個人商人及び商行為に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
ア.商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは,その申込みは,効力を失う。
イ.保証人がある場合において,債務が主たる債務者の商行為によって生じたものであるときは,主たる債務者及び保証人が各別の行為によって債務を負担したときでも,その債務は,各自が連帯して負担する。
ウ.商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは,その他人が商人であるか否かにかかわらず,相当な報酬を請求することができる。
エ.商行為によって生じた債務に係る債権が指図債権である場合でも,その債務の履行をすべき場所がその行為の性質又は当事者の意思表示によって定まらないときは,その債務の履行は,債権者の現在の営業所においてしなければならない。
オ.商人間の売買において,買主がその目的物の受領を拒んだために売主が相当の期間を定めて催告をした後にその物を競売に付したときは,売主は,遅滞なく,買主に対してその旨の通知を発しなければならず,これを怠ったときは,その競売は,無効となる。
1.ア イ 2.ア エ 3.イ ウ 4.ウ オ 5.エ オ
解答:5
ア 正しい
商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失います(商法508条1項)。
したがって、記述アは正しいといえます。
イ 正しい
保証人がある場合において、債務が主たる債務者の商行為によって生じたものであるとき、主たる債務者及び保証人が各別の行為によって債務を負担したときであっても、その債務は、各自が連帯して負担します(商法511条2項)。
したがって、記述イは正しいといえます。
ウ 正しい
商法512条は「商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。」と定めています。
したがって、記述ウは正しいといえます。
エ 誤り
弁済の場所の原則は債権者の現在の住所・営業所ですが(民法484条、商法516条1項)、商行為によって生じた債権が指図債権であり、その債務の履行をすべき場所がその行為の性質又は当事者の意思表示によって定まらないときは、債務者の現在の営業所においてすることになります(同条2項)。
したがって、債権者の現在の営業所としている点で、記述エは誤っています。
オ 誤り
商人間の売買において、買主がその目的物の受領を拒んだとき、売主は、相当の期間を定めて催告をした後にその物を競売に付することができます(商法524条1項前段)。この場合、売主は、遅滞なく、買主に対してその旨の通知を発しなければなりませんが(同項後段)、通知を発しなかったとしても、競売が無効になることはありません。
したがって、記述オは誤っています。