民訴法-既判力の客観的範囲
予備試験平成26年 第43問

司法試験ピックアップ過去問解説

問題

Xは,Yと締結した自らを注文主とする建物建築請負契約をYの債務不履行を理由に工事完成前に解除し,Yを被告として,総額1000万円の損害賠償債権のうちの一部であることを明示して400万円の支払を求める訴えを提起した。この場合における次のアからウまでの各記述について説明した後記1から5までのうち,判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。


ア.Yから何らの抗弁が提出されることなくXの請求を全部認容する判決が確定したときは,この確定判決の既判力は,残部の請求に及ばない。

イ.裁判所は,Yの債務不履行に基づくXの1000万円の損害賠償債権は認められるが,Yから提出されたXに対する売買代金債権400万円を自働債権とする相殺の抗弁に理由があるとの心証を得たときは,Xの請求を棄却すべきである。

ウ.Yの債務不履行が認められないとしてXの請求を棄却する判決が確定したときは,XがYに対し残部の支払を求める訴えを提起することは,特段の事情がない限り,信義則に反して許されない。


1.アからウまでの各記述はいずれも正しい。

2.アの記述は正しくないが,イ及びウの各記述は正しい。

3.イの記述は正しくないが,ア及びウの各記述は正しい。

4.ウの記述は正しくないが,ア及びイの各記述は正しい。

5.ア及びイの各記述は正しくないが,ウの記述は正しい。



解答・解説

解答:3

ア 正しい

Xの請求は明示的一部請求に当たりますが、その訴訟物は、当該債権の一部であるため、既判力もその部分のみに生じます(最判S37.8.10)。

したがって、Xの請求を全部認容する判決が確定しても、残部である600万円の請求に既判力は及びません。

したがって、記述アは正しいといえます。

イ 誤り

明示的一部請求に対し、相殺の抗弁に理由があるときは、まず、請求債権の総額を確定したうえで、自働債権の額を控除して残存額を算定し、残存額が一部請求額を超える場合は全部認容を、残存額が一部請求額を下回る場合は残存額の限度で一部認容されます(最判H6.11.22、外側説)。

裁判所は、Xの1000万円の損害賠償債権と、YのXに対する売買代金債権400万円の双方が認められるとしているため、まず1000万円から400万円を控除し、残存額は600万円となります。残存額は一部請求額の400万円を上回っていることから、裁判所は、Xの請求を全部認容することになります。

したがって、記述イは誤っています。

ウ 正しい

明示的一部請求を全部棄却する判決は、債権全部が全く存在しないとの判断に基づくものであり、のちに残部として請求し得る部分はないとの判断を示すものといえます。そのため、一部請求を全部棄却する判決が確定した後、残部の支払いを求めることは、実質的には訴えの蒸返しに当たるため、信義則に反し許されません(最判H10.6.12)。

したがって、記述ウは正しいといえます。

なお、訴訟物は当該一部であり、既判力もその部分のみに生じることから、既判力によって残部の支払いを求めることができないというわけではないことに注意が必要です。

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