処分性に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らし,正しいものに○,誤っているものに×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。
ア.憲法上,外国人は,在留の権利ないし引き続き在留することを要求し得る権利を保障されていないため,出入国管理及び難民認定法に基づく在留期間の更新を法務大臣が拒否する行為には,処分性が認められない。
イ.都市計画法は開発行為による影響を受ける公共施設の管理者の同意を得ることを開発許可申請の要件としているが,公共施設の管理者が同意を拒否する行為自体は,開発行為を禁止又は制限する効果をもつものとはいえず,当該同意を拒否する行為には処分性は認められない。
ウ.食品衛生法に基づく飲食店の営業許可申請を行政庁が拒否する行為は,行為の前後における申請者の法的地位を変動させるものではないから,当該行為には処分性は認められない。
1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○
4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×
7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×
解答:6
ア 誤り
判例は、「憲法上、外国人は、わが国に入国する自由を保障されているものでないことはもちろん、所論のように在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものでもない」としています(最大判S53.10.4)。
そして同判例は、出入国管理及び難民認定法に基づく在留期間の更新を法務大臣が拒否する行為(不許可処分)の取消請求に対する判断をしたものであり、原告の請求を却下することなく、本案判決をしています。したがって、この不許可処分には処分性が認められているということになります。
したがって、記述アは、処分性が認められないとしている点で誤っています。
イ 正しい
判例は、公共施設の管理者である行政機関等が都市計画法32条所定の同意を拒否する行為について、「同意を拒否する行為それ自体は、開発行為を禁止又は制限する効果をもつものとはいえない。したがって、開発行為を行おうとする者が、右の同意を得ることができず、開発行為を行うことができなくなったとしても、その権利ないし法的地位が侵害されたものとはいえないから、右の同意を拒否する行為が、国民の権利ないし法律上の地位に直接影響を及ぼすものであると解することはとはいえない」として、処分性を否定しています(最判H7.3.23)。
したがって、記述イは正しいといえます。
ウ 誤り
食品衛生法に基づく飲食店の営業許可申請を行政庁が拒否する行為の処分性について直接判断した最高裁判例は見当たりませんが、この営業許可処分により、本来認められるはずの個人の自由が一般的に禁止されている状態を解除されることになるため、「直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」(最判S39.10.29)に該当するといえます。
したがって、営業許可処分には処分性が認められるといえ、記述ウは誤っています。