刑訴法-捜索・差押え
予備試験平成27年 第17問

司法試験ピックアップ過去問解説

問題

捜査機関による捜索差押えに関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものには1を,誤っているものには2を選びなさい。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。


ア.捜索差押えを行うには,必ず捜索差押許可状が発付されていなければならない。

ア 

イ.パソコンを差し押さえる際は,その記録媒体に記録された電磁的記録の内容を必ず確認しなければならない。

イ 

ウ.身体を拘束されていない被疑者の体内から尿を採取するために最寄りの病院に連行する場合,捜索差押許可状に加え勾引状が発付されていなければならない。

ウ 

エ.公訴を提起した後に捜索差押えを行う場合,必ず弁護人を立ち会わせなければならない。

 

オ.捜索差押許可状が発付されているものの,捜査官がこれを所持していないためこれを示すことができない場合,急速を要するときは,処分を受ける者に対し,被疑事実の要旨と捜索差押許可状が発付されている旨を告げて,捜索差押えを行うことができる。

 


解答・解説

解答:ア.2  イ.2  ウ.2  エ.2  オ.2

ア 誤り

逮捕状に基づき逮捕する場合または現行犯逮捕をする場合、緊急逮捕をする場合において必要があるときは、令状なくして、逮捕の現場で捜索差押えを行うことができます(220条1項2号)。

したがって、必ず捜索差押許可状が必要とする記述アは誤っています。

イ 誤り

捜索差押許可状には、「差し押さえるべき物」が記載され(219条1項)、その範囲において差し押さえることができます。そのため、通常であれば、差し押さえる際に、その対象物が差し押さえるべき物に該当するかを判断する必要があります。

しかし、パソコンが差し押さえるべき物であった場合、その性質上、必ずしもその場で確認できるとは限りません。そのため、判例は、「差し押さえようとするパソコン、フロッピーディスク等の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において、そのような情報が実際に記録されているかをその場で確認していたのでは記録された情報を損壊される危険があるときは、内容を確認することなしに右パソコン、フロッピーディスク等を差し押さえることが許される」としています(最決H10.5.1)。

したがって、パソコンを差し押さえる際にその記録媒体に記録された電磁的記録の内容を必ず確認しなければならないわけではないため、記述イは誤っています。

なおこの判例の後、電磁的記録を他の記録媒体に複写した上、その記録媒体を差し押さえることができる規定が設けられています(218条2項、219条2項)。

ウ 誤り

尿を任意に提出しない被疑者から尿を採取するには、捜索差押許可状が必要で、許可状には医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が必要です(最決S55.10.23)。そして、身柄を拘束されていない被疑者に対し、捜索差押許可状に基づいて強制採尿をする場合に、被疑者を採尿場所へ任意に同行することが事実上不可能であると認められる場合には、強制採尿令状(捜索差押許可状)の効力として、採尿に適する最寄りの場所まで被疑者を連行することができ、その際、必要最小限度の有形力を行使することができると解されています(最決H6.9.16)。

したがって、別途勾引状が必要とはされていないため、記述ウは誤っています。

エ 誤り

113条は、裁判所が行う捜索(102条)、差押え(99条)等について、弁護人の立会権を認めています(113条)。しかし本問は捜査機関による捜索差押えの設問であり、捜査機関による捜索差押えには113条が準用されていません(222条参照)。

したがって、弁護人に立会権は無いため、記述エは誤っています。

オ 誤り

令状が発付されているが、捜査官が所持していないため示すことができない場合に、急速を要するときに執行をすることを緊急執行といいます。これは、勾引状又は勾留状について定められており(73条3項)、逮捕状による逮捕の場合に準用されていますが(201条2項)、捜索差押許可状については準用されていません

したがって、記述オは誤っています。

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