行政不服審査に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものに○,誤っているものに×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。
ア.行政庁の不作為についての不服申立てに関しては不服申立期間の制限がなく,不作為状態の続く限りいつでも申立てが可能である。
イ.処分庁が誤って法定の期間よりも長い期間を審査請求期間として教示した場合において,その教示された期間内に審査請求がされたときは,当該審査請求は,法定の審査請求期間内にされたものとみなされる。
ウ.処分庁の上級行政庁である審査庁は,処分庁に対する一般的指揮監督権を有するから,裁決で当該処分を審査請求人の不利益に変更することもできる。
1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○
4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×
7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×
解答:4
ア 正しい
行審法18条1項は、処分についての審査請求の審査請求期間を定めていますが、不作為については何ら定めがありません。このことから、不作為についての不服申立てについては不服申立て期間の制限が無いと解されています。
したがって、記述アは正しいといえます。
イ 誤り
行政庁がする教示には、不服申立てをすることができる期間が含まれます(行審法82条1項本文)。行審法上、誤って審査請求をすべき行政庁でない行政庁を審査請求をすべき行政庁として教示した場合等の救済についての規定はありますが(22条等)、不服申立てをすることができる期間を誤って教示した場合の規定はありません。そのため、誤って法定の期間よりも長い期間を審査請求期間として教示した場合に、その教示された期間内に審査請求がされたとしても、法定の審査請求期間内にされたものとみなされることはありません。
したがって、記述イは誤っています。
(もっとも、審査請求期間の徒過としたとしても、「正当な理由があるとき」は適法に申立てをすることができます(18条1項ただし書き)。そのため、誤った教示があったことで、「正当な理由がある」といいやすくなるといえます。)
※平成26年出題当時は、設問のとおりの不服申立期間についての「みなす」規定がありましたが、改正法の施行(平成28年4月1日)により、削除されました。そのため、現時点における本問の正答としては「誤り」ということになります。
ウ 誤り
行審法48条は「第四十六条第一項本文又は前条の場合において、審査庁は、審査請求人の不利益に当該処分を変更し、又は当該事実上の行為を変更すべき旨を命じ、若しくはこれを変更することはできない。」として、不利益変更禁止の原則を定めています。
したがって、記述ウは誤っています。