株式会社は,株主を,その有する株式の内容及び数に応じて,平等に取り扱わなければならないものとされている。株式会社に関する次の1から5までの各規律のうち,この原則の例外としてふさわしくないものはどれか。
1.会社がその発行する株式を引き受ける者の募集において株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合に,割当てを受ける募集株式の数に1株に満たない端数があるときは,これを切り捨てるものとする。
2.会社は,一定の数の株式をもって株主が株主総会において1個の議決権を行使することができる1単元の株式とする旨を定款で定めることができる。
3.会社は,既存の株式とは別に,剰余金の配当に関する優先株式を新たに発行し,既存の株式の株主に優先して優先株式の株主に剰余金の配当をすることができる。
4.定款に別段の定めがない限り,取締役に対し株主総会の招集を請求した株主の有する議決権が総株主の議決権の100分の3に満たないときは,取締役は,その請求を拒むことができる。
5.会社法上の公開会社でない会社は,残余財産の分配を受ける権利に関する事項について,株主ごとに異なる取扱いをする旨を定款で定めることができる。
1 株主平等原則の例外としてふさわしい
会社がその発行する株式を引き受ける者の募集において株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合、当該株主が割当てを受ける募集株式の数に一株に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとされています(202条2項ただし書き)。
株主平等原則は、保有する株式の内容及び数に応じて平等の取扱いを受ける原則をいいますが(109条1項)、記述1の規律は、一株に満たない端数株に応じた部分が切り捨てられてしまうことから、端数株の株主は平等の取扱いを受けているとはいえません。
したがって、記述1の規律は株主平等原則の例外としてふさわしいといえます。
2 株主平等原則の例外としてふさわしい
株式会社は、その発行する株式について、一定の数の株式をもって株主が株主総会又は種類株主総会において一個の議決権を行使することができる一単元の株式とする旨を定款で定めることができます(188条1項)。この定めにより、一定の数の株式を下回る数しか保有していない株主は、議決権を有しないこととなり、平等の取扱いを受けているとはいえません。
したがって、記述2の規律は株主平等原則の例外としてふさわしいといえます。
3 株主平等原則の例外としてふさわしくない
株式会社は、剰余金の配当に関して異なる定めをした内容の異なる株式を発行することができ(108条1項1号)、既存の株式に優先して剰余金の配当に関する優先株式を新たに発行することができます。このような優先株式の株主に、優先して剰余金の配当をしたとしても、株式の内容に応じた取扱いをしているに過ぎないため、株主平等原則にのっとったものであるといえます。
したがって、記述3の規律は株主平等原則の例外としてはふさわしくありません。
4 株主平等原則の例外としてふさわしい
原則として、総株主の議決権の3%以上の議決権を6カ月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の招集を請求することができます(297条1項)。この定めにより、3%未満しか保有していない株主とそれ以外の株主とで取扱いを異にしているものといえます。
したがって、記述4の規律は株主平等原則の例外としてふさわしいといえます。
5 株主平等原則の例外としてふさわしい
公開会社でない株式会社は、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利、株主総会における議決権に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができます(109条2項)。この規律は、保有する株式の内容及び数とは別に、株主ごとの異なる取扱いを認めるものです。
したがって、記述5の規律は株主平等の例外としてふさわしいといえます。