民訴法-釈明
予備試験平成28年 第39問

司法試験ピックアップ過去問解説

問題

釈明に関する次の1から5までの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを2個選びなさい。


1.裁判長は,口頭弁論の期日外で一方当事者に対し攻撃又は防御の方法に重要な変更を生じ得る事項について釈明権を行使しても,その内容を相手方に通知する必要はない。

2.具体的な法律構成を示唆して訴えの変更を促す釈明権の行使は,許されない。

3.攻撃又は防御の方法でその趣旨が明瞭でないものについて当事者が釈明をすべき期日に出頭しない場合,裁判所は,その攻撃又は防御の方法を却下することができる。

4.裁判所は,訴訟関係を明瞭にするため,鑑定を命ずることができる。

5.当事者は,裁判長の釈明権の行使に対して不服があっても,異議を申し立てることができない。



解答・解説

解答:3、4

1 誤り

149条4項は「裁判長又は陪席裁判官が、口頭弁論の期日において、攻撃又は防御の方法に重要な変更を生じ得る事項について第一項又は第二項の規定による処置をしたときは、その内容を相手方に通知しなければならない。」と定めています。

したがって、記述1は誤っています。

2 誤り

当事者に必要な申立てや主張を示唆・指摘する釈明を積極的釈明といい、どこまでが許されるかが問題となり得ます。

判例には、弁論の全趣旨、証拠関係から、主張事実を合理的に解釈すると、ある具体的な法律構成による請求として解することができるとしたうえで、「当事者の主張が、法律構成において欠けるところがある場合においても、その主張事実を合理的に解釈するならば正当な主張として構成することができ、当事者の提出した訴訟資料のうちにもこれを裏付けうる資料が存するときは、直ちにその請求を排斥することなく、当事者またはその訴訟代理人に対してその主張の趣旨を釈明したうえ、これに対する当事者双方の主張・立証を尽くさせ、もつて事案の真相をきわめ、当事者の真の紛争を解決することが公正を旨とする民事訴訟制度の目的にも合するものというべく、かかる場合に、ここに出ることなく当事者の主張を不明確のまま直ちに排斥することは、裁判所のなすべき釈明権の行使において違法がある」としたものがあります(最判S44.6.24)。

このような判例の趣旨からすると、積極的釈明が常に許されるというわけではありませんが、記述2のように、具体的な法律構成を示唆して訴えの変更を促す釈明権の行使が常に許されないわけではありません

したがって、記述2は誤っています。

3 正しい

157条2項は「攻撃又は防御の方法でその趣旨が明瞭でないものについて当事者が必要な釈明をせず、又は釈明をすべき期日に出頭しないときも、前項と同様とする。」と定め、却下の決定をすることができるとしています。

したがって、記述3は正しいといえます。

4 正しい

151条1項柱書は「裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、次に掲げる処分をすることができる。」と定め、同項5号に「検証をし、又は鑑定を命ずること。」と定められています。

したがって、記述4は正しいといえます。

5 誤り

150条は「当事者が、口頭弁論の指揮に関する裁判長の命令又は前条第一項若しくは第二項の規定による裁判長若しくは陪席裁判官の処置に対し、異議を述べたときは、裁判所は、決定で、その異議について裁判をする。」と定めており、裁判長の釈明権の行使に対し異議を述べることができることを前提としています。

したがって、記述5は誤っています。

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