憲法-学問の自由
予備試験平成28年 第5問

司法試験ピックアップ過去問解説

問題

学問の自由に関する次のアからウまでの各記述について,判例の趣旨に照らして,正しいものには○を,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。

ア.学問の自由は,学問的研究の自由とその研究成果の発表の自由を指しており,憲法第23条は大学が学術の中心として深く真理を探究することを本質とすることに鑑みて規定されたものであるから,同条の保障は大学の教授や研究者を対象とするものであり,国民一般はその保障の対象ではない。

イ.大学における学問の自由を保障するために伝統的に大学の自治が認められているところ,学内集会について大学の自治の保障が及ぶか否かの判断に当たって,その集会の目的や性格を考慮することは,学内で行われる活動をその思想内容に着目して規制することになり,大学の自治を認めた趣旨に抵触するから,許されない。

ウ.普通教育の場において使用される教科書は学術研究の結果の発表を目的とするものではなく,教科書検定は,記載内容がいまだ学界において支持を得ていないとき,あるいは当該教科課程で取り上げるにふさわしい内容と認められないときなど一定の検定基準に違反する場合に,教科書の形態における研究結果の発表を制限するにすぎないから,憲法第23条に反しない。


1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○

4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×

7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×



解答・解説

解答:7

ア 誤り

判例は、「学問の自由は、学問的研究の自由とその研究結果の発表の自由とを含むものであつて、同条が学問の自由はこれを保障すると規定したのは、一面において、広くすべての国民に対してそれらの自由を保障するとともに、他面において、大学が学術の中心として深く真理を探究することを本質とすることにかんがみて、特に大学におけるそれらの自由を保障することを趣旨としたものである。」としています(最大判S38.5.22)。

したがって、記述アは国民一般が学問の自由の保障の対象ではないとしている点で、誤っています。

イ 誤り

判例は、「大学における学問の自由を保障するために、伝統的に大学の自治が認められている。」とし、「大学における学生の集会も、・・・大学の公認した学内団体であるとか、大学の許可した学内集会であるとかいうことのみによつて、特別な自由と自治を享有するものではない。学生の集会が真に学問的な研究またはその結果の発表のためのものでなく実社会の政治的社会的活動に当る行為をする場合には、大学の有する特別の学問の自由と自治は享有しない」としたうえで、開催された『演劇発表会』が実質的には「真に学問的な研究と発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動であり、かつ公開の集会またはこれに準じるもの」であり、大学の学問の自由と自治を享有しないと判断されました。

すなわち、学内で行われる活動を、その思想内容に着目して規制したといえるため、記述イは誤っています。

ウ 正しい

判例は、「教科書は、・・・普通教育の場において使用される児童、生徒用の図書であって・・・、学術研究の結果の発表を目的とするものではなく、本件検定は、申請図書に記述された研究結果が、たとい執筆者が正当と信ずるものであったとしても、いまだ学界において支持を得ていなかったり、あるいは当該学校、当該教科、当該科目、当該学年の児童、生徒の教育として取り上げるにふさわしい内容と認められないときなど旧検定基準の各条件に違反する場合に、教科書の形態における研究結果の発表を制限するにすぎない。」として、教科書検定は憲法23条に反しないとしています(最判H5.3.16)。

したがって、記述ウは正しいといえます。

司法試験・予備試験講座を、今すぐ無料でお試しできます!
無料会員登録で4大特典を進呈!

短期合格セミナー 学習スタートガイド冊子
民法判例論証30 10%OFFクーポン
お申込み後すぐに受講が試せる!
自動契約・更新はありません
無料会員登録(特典を入手)