行政法-法律と法規命令との関係
予備試験平成29年 第13問

司法試験ピックアップ過去問解説

問題

以下のAからCは,法律と法規命令との関係が問題とされた最高裁判所の判決に関する文章である。次のアからウまでの【】内の各記述について,正しいものに○,誤っているものに×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。


A:被勾留者の接見について,原則として幼年者との接見を許さないとした上で例外として限られた場合に監獄の長の裁量によりこれを許すこととしていた旧監獄法施行規則の規定と,旧監獄法との関係が問題とされた最高裁判所平成3年7月9日第三小法廷判決(民集45巻6号1049頁)は,(ア)【憲法及び旧監獄法による委任の趣旨を踏まえて限定的に解釈すれば,上記施行規則の規定は旧監獄法による委任の範囲を超えていないとしたものである。】

B:父から認知された婚姻外懐胎児童を児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲から除外した児童扶養手当法施行令の規定の一部と,児童扶養手当法との関係が問題とされた最高裁判所平成14年1月31日第一小法廷判決(民集56巻1号246頁)は,(イ)【児童扶養手当法による委任の範囲を逸脱したものとして,上記施行令の規定の一部を違法無効と判断したものである。】

C:国家公務員に禁止される「政治的行為」の具体的内容を定めた人事院規則の規定と,国家公務員法との関係が問題とされた最高裁判所平成24年12月7日第二小法廷判決(刑集66巻12号1722頁)は,(ウ)【憲法の規定及び国家公務員法の委任の趣旨を踏まえて,上記規則の規定を限定的に解釈したものである。】


1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○

4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×

7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×



解答・解説

解答:5

(ア) 誤り

最高裁判所平成3年7月9日第三小法廷判決(民集45巻6号1049頁)は、「規則一二〇条(及び一二四条)は、結局、被勾留者と幼年者との接見を許さないとする限度において、法五〇条の委任の範囲を超えた無効のものと断ぜざるを得ない。」としています。

したがって、記述(ア)は誤っています。

(イ) 正しい

最高裁判所平成14年1月31日第一小法廷判決(民集56巻1号246頁)は、「施行令1条の2第3号が父から認知された婚姻外懐胎児童を本件括弧書により児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲から除外したことは法の委任の趣旨に反し、本件括弧書は法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効と解すべきである。」としています。

したがって、記述(イ)は正しいといえます。

(ウ) 正しい

国家公務員法102条1項が「職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。」と定め、人事院規則において具体的に罰則規定が定められていた事案において、「政治的行為」の人事院規則への委任は白紙委任であるなどとの主張に対し、最高裁判所平成24年12月7日第二小法廷判決(刑集66巻12号1722頁)は、法の目的等を検討したうえで、「同項にいう「政治的行為」とは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものを指し、同項はそのような行為の類型の具体的な定めを人事院規則に委任したもの・・・そして、その委任に基づいて定められた本規則も、このような同項の委任の範囲内において、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる行為の類型を規定したものと解すべき」としています。そのうえで、具体的な規定について、「禁止の対象とされるものは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為に限られ、このようなおそれが認められない政治的行為や本規則が規定する行為類型以外の政治的行為が禁止されるものではないから、その制限は必要やむを得ない限度にとどまり、前記の目的を達成するために必要かつ合理的な範囲のもの」としています。

すなわち、憲法の規定や国家公務員法の委任の趣旨を踏まえて、人事院規則の規定を限定的に解釈したものであるといえます。したがって、記述(ウ)は正しいといえます。

司法試験・予備試験講座を、今すぐ無料でお試しできます!
無料会員登録で4大特典を進呈!

短期合格セミナー 学習スタートガイド冊子
民法判例論証30 10%OFFクーポン
お申込み後すぐに受講が試せる!
自動契約・更新はありません
無料会員登録(特典を入手)