地方自治法第242条の2第1項の規定に基づいて提起する住民訴訟に関する次のアからウまでの各記述について,法律及び最高裁判所の判例に照らし,正しいものに○,誤っているものに×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。なお,言及のない訴訟要件は満たされているものとする。
ア.市の住民であるXは,市の所有地上に産業廃棄物の処理施設を設置,操業して違法に有害な物質を排出している産業廃棄物処理業者を被告として,当該施設の操業の差止めを求める住民訴訟を適法に提起することができる。
イ.市の住民であるXは,市が特定の市有地を権原なく占用する者に対し占用料相当額の請求を怠ることの違法確認を求める住民訴訟を,市長を被告として適法に提起することができる。
ウ.市の住民であるXは,市が廃棄物運搬業者との間で締結した委託契約に基づく委託料の支出が違法であることを理由に,支出行為をした当時の市長個人を被告として,市への損害賠償の支払を求める住民訴訟を適法に提起することができる。
(参照条文)
地方自治法242条の2
1項 普通地方公共団体の住民は,前条第1項の規定による請求(注:住民監査請求)をした場合において,同条第4項の規定による監査委員の監査の結果(中略)に不服があるとき(中略)は,裁判所に対し,同条第1項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき,訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。
1号 当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求
2号 行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求
3号 当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求
4号 当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。(以下略)
2項以下略
1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○
4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×
7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×
解答:6
ア 誤り
住民訴訟によって請求ができる差止め請求は、「当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部」を対象とするものです(242条の2第1項1号)。
すなわち、記述アのような市の所有地上で操業する業者を被告として、操業の差止めを求めることは住民訴訟によって請求できません。したがって、記述アは誤っています。
イ 正しい
記述イは、怠る事実の違法確認の請求を執行機関である市長を被告とするものであるため、適法に住民訴訟を提起できます(242条の2第1項3号)。
したがって、記述イは正しいといえます。
ウ 誤り
住民訴訟としての損害賠償請求は、「当該普通地方公共団体の執行機関又は職員」に対してのみすることができ、既に市長ではない個人を被告として提起することはできません(242条2第1項4号)。
したがって、記述ウは誤っています。