処分の効力の全部又は一部の停止(以下「執行停止」という。)その他の仮の救済に関する次のアからエまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。
ア.審査請求に対する裁決を経た後でなければ取消しの訴えを提起することができない旨の法律の定めがある処分については,審査請求に対する裁決を経ない段階において,処分の取消しの訴えを提起し,併せて当該処分につき執行停止を求める申立てをしても,当該申立てが適法とされる余地はない。
ア
イ.処分の取消しの訴えについて出訴期間が経過している場合,当該処分につき無効確認の訴えを提起した上で執行停止の申立てをすることが適法であるとしても,緊急の必要を欠くため,執行停止の決定を得ることはできない。
イ
ウ.公権力の行使に関わらない公法上の法律関係に関する確認の訴えについて,執行停止に関する行政事件訴訟法の規定は準用されないから,同訴えと併せて執行停止の申立てをすることは不適法である。
ウ
エ.行政庁に対し一定の処分を求める申請を行い,当該行政庁がその処分をすべきであるのにこれがされない場合,当該処分につき仮の義務付けの申立てをするには,併せて不作為の違法確認の訴えを提起するだけでは足りず,更に義務付けの訴えを提起する必要がある。
エ
解答:ア.2 イ.2 ウ.1 エ.1
ア 誤り
執行停止の申立ては、適法に処分の取消しの訴えの提起をしている必要があります(25条2項)。
審査請求前置の規定があるときは、審査請求に対する裁決を経なければ処分の取消しの訴えを提起することはできません(8条1項ただし書き)。しかし、審査請求をした日から3カ月を経過しても裁決が無い場合には裁決を経ることなく処分の取消しの訴えを提起することができます(8条2項1号)。その他、緊急の必要があるとき(同項2号)、正当な理由があるとき(同項3号)も、審査請求前置にかかわらず裁決を経ることなく処分の取消しの訴えを提起することができます。
以上のとおり、審査請求前置主義が採られており、審査請求に対する裁決を経ない段階であっても、執行停止を求める申立てが適法とされる余地があるといえるため、記述アは誤っています。
イ 誤り
執行停止の規定は無効等確認の訴えについて準用されています(38条3項)。無効確認の訴えを提起し、執行停止の申立てをした場合に、緊急の必要を欠くことになるという規定はなく、また、取消訴訟の出訴期間を経過したからとって、緊急の必要を欠くことになるわけでもありません。そのため、要件を満たす限り、執行停止の決定を得ることができるといえます。
したがって、記述イは誤っています。
ウ 正しい
公権力の行使に関わらない訴えである当事者訴訟(4条)、民衆訴訟(5条)、機関訴訟(6条)には、執行停止に関する行訴法の規定は準用されていません(41条・43条参照)。
そのため、これらの訴えと併せて執行停止の申立てをすることは不適法になるといえます。したがって、記述ウは正しいといえます。
(なお、これらの場合には民事保全法に基づく仮処分をすることができます(44条反対解釈)。)
エ 正しい
仮の義務付けの申立ては、義務付けの訴えの提起をしている必要があります(37条の5第1項)。そして申請に対し何らの処分がされない場合の申請型義務付け訴訟は、不作為の違法確認の訴えを併合提起しなければなりません(37条の3第3項1号)。
したがって、記述エは正しいといえます。