合憲限定解釈に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。
ア.合憲限定解釈に対しては,立法者の意思を超えて法文の意味を書き換えてしまう可能性があり,立法権の簒奪につながりかねないという問題がある。
イ.合憲限定解釈に対しては,当該解釈が不明確であると,犯罪構成要件の保障的機能を失わせ,憲法第31条違反の疑いを生じさせるという問題がある。
ウ.判例は,集会の自由の規制が問題となった広島市暴走族追放条例について,条例の改正が立法技術上困難でないから,あえて合憲限定解釈をする必要はないとした。
1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○
4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×
7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×
解答:2
ア 正しい
合憲限定解釈とは、ある法令を文字どおり解釈すれば違憲になり得るような場合に、その意味を限定的に解釈することで、その法令を合憲とする手法をいいます。
合憲限定解釈の手法において、当該法令の目的等も斟酌して解釈するものの、文字どおりの解釈を限定的にするため、立法者の意思を超えて法文の意味を書き換えてしまう可能性があり、立法権の簒奪(さんだつ)につながりかねないという指摘がされることがあります。したがって、設問は正しいといえます。
イ 正しい
上記のとおり、合憲限定解釈は、文字通りの解釈よりも限定的に解釈するものであるため、その範囲が不明確になる可能性があります。そのため、犯罪構成要件の保障的機能が失われ、憲法31条違反となる可能性があるとの指摘がされることがあります。したがって、設問は正しいといえます。
判例-最大判昭和48年4月25日 全農林警職法事件 |
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「このように不明確な限定解釈は、かえつて犯罪構成要件の保障的機能を失わせることとなり、その明確性を要請する憲法三一条に違反する疑いすら存するものといわなければならない」 |
ウ 誤り
広島市暴走族追放条例の事件においては、「暴走族」の定義を通常の暴走族よりも広く定義している点、禁止される行為が「何人も」してはならないとされている条例について、広範に過ぎ、漠然不明確であるとして争われました。最高裁は、「暴走族」の意味を通常の暴走族と同視し得る集団に限られるとしたうえ、「何人も」してはならないとされる集会は、このような暴走族またはその類似集団による集会が禁止されていると限定的に解釈することで、広範・漠然不明確との主張を退けています。
したがって、あえて合憲限定解釈をする必要はないとしている設問は誤っています。
判例-最判平成19年9月18日 広島市暴走族追放条例違反事件 |
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「本条例2条7号は、暴走族につき、「暴走行為をすることを目的として結成された集団又は公共の場所において、公衆に不安若しくは恐怖を覚えさせるような特異な服装若しくは集団名を表示した服装で、い集、集会若しくは示威行為を行う集団をいう。」と定義している」 「本条例は、暴走族の定義において社会通念上の暴走族以外の集団が含まれる文言となっていること、禁止行為の対象及び市長の中止・退去命令の対象も社会通念上の暴走族以外の者の行為にも及ぶ文言となっていることなど、規定の仕方が適切ではな」いとしたうえで、 「本条例の全体から読み取ることができる趣旨、さらには本条例施行規則の規定等を総合すれば、本条例が規制の対象としている「暴走族」は、本条例2条7号の定義にもかかわらず、暴走行為を目的として結成された集団である本来的な意味における暴走族の外には、・・・暴走族に類似し社会通念上これと同視することができる集団に限られるものと解され、したがって、市長において本条例による中止・退去命令を発し得る対象も、被告人に適用されている「集会」との関係では、本来的な意味における暴走族及び上記のようなその類似集団による集会が、本条例16条1項1号、17条所定の場所及び態様で行われている場合に限定されると解される。」 |