弁護人に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア.被疑者は,自己の配偶者が弁護人を選任した場合には,自ら弁護人を選任することはできない。
イ.弁護士は,被疑者の弁護人に選任されない限り,逮捕又は勾留された被疑者と立会人なくして接見することはできない。
ウ.被疑者の弁護人は,被疑者の勾留場所を警察署の留置施設から拘置所に変更することを求めて裁判所に準抗告をすることができる。
エ.被疑者の弁護人は,検察官の請求による第1回公判期日前の証人尋問に立ち会う権利を有しない。
オ.被疑者の弁護人は,勾留されていた被疑者が釈放された後であっても,弁護人の選任の効力が失われていない場合には,裁判官に勾留の理由の開示を請求して,被疑者と共に公開の法廷で同理由の開示を受けることができる。
1.ア イ 2.ア オ 3.イ エ 4.ウ エ 5.ウ オ
解答:4
ア 誤り
被疑者は何時でも弁護人を選任でき(30条1項)、被疑者の配偶者も弁護人を選任できますが、「独立して」(30条2項)とあるように、被疑者自身の弁護人選任権には影響しません。(ただし、被疑者の弁護人の数は原則として3人を超えることができません(規則27条1項)。)
したがって、被疑者の配偶者が弁護人を選任した場合、被疑者自身が弁護人を選任できないとしている点で、記述アは誤っています。
イ 誤り
弁護士であれば、弁護人に選任されていなくても、「弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者」として、立会人なくして接見することができます(39条1項)。
したがって、記述イは誤っています。
ウ 正しい
勾留に関する裁判については準抗告をすることができますが(429条1項2号)、被疑者の勾留場所を留置施設から拘置所に変更することを求めることも、準抗告の対象となると解されています(大阪地決S46.12.7など)。
(なお、検察官からの準抗告については、「原則として右勾留の裁判で指定された勾留場所を不服として右勾留の裁判に対し準抗告の申立をすることができない」とした裁判例があります(鳥取地決S44.11.6)。)
したがって、記述ウは正しいといえます。
エ 正しい
検察官の請求による第1回公判期日前の証人尋問(226条)には、被告人、被疑者又は弁護人に立会権はなく、裁判官が「捜査に支障を生ずる虞がないと認めるとき」に「立ち会わせることができる」にすぎません(228条2項)。
したがって、記述エは正しいといえます。
オ 誤り
勾留理由開示の請求は、「勾留されている被告人(被疑者)」や(82条1項)、その弁護人等(82条2項)がすることができ(被疑者については207条1項によって準用)、釈放された後にはすることができません(82条3項参照)。
したがって、記述オは誤っています。