憲法-憲法22条1項
予備試験平成29年 第4問

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問題

憲法第22条第1項の解釈に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。

ア.農業災害補償法が一定の稲作農業者を農業共済組合に当然に加入させる仕組みを採用したことの合憲性は,当該仕組みが国民の主食である米の生産の確保と稲作を行う自作農の経営の保護を目的とすることから,必要最小限度の規制であるか否かによって判断される。

イ.憲法第22条第1項は職業選択の自由を保障しているが,いわゆる営業の自由は,財産権の行使という側面を併せ有することから,同項及び第29条第1項の規定によって根拠付けられる。

ウ.職業の許可制は,狭義の職業の選択の自由そのものに制約を課す強力な制限であるため,社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置であっても,より緩やかな規制によってはその目的を十分に達することができない場合でなければ,合憲性を肯定し得ない。


1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○

4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×

7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×



解答・解説

解答:8

ア 誤り

農業災害補償法に基づく農業共済組合への当然加入性について、判例(最判H17.4.26)は、「国民の主食である米の生産を確保するとともに、水稲等の耕作をする自作農の経営を保護することを目的とし、この目的を実現するため、農家の相互扶助の精神を基礎として、災害による損失を相互に分担するという保険類似の手法を採用することとし、被災する可能性のある農家をなるべく多く加入させて危険の有効な分散を図るとともに、危険の高い者のみが加入するという事態を防止するため、原則として全国の米作農家を加入させたところにある」としたうえで、制定当時の必要性と合理性を認め、社会経済の状況の変化を加味してもなお、「当然加入制はその必要性と合理性を失うに至っていたとまではいえない・・・上記の当然加入制の採用は、公共の福祉に合致する目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまる措置ということができ、立法府の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理であることが明白であるとは認め難い。」としています。

すなわち、公共の福祉に合致する目的のために必要かつ合理的かという基準、裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理であることが明白であるかという基準を用いたものといえ、記述アは必要最小限度の規制であるか否かという基準を用いるとしている点で誤っています。

イ 誤り

判例は、「憲法二二条一項は、国民の基本的人権の一つとして、職業選択の自由を保障しており、そこで職業選択の自由を保障するというなかには、広く一般に、いわゆる営業の自由を保障する趣旨を包含しているものと解すべきであり、ひいては、憲法が、個人の自由な経済活動を基調とする経済体制を一応予定しているものということができる。」としています(最大判S47.11.22)。また、下記最大判S50.4.30も、「右規定(注:憲法22条1項)は、狭義における職業選択の自由のみならず、職業活動の自由の保障をも包含している」としています。営業の自由が憲法22条1項及び29条1項の規定によって根拠付けられるとした判例はありません。

したがって、記述イは誤っています。

ウ 誤り

職業選択の自由と許可制について、判例(最大判S50.4.30)は、「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要する」としています。

すなわちこの判例は、消極的な目的のための措置である場合には、『よりゆるやかな規制によっては目的を十分に達成することができない』といえる必要があるが、積極的な目的のための措置の場合には、そのような必要があるとはしていないといえます。

したがって、記述ウは誤っています。

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