訴訟告知に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
ア.訴訟告知書には,訴訟告知の時までに提出された攻撃防御方法の要旨を記載しなければならない。
イ.訴訟告知を受けた者が告知者を補助するため訴訟に参加した場合には,告知者は,その参加につき異議を述べることはできない。
ウ.訴訟告知を受けた者は,その訴訟に補助参加の申出をしなければ,その訴訟に参加することができる第三者に更に訴訟告知をすることはできない。
エ.裁判が訴訟告知を受けたが参加しなかった者に対しても効力を有するのは,その訴訟の判決が被告知者の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合に限られる。
オ.訴訟告知は,独立当事者参加をすることができる第三者に対しても,することができる。
1.ア ウ 2.ア オ 3.イ エ 4.イ オ 5.ウ エ
解答:1
ア 誤り
53条3項は「訴訟告知は、その理由及び訴訟の程度を記載した書面を裁判所に提出してしなければならない。」と定めており、その時までに提出された攻撃防御方法の要旨まで記載する必要はありません。
したがって、記述アは誤っています。
イ 正しい
当事者は補助参加について異議を述べることができ(44条1項)、被告知者が告知者を補助するため補助参加した場合に異議を述べることができない旨の規定はありません。
もっとも、訴訟告知は被告知者に訴訟参加の機会を与えるとともに、参加的効力を及ぼすことによって告知者の敗訴責任を分担させるという意義があります。これは告知者の利益といえることから、告知者が、被告知者の参加に異議を述べるのは背理ともいえるため、告知者は異議を述べることができないと解されます。
したがって、記述イは正しいといえます。
ウ 誤り
53条2項は「訴訟告知を受けた者は、更に訴訟告知をすることができる。」と定めており、補助参加の申出をしたこと要件としていません。
したがって、記述ウは誤っています。
エ 正しい
訴訟告知を受けたが参加しなかった場合でも、裁判の効力との関係については参加したものとみなされます(53条4項)。
しかしそもそも訴訟告知は、「参加することができる第三者」に対してできるため(53条1項)、被告知者が「参加することができる第三者」に当たらなければ、その効力は生じないと解されます。
補助参加は、訴訟の結果につき、単に事実上の利害関係を有するにとどまらず、法律上の利害関係を有する第三者に許され(最判S39.1.23)、法律上の利害関係を有する場合とは、「当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいう」と解されています(最決H13.1.30)。
これらの判例の趣旨からすると、訴訟告知を受けたが参加しなかった者に対しても効力を有するのは、その訴訟の判決が被告知者の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合に限られるものといえます。(なお記述オの解説のとおり、「参加することができる第三者」は補助参加ができる者だけを指すわけではありませんが、補助参加以外で参加することができる場合は、当然に上記影響を及ぼすおそれがある場合に当たるといえるでしょう。)
したがって、記述エは正しいといえます。
オ 正しい
訴訟告知は、訴訟に「参加することができる第三者」に対してすることができます(53条1項)。ここでいう参加は、補助参加に限らず、独立当事者参加も含まれます。
したがって、記述オは正しいといえます。