憲法-取材の自由
予備試験平成28年 第3問

司法試験ピックアップ過去問解説

問題

取材の自由に関する次のアからウまでの各記述について,判例の趣旨に照らして,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。

ア.報道機関の報道は,国民の知る権利に奉仕するものであるため,報道の自由は,表現の自由を規定した憲法第21条によって保障されるが,報道のための取材の自由も,報道が正しい内容を持つために,報道の自由の一環として同条によって直接保障される。

イ.取材の自由は,公正な刑事裁判の実現の要請からある程度制約を受けることがあるが,公正な刑事裁判を実現するに当たっては,適正迅速な捜査が不可欠の前提であるから,適正迅速な捜査の要請からも取材の自由が制約を受けることがある。

ウ.法廷における筆記行為の自由は憲法第21条の規定の精神に照らして尊重されるべきであるが,その制限は表現の自由に制約を加える場合に一般に必要とされる厳格な基準までは要求されず,メモを取る行為が公正かつ円滑な訴訟の運営を妨げる場合には制限される。


1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○

4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×

7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×



解答・解説

解答:5

ア 誤り

判例は、「報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の「知る権利」に奉仕するものである。したがつて、思想の表明の自由とならんで、事実の報道の自由は、表現の自由を規定した憲法二一条の保障のもとにあることはいうまでもない。また、このような報道機関の報道が正しい内容をもつためには、報道の自由とともに、報道のための取材の自由も、憲法二一条の精神に照らし、十分尊重に値いするものといわなければならない。」としています(最大判S44.11.26博多駅事件)。

したがって、記述アは、取材の自由が憲法21条によって直接保障されるとしている点で誤っています。

イ 正しい

判例は、「取材の自由も、何らの制約を受けないものではなく、公正な裁判の実現というような憲法上の要請がある場合には、ある程度の制約を受けることがある」としたうえで、「公正な刑事裁判を実現するために不可欠である適正迅速な捜査の遂行という要請がある場合にも、同様に、取材の自由がある程度の制約を受ける場合がある」としています(最決H2.7.9TBSビデオテープ事件)。

したがって、記述イは正しいといえます。

(なお同判例は、その基準として、「報道機関の取材結果に対して差押をする場合において、差押の可否を決するに当たっては、捜査の対象である犯罪の性質、内容、軽重等及び差し押さえるべき取材結果の証拠としての価値、ひいては適正迅速な捜査を遂げるための必要性と、取材結果を証拠として押収されることによって報道機関の報道の自由が妨げられる程度及び将来の取材の自由が受ける影響その他諸般の事情を比較衡量すべき」としています。)

ウ 正しい

判例は、「筆記行為の自由は、憲法二一条一項の規定の精神に照らして尊重されるべきであるといわなければならない。 裁判の公開が制度として保障されていることに伴い、傍聴人は法廷における裁判を見聞することができるのであるから、傍聴人が法廷においてメモを取ることは、その見聞する裁判を認識、記憶するためになされるものである限り、尊重に値し、故なく妨げられてはならない」としたうえで、「右の筆記行為の自由は、憲法二一条一項の規定によつて直接保障されている表現の自由そのものとは異なるものであるから、その制限又は禁止には、表現の自由に制約を加える場合に一般に必要とされる厳格な基準が要求されるものではない・・・(法廷で)最も尊重されなければならないのは、適正かつ迅速な裁判を実現すること・・・そのメモを取る行為がいささかでも法廷における公正かつ円滑な訴訟の運営を妨げる場合には、それが制限又は禁止されるべきことは当然である」としています(最大判H1.3.8レペタ事件)。

したがって、記述ウは正しいといえます。

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