AのBに対する金銭債務について,CがBとの間で保証契約を締結した場合に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
ア.AのBに対する債務に関して違約金の定めがなかった場合,BC間の保証契約において違約金の定めをすることはできない。
イ.Aが未成年者であって,その法定代理人の同意を得ないでBに対する債務を負担する行為をした場合において,Cが,保証契約締結の当時,そのことを知っており,その後,Aの行為が取り消されたときには,Cは,Aの負担していた債務と同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定される。
ウ.AのBに対する債務の額が500万円であり,CがAの依頼を受けてBとの間で保証契約を締結した場合において,Aが,その後取得したBに対する300万円の金銭債権を自働債権として,Bに対する債務と相殺をしようと考えていたところ,CがAに対して通知することなくBに500万円を弁済したときには,AはCから500万円の求償を受けても,相殺をすることができる地位にあったことを主張して,300万円の範囲でこれを拒むことができる。
エ.Cが,Aの意思に反してBとの間で保証契約を締結し,Bに保証債務の弁済をした場合には,Cは,Aが現に利益を受けている限度でのみ,Aに対して求償をすることができる。
オ.判例によれば,AのBに対する債務につき消滅時効が完成した場合において,Aが時効の利益を放棄したときには,Cは,もはや時効の援用をすることができない。
1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ
解答:2
ア 誤り
保証債務は、主たる債務より重くすることはできませんが(448条)、これは保証債務の内容自体のみにかかる規定と解されており、違約金の定めは、主たる債務と保証債務とは独立して、内容を定めることができます(447条2項)。
したがって、主たる債務について違約金の定めが無かったとしても、保証債務について違約金の定めをすることができるため、記述アは誤っています。
イ 正しい
主債務が消滅した場合には保証債務も消滅するのが原則ですが、行為能力の制限によって取り消すことができる債務の保証の場合、保証人がその取消しの原因を知っていた場合、主たる債務の不履行または債務の取り消しがあったとき、債権者と保証人との間で、元の主たる債務と同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定されます(449条)。
したがって、記述イは正しいといえます。
ウ 正しい
保証人については、通知を怠った連帯債務者の求償の制限の規定が準用されています(463条1項、443条)。
そのため、記述ウのような場合、自働債権300万円分をもって債権者に対抗することができたので、AはCからの500万円の求償に対し、300万円の範囲で拒むことができます。
したがって、記述ウは正しいといえます。
443条
1項 連帯債務者の一人が債権者から履行の請求を受けたことを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。この場合において、相殺をもってその免責を得た連帯債務者に対抗したときは、過失のある連帯債務者は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
エ 正しい
Cは主たる債務者であるAの意思に反して保証をした者であるため、弁済をした場合の求償は、現に利益を受けている限度に制限されます(462条2項)。
したがって、記述エは正しいといえます。
オ 誤り
時効の利益の放棄は、相対的効力を有すると解され、主たる債務者が時効の利益を放棄したとしても、保証人には影響しないと解されています(大判T5.12.25、大判S6.6.4)。
したがって、Aが時効の利益を放棄したとしても、Cは変わらず、時効の援用をすることができるため、記述オは誤っています。