保釈に関する次のアからオまでの各記述のうち,法律上許されないものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア.殺人の被疑事実により勾留中の被疑者について,保釈を許可すること
イ.殺人の公訴事実により勾留中の被告人について,保釈を許可すること
ウ.逃亡のおそれがある勾留中の被告人について,保釈を許可すること
エ.保釈の請求がないまま,勾留中の被告人について,保釈を許可すること
オ.意見を述べる機会を検察官に与えないまま,勾留中の被告人について,保釈を許可すること
1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ
解答:2
ア 法律上許されない
保釈は、勾留されている被告人についてすることができ(88条1項、90条)、被疑者段階では保釈をすることはできません(207条1項ただし書き)。
したがって、殺人の被疑事実により勾留中の被疑者について、保釈を許可することは、法律上許されません。
イ 法律上許される
殺人の公訴事実の場合、権利保釈は認められませんが(89条1号)、裁量保釈(90条)を認めることは可能です。
したがって、殺人の公訴事実により勾留中の被告人について、保釈を許可することは、法律上許されます。
ウ 法律上許される
逃亡のおそれは、権利保釈の除外事由(89条各号)に該当しないため、権利保釈が認められます。また、逃亡のおそれは裁量保釈(90条)の考慮要素の一つであるため、その他の事情を考慮したうえで裁量保釈を認めることも可能です。
したがって、逃亡のおそれがある勾留中の被告人について、保釈を許可することは、法律上許されます。
エ 法律上許される
権利保釈(89条)は保釈の請求に対して判断するものですが、裁量保釈(90条)は必ずしも保釈の請求が必要とされておらず、また、拘禁が不当に長くなったときの保釈は職権でもすることができます(91条1項)。
したがって、保釈の請求がないまま、勾留中の被告人について、保釈を許可することは、法律上許されます。
オ 法律上許されない
92条1項は、「裁判所は、保釈を許す決定又は保釈の請求を却下する決定をするには、検察官の意見を聴かなければならない。」と定めています。
したがって、意見を述べる機会を検察官に与えないまま、勾留中の被告人について、保釈を許可することは、法律上許されません。