ダブルライセンスインタビュー 納野聡美さん

40代の税理士挑戦 複数資格で実現したい働き方とは?

ダブルライセンスインタビュー 納野 聡美さん

転職エージェントとして長年活躍してきた納野聡美さん。
業界の変化や新型コロナを機にキャリアチェンジを決意し、
現在は3人のお子さんを育てながら税理士を目指しています。

納野さんの信念は「会社に頼らず、自分でキャリアを築く」。

資格を「やりたいことを実現するための手段」と位置づける納野さんが、
宅地建物取引士(宅建士)と合わせ、税理士を取った先に描く未来とは?

納野 聡美さんのキャリア

前職で疲弊 新たな収入源を模索
安定収入+強みを生かせる税理士に興味
コロナで仕事に大打撃 できた時間で宅建取得
税理士試験の必須科目に合格
課題をトータルで解決できる存在へ

01山一破綻の衝撃、男女差別……
「キャリアは自分で築く」思い強める

――納野さんのこれまでのキャリアについて教えてください。

現在は不動産会社でのパート勤務と夫が営む会計事務所の手伝いをしながら、税理士を目指して勉強しています。20代から数年前まで長い間キャリアの柱となっていたのは転職エージェントで、ハイキャリアの方の転職支援を強みとしていました。複数社に勤めたのち、出産後は2020年まで個人事業主として働きました。

自分の核にあるのは「会社のキャリアに期待しない」という思いです。きっかけは、大学受験の勉強に明け暮れていたとき、山一証券の破綻を目の当たりにしたこと。「がんばって勉強して大企業に入っても安泰ではないんだ」とショックを受けました。

さらに就活時には露骨な男女差別も経験しましたし、就職氷河期世代でもあります。そんな時代に社会に出たので、会社に期待はしない。転職エージェントとしてお客様のキャリアを支援してきたのも、この考えがあってこそだと思います。

納野さん写真1

02出産後に業界激変で疲弊
そこへコロナのダメ押し

――転職エージェントから税理士を目指すのはキャリアの大転換ですね。何がきっかけだったのですか?

そもそものきっかけは、転職エージェントを介さず求職者と企業を直接つなぐ転職サービスが急速に広まり、業界が大きく変わったことです。2010年代半ばのことですね。従来の転職エージェントは情報とネットワークを駆使してマッチングしていたのですが、データベースが誰にでもオープンになったことで「どれだけ数をこなせるか」の勝負になり、体力も時間もある若い人ほど有利な状況へと変わったんです。

当時の私は子育ての真っ最中。長女に続いて双子の次女・次男を出産し、会社勤めを経て個人事業でエージェントをやっていました。競争が激化する中でもまだ勝算があった対面サービス業界の転職支援で戦いましたが、頭の片隅で「いつまで続けられるんだろうか」「転職エージェント以外にも収入の柱を作らなければ」と考えるようになりました。

そんな状況に追い討ちをかけたのが、2020年の新型コロナです。対面サービス業界が打撃を受け、私の仕事も急激に減ってしまいました。本当はもっとゆるやかに次のキャリアへ移行していきたかったのですが、状況が一気に動きました。

納野さん写真2

03税理士なら自分の武器を生かせる
資格取得で理想のキャリアへ

――キャリアチェンジせざるを得ない状況に追い込まれ、納野さんが目をつけたのが税理士でした。その理由は?

実は、税理士にはコロナ禍以前から目をつけていました。転職エージェントの報酬は転職成立で発生する「スポット型」ですが、税理士の報酬は毎月の顧問料が入ってくる「サブスク型」だと気づいたんです。税理士業で安定収入を作り、そこに転職エージェント業の報酬を上乗せすれば、無理なく働き続けることができると考えました。今となっては転職エージェントの仕事がゼロになりましたが、税理士は相続税申告のようにスポット型の報酬を得る道もあるので、「スポット+サブスク」のスタイルでやっていけるのではないでしょうか。

それに、転職エージェントの経験と税理士の資格を組み合わせれば、お客様の課題を総合的に解決できる点にも魅力を感じました。転職エージェントの仕事では、オーナー企業の事業承継、次の10年の経営に向けた幹部人材を採用したいというご相談があったのですが、マッチングがうまくいかず、最終的に投資ファンドに買収されてしまう例も珍しくなかったんです。厳しい現実を前にしても転職エージェントができることには限界があり、歯がゆさを感じていました。

「私はお客様のために何がしたいのか、どうやって力になれるのか」と考えたとき、税理士として税務相談で経営をサポートする道に興味を持ちました。もともと数字に強いということもありましたし、税理士なら数年かけて勉強すれば40代からでもなれるんじゃないかと。

――転職エージェントと税理士、一見すると関連性は低そうですが、納野さんの経験や強みから導き出された道なのですね。

そうですね、自分の武器を把握した上で、勝てるフィールドだと見込んで税理士への挑戦を始めました。目指す働き方・やりたいことがあって、現状とのギャップを補う手段として資格を活用しています。

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04「税理士×宅建士」で仕事が広がる
目指すはトータルアドバイザー

――税理士試験に挑戦する一方、宅地建物取引士(宅建士)も取得されていますね。経緯を教えてください。

税理士試験の勉強はコロナ禍の前から始めていたのですが、新型コロナの感染拡大で子どもの学校が3カ月間休校になり、年に1回の試験のタイミングを逃しました。仕事も激減して時間をもてあましていたところ、アパートを経営している父に「宅建士を取ってバイトでもしたら?」と言われたんです。いずれは父の物件を受け継ぐ見通しでしたし、バイトに行くにも丸腰では採用されないですから、資格を取っておくことにしました。

宅建取得後は、もともと興味のあった相続分野を専門とする税理士事務所で働きました。相続では不動産評価額を計算する際に宅建士の知識を生かせます。

――近い将来に税理士試験も突破すれば、宅建士と税理士のダブルライセンスとなります。納野さんはどんな未来を描いていますか?

税理士と宅建士の資格を組み合わせて、お客様を幅広くサポートする仕事がしたいです。税理士の主な仕事は「人が行動した結果に対し、税金がいくらかかるか」の計算。そこに不動産取引の知識が加われば、行動する前にも助言ができるんです。

例えば、親御さんの不動産相続により、家の売却を考えているお客様の場合。相続税は納付期限があるので、早く手放したいと焦るあまり、貴重な財産を安く売ってしまう方も多いのが現状です。もし不動産に関する提案を先にできていれば、状況は違ったかもしれません。目指すところは、お客様が抱えるさまざまな課題をトータルで解決できるアドバイザーです。

――税理士を取得できたら、さらに3つ目の資格として取得してみたいものはありますか?

挙げるとすれば司法書士です。税理士は相続発生後の対応をしますが、司法書士は相続前からお客様の相談にのれて面白そうだなと。「税理士×宅建士」と同様にお互いの業務を補完できる資格だと思います。

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05学習1周目は「終わらせる」を意識
スキマ時間で2科目合格

――税理士を目指す際に、スタディングを選んだ理由を教えてください。

決め手は安さです。必須科目(簿記論と財務諸表論)の対策講座が割引価格で4万円程度(※)。「これなら失敗しても大丈夫」という気持ちで始めることができました。実際にやってみると、学習内容が細切れになっているので1日の目安を立てやすいし、あまり勉強できなかったら翌日は多めにやるなど柔軟にコントロールできて便利です。
※:納野さんの申し込み当時の価格・キャンペーンです。

――どのように勉強を進めていますか?

とにかくスキマ時間を活用しています。動画講義でのインプットは通勤電車で。理解できなくても止めずに聞き続けるのがポイントです。そのあとはスマホでできる正誤問題に取り組みます。

問題集に取り組むのは家事の合間です。子どもを学校に送り出してから仕事に行くまでの30分、帰宅して夕飯を作り始めるまでの30分を使い、テーマ別の問題を解きます。試験の直前は、休日に1〜2時間集中して総合問題に取り組んでいます。

――勉強で工夫しているポイントはありますか?

1週目の学習は、内容を理解できなくても、とにかく最後まで終わらせることです。解答を書き写しながら理解する、ということもしています。動画を1回聞いただけでは解けない問題ばかりですが、そこは割り切り、書き写しながら理解を深めるよう意識しています。

――税理士試験を突破する(官報合格)には合計5科目の合格が必要ですが、今はどんな状況ですか?

勉強開始から約2年後の2022年に、必須科目の2科目(簿記論と財務諸表論)に合格しました。当初は3年くらいで5科目が揃うだろうと考えていましたが、実際にやってみるとそうはいかないものですね。私は数字には強いのですが、法律の勉強に難しさを感じました。今は焦らず1科目ずつ合格を積み上げていく計画です。

実は、公認会計士の夫が私の勉強に理解を示してくれたのは必須科目に合格したときが初めてでした。彼は士業の世界にいるので、資格試験に何年も受からず苦労する人たちを身近なところで見てきたんだそうです。税理士を目指すことがどれだけ大変か、私よりもリアルに想像できたので反対していました。でも必須科目をクリアできたのを見てこの先も見込みがあると感じたようで、今では応援してくれるようになりました。

2023年は1科目受験しました。官報合格まで時間はかかりますが成し遂げたいと思います。

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06調和のとれた人生のために
資格を取りたい

――人生にはキャリア以外にも、家族や人とのつながりなどさまざまな要素があります。納野さんはどんな生き方を理想としていますか?

私の親世代は長時間通勤や長時間労働が当たり前の働きバチで、家族との関係や健康を犠牲にする人も少なくありませんでした。でも私は「仕事」と「それ以外」をスパッと切り離すような生き方は絶対したくないですね。人生のいろんな要素がうまく混ざり合って、全体として満足度の高い人生を送りたいです。

もしかしたら、今すぐ真面目に就職活動をすれば、正社員として就職できてパート勤めよりもよっぽど高い収入を得られるのかもしれません。でも、それは私が目指す生き方ではないんです。子どもが生まれてライフステージが変わっていく中で、人生のトータルバランスがより大切になっていきました。調和のとれた生き方がしたくて、今、資格の勉強をしています。

あとは、自分が仕事でやったことを家庭に生かし、家庭で実践したことを仕事に生かす、結局そういうのが一番効率がいいなというのも、なんとなく感じています。

――最後に、ダブルライセンスを目指してがんばっている方に向けてメッセージをお願いします。

資格勉強で大切なのは、「問題を1回解いたけど全然わからない」とすぐに諦めないこと。何事も最初は苦しいんです。2回目以降に少しずつ答えが理解できてくると、勉強が楽しくなります。休み休みでいいので、その壁を乗り越えるまで踏ん張ってください。

資格が2つ以上あれば、それらが補い合って新しいフィールドができます。その分野で仕事ができれば収入が生まれますし、自分の知見も広がります。まずは自分の得意なことや好きなことから「新しい武器」を見つけてはいかがでしょうか。

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あなたにとって資格とは?

ダブルライセンスインタビュー 坂 樹さん

ライター:今泉知穂
編集:浜田有希子
写真:竹内志行

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