続け、製薬業界のために尽力できればうれしいです。

独立した方の名刺には複数の難関国家資格が載っていることが多く、私が資格を意識した1つのきっかけにもなりました。ビジ法、ITストラテジストに続いて、現在は中小企業診断士や弁理士の勉強も始めています。資格取得後には副業として始めてみるなど、この目標に向かってできることを少しずつ積み重ねていきたいですね。

――ダブルライセンスを目指す方へメッセージをお願いします。

資格は自分の武器です。資格を取って自分のやりたいことに挑戦する「攻めのタイプ」、将来が不安だからセーフティーネットを張りたい「守りのタイプ」、どちらの方にとっても資格は大いに役立ちます。さらにその数が多ければ多いほど、自分の装備も増えていきます。ダブルに止まらず、ぜひトリプルやその先まで目指してみてください。

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あなたにとって資格とは?

ダブルライセンスインタビュー 大原さん

ライター:今泉知穂
編集:浜田有希子
写真:竹内志行

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