行政法-行政指導
予備試験平成26年 第16問

司法試験ピックアップ過去問解説

問題

行政指導に関する次のアからエまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。


ア.度を超えた圧力による行政指導が行われた場合には,実際に行政指導に従わなかったときでも,精神的苦痛による損害に係る賠償請求が可能となることがある。

ア 

イ.最高裁判所の判例によれば,申請に対する処分を留保されたままでの行政指導には応じられないことを真摯かつ明確に意思表示した行政指導の相手方に対して,行政指導を継続しているという理由でなお処分を留保しても,処分の留保が違法とは評価されない場合がある。

イ 

ウ.行政手続法によれば,口頭で行政指導を行う場合には,行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示す必要はなく,行政指導の相手方からこれらを記載した書面の交付を求められたときに,当該行政指導に携わる者がこれらを記載した書面を交付すれば足りる。

ウ 

エ.行政手続法の行政指導に関する規定には,地方公共団体の機関が行う行政指導にも適用されるものがある。

エ 


解答・解説

解答:ア.1  イ.1  ウ.2  エ.2

ア 正しい

行政指導の一環として指導要綱を定め、これに基づいて教育施設負担金の名目で金員の寄付を要請していた事案において、判例は、「事業主に対し、法が認めておらずしかもそれが実施された場合にはマンション建築の目的の達成が事実上不可能となる水道の給水契約の締結の拒否等の制裁措置を背景として、指導要綱を遵守させようとしていた」「指導要綱所定の教育施設負担金を納付しなければ、水道の給水契約の締結及び下水道の使用を拒絶されると考えさせるに十分なものであって、マンションを建築しようとする以上右行政指導に従うことを余儀なくさせるものであり、Aに教育施設負担金の納付を事実上強制しようとした」ことを認定し、「右行為は、本来任意に寄付金の納付を求めるべき行政指導の限度を超えるものであり、違法な公権力の行使であるといわざるを得ない。」として国家賠償責任を認めました(最判H5.2.18)。

この判例の趣旨によれば、度を超えた圧力による行政指導が行われた場合には、実際に行政指導に従わなかったときでも、精神的苦痛による損害に係る賠償請求が可能となることがあるといえます。したがって、記述アは正しいといえます。

イ 正しい

判例は、「建築主において自己の申請に対する確認処分を留保されたままでの行政指導には応じられないとの意思を明確に表明している場合には、かかる建築主の明示の意思に反してその受忍を強いることは許されない筋合のものであるといわなければならず、建築主が右のような行政指導に不協力・不服従の意思を表明している場合には、当該建築主が受ける不利益と右行政指導の目的とする公益上の必要性とを比較衡量して、右行政指導に対する建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情が存在しない限り、行政指導が行われているとの理由だけで確認処分を留保することは、違法であると解するのが相当である。」としています(最判S60.7.16)。

この判例によれば、行政指導の相手方が、申請に対する処分を留保されたままでの行政指導には応じられないことを真摯かつ明確に意思表示したとしても、相手方が受ける不利益と行政指導の目的とする公益上の必要性とを比較衡量して、行政指導に対する相手方の不協力が社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情が存在する場合、行政指導を継続しているという理由でなお処分を留保しても、処分の留保が違法とは評価されない場合があるといえます。

したがって、記述イは正しいといえます。

ウ 誤り

行政指導は、相手方に対して当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者明確に示さなければなりません(行手法35条1項)。同項は口頭か書面かという規定ではないため、口頭で行政指導をする場合にも明確に示さなければなりません。

したがって、記述ウは誤っています。

エ 誤り

地方公共団体の機関がする行政指導については、行政手続法の行政指導を定めている第4章の規定は適用されません(行手法3条3項)。

したがって、記述エは誤っています。

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