民訴法-法人でない社団の当事者能力・当事者適格
予備試験平成27年 第33問

司法試験ピックアップ過去問解説

問題

法人でない社団に関する次の1から5までの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。


1.法人でない社団が,団体としての固定資産ないし基本的財産を有しない場合,当該団体に当事者能力が認められる余地はない。

2.ある土地が法人でない社団の所有に属することの確認を求める訴えにつき,当該団体が原告となり認容判決を得る余地はない。

3.ある土地が法人でない社団の構成員全員の総有に属することの確認を求める訴えにつき,当該団体が原告となる余地はない。

4.法人でない社団の旧代表者の個人名義で登記されている不動産に関し,代表者の交代に伴い,新代表者の個人名義への所有権移転登記手続を求める訴えにつき,新代表者が原告となる余地はない。

5.法人でない社団を債務者とする金銭債権を表示した債務名義を有する債権者が,当該団体の代表者の個人名義で登記された不動産に対して強制執行をする余地はない。



解答・解説

解答:2

1 誤り

判例は、「民訴法29条にいう「法人でない社団」に当たるというためには、団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していなければならない」として最判S39.10.15を引用しつつ、「これらのうち、財産的側面についていえば、必ずしも固定資産ないし基本的財産を有することは不可欠の要件ではなく、そのような資産を有していなくても、団体として、内部的に運営され、対外的に活動するのに必要な収入を得る仕組みが確保され、かつ、その収支を管理する体制が備わっているなど、他の諸事情と併せ、総合的に観察して、同条にいう「法人でない社団」として当事者能力が認められる場合がある」としています(最判H14.6.7)。

すなわち、資産を有していることは不可欠の要素ではなく、当事者能力の有無を判断するうえでの諸事情の一つであると解しているといえます。したがって、固定資産ないし基本的財産を有していなかったとしても、団体に当事者能力が認められる余地があるといえ、記述1は誤っています。

2 正しい

法人でない社団の資産は、社団の構成員の全員に総有的に帰属すると解されます(最判S47.6.2)。

判例は、沖縄の血縁団体である門中が権利能力なき社団に当たること、当事者能力が認められることを前提としたうえで、当該門中自身が土地の所有者であることを確認する請求について、「門中の名による同請求は、本件各土地が同上告人の構成員の総有に属するとの右のような事実を前提とした請求ではなく、同上告人自体が本件各土地所有権の主体であることを前提とするものであるところ、権利能力なき社団自体は右のような財産について私法上所有権等の主体となることができないのであるから、その点において右請求はすでに失当である。」としています(最判S55.2.28)。

したがって、判例の趣旨からすれば、法人でない社団の所有に属する確認請求につき、認容判決を得る余地は無いといえるため、記述2は正しいと言えます。

3 誤り

判例は、入会権が一定の村落住民の総有に属すると解されていることを前提に、「村落住民が入会団体を形成し、それが権利能力のない社団に当たる場合には、当該入会団体は、構成員全員の総有に属する不動産につき、これを争う者を被告とする総有権確認請求訴訟を追行する原告適格を有する」としています。

すなわち、入会団体自身が原告となり、構成員全員の総有に属することの確認を求めることができるとしたということになります。したがって、記述3は誤っています。

4 誤り

権利能力なき社団の資産は、社団の構成員全員に総有的に帰属すると解されるところ、当該社団名義では所有権移転登記をすることができないため、構成員全員のために信託的に代表者の所有名義で登記されることが多いといえます。

そして、その代表者がその地位を失い、これに代わる新代表者が選任されたとき、新代表者は、旧代表者に対して、当該不動産につき自己の個人名義に所有権移転登記手続請求をすることができると解されます(最判S47.6.2)。

したがって、記述4は誤っています。

なお、権利能力なき社団自身が原告となり、所有権の登記名義人に対し、当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求めることもできると解されます(最判H26.2.27)。

5 誤り

権利能力なき社団も当事者となることができるため、記述5のように、当該社団を債務者とする金銭債権を表示した債務名義が作成されることは当然あり得ます。

もっとも、権利能力なき社団の構成員全員に総有的に帰属する不動産については、代表者の名義で登記されています。そのため、当該社団を債務者とする債務名義で、当該代表者名義となっている不動産に対し、強制執行ができるかが問題とされていました。

判例は、「権利能力のない社団を債務者とする金銭債権を表示した債務名義を有する債権者が、構成員の総有不動産に対して強制執行をしようとする場合において、上記不動産につき、当該社団のために第三者がその登記名義人とされているときは、上記債権者は、強制執行の申立書に、当該社団を債務者とする執行文の付された上記債務名義の正本のほか、上記不動産が当該社団の構成員全員の総有に属することを確認する旨の上記債権者と当該社団及び上記登記名義人との間の確定判決その他これに準ずる文書を添付して、当該社団を債務者とする強制執行の申立てをすべきものと解する」として、総有に属することを確認する確定判決等の文書を添付することで、当該不動産に対して強制執行をすることができるとしています(最判H22.6.29)。

したがって、記述5は誤っています。

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