民法-債務の引受け
司法試験平成29年 第20問

司法試験ピックアップ過去問解説

問題

債務の引受けに関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。


ア.債権者Aが,債務者Bの意思に反して,引受人Cとの間で併存的債務引受の契約をした場合,その効力は生じない。

イ.債権者Aに対する債務者Bの債務について,Cを引受人とする併存的債務引受の効力が生じた場合において,Bの債務が時効により消滅したとしても,AはCに対して債務の全額を請求することができる。

ウ.債権者Aは,債務者Bの意思に反しない場合,引受人Cとの二者間の契約により,免責的債務引受の効力を生じさせることができる。

エ.債権者Aに対する債務者Bの債務について,Cを引受人とする免責的債務引受の効力が生じた場合には,Bの債務を担保するために第三者Dが設定していた抵当権は,Cの債務を担保することについてDの同意がない限り,消滅する。

オ.中古自動車の売買契約における売主Aに対する買主Bの代金債務について,Cを引受人とする免責的債務引受の効力が生じた場合において,その自動車に隠れた瑕疵があり契約の目的を達成することができないときは,Cはその売買契約を解除することができる。


1.ア イ  2.ア ウ  3.イ オ  4.ウ エ  5.エ オ



解答・解説

解答:4

ア 誤り

併存的債務引受は、債務者の意思に反するときでもすることができます(大判T15.3.25)。

したがって、記述アは誤っています。

イ 誤り

併存的債務引受の効力が生じた場合、特段の事情がない限り、原債務者と引受人との間には連帯債務関係が生ずると解されています(最判S41.12.20)。そして、連帯債務者の一人のために時効が完成したときは、その連帯債務者の負担部分については、他の連帯債務者も、その義務を免れるので(439条)、債権者は引受人に対し債務の全額を請求することはできません(同判例)。

したがって、記述イは、AはCに対して債務の全額を請求することができるとしている点で誤っています。

ウ 正しい

免責的債務引受は、債務者の意思に反しない限り債権者と引受人の二者間の契約でできると解されています(大判T10.5.9、474条2項参照)。

したがって、記述ウは正しいといえます。

エ 正しい

免責的債務引受の効力が生じた場合、原債務を担保するために第三者が負っていた保証債務は、保証人の同意が無い限り消滅すると解されています(大判T11.3.1)。

この判例の趣旨からすると、Bの債務を担保するために第三者Dが設定していた抵当権(物上保証)は、Dの同意が無い限り、消滅すると解されます。したがって、記述エは正しいといえます。

オ 誤り

債務引受は、その名のとおり債務を引き受けるものであって、契約の当事者を変更するものではありません。そのため、売買契約の目的物に瑕疵があり契約の目的を達成することができなかったとしても、その解除をできるのは契約当事者のみであって、免責的債務引受の引受人は解除をすることはできません。

したがって、記述オは誤っています。

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