取消訴訟の審理に関する次のアからエまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。
ア.処分について審査請求をすることができる場合であっても,法律に特段の定めのない限り,直ちに処分の取消しの訴えを提起することができる。
ア
イ.処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合,これらの訴えは併合して提起しなければならない。
イ
ウ.処分の根拠法令が裁決主義を採用している場合には,裁決の取消しの訴えにおいて原処分の違法を主張することができる。
ウ
エ.建築基準法上の指定確認検査機関による建築確認処分の取消しの訴えにおいては,当該機関を指定した国土交通大臣又は都道府県知事の所属する国又は地方公共団体が被告となる。
エ
解答:ア.1 イ.2 ウ.1 エ.2
ア 正しい
行訴法8条1項は「処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。」と定めています。
したがって、記述アは正しいといえます。
イ 誤り
処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合、どちらの訴えを提起することも可能です。このとき、これらの訴訟を併合して提起しなければならない旨の規定はありません。
したがって、記述イは誤っています。
ウ 正しい
裁決主義とは、処分に対する審査請求の裁決に対してのみ取消訴訟が提起できるという仕組みをいいます。
裁決主義がとられず、処分の取消しの訴えと、処分に対する審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えの双方が提起できる場合、裁決の取消しの訴えにおいては原処分の違法を主張することができません(原処分主義、行訴法10条2項)。すなわち、棄却裁決を受けた後に、さらに原処分の違法を主張したいと考えた場合は、原処分の取消しの訴えを提起する必要があることになります。
しかし裁決主義がとられている場合にはこのような規定がないことから、裁決の取消しの訴えにおいて原処分の違法を主張することができると解されます。
エ 誤り
処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属しない場合の取消訴訟の被告は、当該行政庁となります(行訴法11条2項)。
国土交通大臣又は都道府県知事が指定した者は、建築基準法上の建築確認処分をすることができます(建築基準法6条の2第1項、77条の18第1項)。指定確認検査機関は、国又は公共団体に所属しない者であるため(すなわち、私人の行う行政処分といえます)、指定確認検査機関がした建築確認処分の取消しの訴えの被告は、当該指定確認検査機関となります。
したがって、記述エは誤っています。