選挙権及び選挙制度に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。
ア.憲法は,国民主権の原理に基づき,国民に対して,両議院の議員の選挙において投票をすることによって国の政治に参加することができる権利の保障は認めているが,投票をする機会の平等までは保障していない。
ア
イ.選挙運動の一つの手段である政見放送において,政見放送の品位を損なう言動を禁止した公職選挙法第150条の2の規定に違反する言動がそのまま放送される利益は,法的に保護された利益とはいえず,したがって,上記言動がそのまま放送されなかったとしても,法的利益の侵害があったとはいえない。
イ
ウ.憲法は,両議院の議員の選挙において投票をすることを,一定の年齢に達した国民の固有の権利として保障しており,自ら選挙の公正を害する行為をした者等の選挙権について一定の制限をすることは別として,選挙権又はその行使を制限するためには,そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならない。
ウ
解答:ア.2 イ.1 ウ.1
ア 誤り
判例は「憲法は、国民主権の原理に基づき、両議院の議員の選挙において投票をすることによって国の政治に参加することができる権利を国民に対して固有の権利として保障しており、その趣旨を確たるものとするため、国民に対して投票をする機会を平等に保障している」としています(最大判H17.9.14)。
したがって、記述アは投票をする機会の平等までは保障していないとしている点で誤っています。
イ 正しい
政見放送において、その発言中、いわゆる差別用語に該当する部分の音声を削除して放送されたことが、政見をそのまま放送される権利を侵害するかいなかが争われた事案において、判例は、当該発言が「政見放送としての品位を損なう言動を禁止した公職選挙法一五〇条の二の規定に違反する」としたうえで、「右規定は、テレビジョン放送による政見放送が直接かつ即時に全国の視聴者に到達して強い影響力を有していることにかんがみそのような言動が放送されることによる弊害を防止する目的で政見放送の品位を損なう言動を禁止したものであるから、右規定に違反する言動がそのまま放送される利益は法的に保護された利益とはいえず、したがつて、右言動がそのまま放送されなかつたとしても、不法行為法上、法的利益の侵害があったとはいえない」としています(最判H2.4.17)。
したがって、記述イは正しいといえます。
ウ 正しい
判例は、「国民の代表者である議員を選挙によって選定する国民の権利は、国民の国政への参加の機会を保障する基本的権利として、議会制民主主義の根幹を成すものであり、民主国家においては、一定の年齢に達した国民のすべてに平等に与えられるべきものである・・・自ら選挙の公正を害する行為をした者等の選挙権について一定の制限をすることは別として、国民の選挙権又はその行使を制限することは原則として許されず、国民の選挙権又はその行使を制限するためには、そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならない」としています(最大判H17.9.14)。
したがって、記述ウは正しいといえます。