刑法-責任能力
予備試験平成27年 第11問

司法試験ピックアップ過去問解説

問題

責任能力に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。


1.ある人が同じ精神の障害の状態にありながら,ある行為については完全な責任能力が認められ,他の行為については完全な責任能力が認められないことがある。

2.心神喪失とは,精神の障害により事物の理非善悪を弁識する能力及びその弁識に従って行動する能力のいずれもない状態をいう。

3.心神喪失は,精神の障害がある場合に限られるから,アルコールによって一時的にそのような状態に陥った場合は心神喪失と認めることはできない。

4.心神耗弱は,責任能力が著しく減退しているにすぎないから,その刑を減軽しないこともできる。

5.13歳の少年が人を殺害した場合,少年法の規定に基づく手続を経れば,その少年に刑罰を科すことができる。



解答・解説

解答:1

1 正しい

責任能力とは、責任の前提となる人格的能力をいい、その内容は①行為の違法性を弁識し、②それに従って自己の行為を制御する能力をいいます。

このことからすると、行為によって違法性の弁識の対象(程度)が異なり、それに従った行為の制御の程度も異なってくると考えられることから、設問のような場合に責任能力についての結論が異なることはあり得ます。したがって、設問は正しいといえます。

2 誤り

心神喪失は、理非善悪の弁識能力またはそれに従って行動する能力のいずれかが欠けた状態をいいます。したがって設問は誤っています。

3 誤り

心神喪失は、継続的なものに限らず一時的なものであっても該当し得ます。アルコールによって弁識能力もしくはそれに従った行動能力を欠く状態に陥った場合も、心神喪失と認めることは可能です。したがって、設問は誤っています。

4 誤り

刑法39条2項は、「心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。」と規定しており、その減軽は必要的です。したがって、設問は誤っています。

5 誤り

刑法41条は「十四歳に満たない者の行為は、罰しない。」と規定しており、少年法の規定に基づく手続きを経たとしても、殺人を犯した少年に刑罰を科すことはできません。したがって、設問は誤っています。

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