憲法-外国人の人権
予備試験平成29年 第5問

司法試験ピックアップ過去問解説

問題

外国人の人権に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。


ア.地方公務員のうち,住民の権利義務を直接形成し,その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い,若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い,又はこれらに参画することを職務とするものについては,原則として日本国籍を有する者が就任することが想定され,外国人が就任することは想定されていない。


イ.我が国に在留する外国人のうち,永住者等でその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められる者についてであっても,法律をもって,地方公共団体の長,その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは,憲法上禁止されている。


ウ.基本的人権の保障は,権利の性質上日本国民のみを対象としていると解されるものを除き,外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきで,政治活動の自由についても,政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位に鑑み相当でないと解されるものを除き,その保障が及ぶ。


1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○

4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×

7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×



解答・解説

解答:3

ア 正しい

判例は、地方公務員のうち、住民の権利義務を直接形成し、その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い、若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い、又はこれらに参画することを職務とするもの(公権力行使等地方公務員)について、「国民主権の原理に基づき、国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものであること(憲法1条、15条1項参照)に照らし、原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されている」としたうえで、管理職の任用制度を構築した上で、日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとしたことは、憲法14条1項に反しないとしています(最大判H17.1.26)。

したがって、記述アは正しいといえます。

イ 誤り

判例(最判H7.2.28)は、「主権が「日本国民」に存するものとする憲法前文及び一条の規定に照らせば、憲法の国民主権の原理における国民とは、日本国民すなわち我が国の国籍を有する者を意味することは明らかである。そうとすれば、公務員を選定罷免する権利を保障した憲法一五条一項の規定は、権利の性質上日本国民のみをその対象とし、右規定による権利の保障は、我が国に在留する外国人には及ばない」としたうえで、「我が国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできない。」として、在留外国人の選挙権を認めていないことは憲法に反しないとの判断をしています。

もっとも、「我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない」ともしており、法律をもって選挙権を付与することは憲法上可能であるとも述べています。

したがって、記述イは誤っています。

ウ 正しい

判例は、「憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり、政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相当である。」としています(最大判S53.10.4)。

したがって、記述ウは正しいといえます。

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