株主総会決議の取消しに関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
ア.株主総会決議に取消事由がある場合には,訴え以外の方法によって決議を取り消すことができる。
イ.株主総会における取締役選任決議の取消しの訴えは,会社及び取締役を被告としなければならない。
ウ.株主総会における取締役選任決議の取消しの訴えと,同じ株主総会における計算書類承認決議の取消しの訴えが同時に係属しても,その弁論及び裁判を併合する必要はない。
エ.株主総会決議の取消しの訴えに係る請求を認容する確定判決は,第三者に対してもその効力を有するが,その請求を棄却する確定判決は,第三者に対してはその効力を有しない。
オ.株主総会決議の内容が定款に違反することを理由とする株主総会決議の取消しの訴えの提起があった場合において,裁判所は,その違反する事実が重大でなく,かつ,決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは,その請求を棄却することができる。
1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ オ 5.ウ エ
解答:5
ア 誤り
株主総会決議の取消しの訴えは形成訴訟と解されており、決議を取り消すためには訴えによらなければならないと解されています。
したがって、記述アは誤っています。
イ 誤り
その決議内容が取締役選任とはいえ、株主総会決議のひとつであることから、その決議の取消しの訴えの被告は当該株式会社のみとなります(834条17号)。なお、このように被告適格が定められており、当該決議によって選任された取締役は被告適格を有さないことから、共同訴訟参加をすることもできません(最判S36.11.24)。
したがって、記述イは誤っています。
(なお、役員解任の訴え(854条1項)の場合は、当該取締役も被告としなければなりません(855条)。)
ウ 正しい
同一の請求を目的とする会社の組織に関する訴えに係る訴訟が複数係属している場合、併合しなければなりません(837条)。
しかし、取締役選任決議の訴えと、計算書類承認決議の取消しの訴えとは、同一の請求を目的とするものとはいえません。そのため、併合しなければならないわけではありません。
したがって、記述ウは正しいといえます。
エ 正しい
株主総会決議の取消しの訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有します(838条)。他方で、棄却する場合にはこのような特段の定めが無いため、第三者に対してはその効力を有しないことになります(民訴115条1項1号参照)。
したがって、記述エは正しいといえます。
オ 誤り
株主総会決議に招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反する場合であっても、その違反する事実が重要でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、その請求を棄却することができます(831条2項)。すなわち、軽微な手続違反の場合に裁量棄却が許されるといえます。
記述オは『決議の内容が定款に違反する』場合であり、これは取消事由には当たるものの(831条1項2号)、裁量棄却の対象とはされていません。
したがって、記述オは誤っています。