民訴法-移送
予備試験平成29年 第31問

司法試験ピックアップ過去問解説

問題

移送に関する次の1から5までの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。

1.大阪簡易裁判所が,事件が複雑であることから相当と認めてその管轄に属する訴訟の全部を大阪地方裁判所に移送した場合であっても,大阪地方裁判所は,証拠の偏在等の事情を考慮し当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは,当該訴訟の全部を更に他の管轄裁判所に移送することができる。

2.貸主である原告が,東京地方裁判所の管轄区域内に住所を有する複数の借主を共同被告として,各被告との間の同種の消費貸借取引に基づく貸金請求訴訟を,各被告に対する請求額を合算すると140万円を超えるとして,東京地方裁判所に併合して提起した場合には,東京地方裁判所は,各被告に対する請求額が140万円を超えず簡易裁判所の事物管轄に属するとして,被告ごとに弁論を分離した上で,訴訟を各被告の住所地を管轄する簡易裁判所に移送することはできない。

3.消滅時効の期間の満了前に訴えが提起されて時効の中断の効力が生じた場合には,その後移送の申立てがされ,当該期間の経過後に移送の裁判が確定したとしても,その効力は影響を受けない。

4.簡易裁判所は,その管轄に属する不動産に関する訴訟につき被告の申立てがあるときは,その申立ての前に被告が本案について弁論をしていない限り,当該訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければならない。

5.移送の決定に対しては,即時抗告をすることができるが,移送の申立てを却下した決定に対しては,即時抗告をすることができない。



解答・解説

解答:5

1 正しい

17条は「第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。」と定めており、簡易裁判所から移送されてきた訴訟を更に移送できない旨の規定はありません。

したがって、記述1は正しいといえます。

2 正しい

判例は、貸主が複数の借主を共同被告として提起したそれぞれに対する貸金返還請求は、38条後段の共同訴訟(訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくとき)に当たるとして、「法38条後段の共同訴訟であって、いずれの共同訴訟人に係る部分も受訴裁判所が土地管轄権を有しているものについて、法7条ただし書により法9条の適用が排除されることはない」としています(最決H23.5.30)。その理由としては、「なぜなら、法7条は、法4条から法6条の2までを受けている文理及び条文が置かれた位置に照らし、土地管轄について規定するものであって事物管轄について規定するものではない」ことなどが挙げられています(最決H23.5.18)。

結果として、貸主が、複数の借主を共同被告としてそれぞれに対する貸金請求訴訟を提起したときは、一つの訴えで数個の請求をする場合に当たるといえ、その訴訟の目的の価額はそれらの価額を合算したものとなります(9条本文)。

そのため、記述2の事案において、各被告に対する請求額が140万円を超えなかったとしても、被告ごとに弁論を分離した上で訴訟を各被告の住所地を管轄する簡易裁判所に移送することはできないといえます。

したがって、記述2は正しいといえます。

3 正しい

147条は「時効の中断又は法律上の期間の遵守のために必要な裁判上の請求は、訴えを提起した時又は第百四十三条第二項(第百四十四条第三項及び第百四十五条第四項において準用する場合を含む。)の書面を裁判所に提出した時に、その効力を生ずる。」と定めています。そのため、移送の申立てや移送の裁判の確定は、消滅時効の中断の効力には影響しないことになります。

したがって、記述3は正しいといえます。

4 正しい

19条2項は「簡易裁判所は、その管轄に属する不動産に関する訴訟につき被告の申立てがあるときは、訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければならない。ただし、その申立ての前に被告が本案について弁論をした場合は、この限りでない。」と定めています。

したがって、記述4は正しいといえます。

5 誤り

移送の決定及び移送の申立てを却下した決定に対しては、即時抗告をすることができます(21条)。

したがって、記述5は移送の申立てを却下した決定に対して即時抗告をすることができないとしている点で誤っています。

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