民法-債権の消滅原因
司法試験平成25年 第23問

司法試験ピックアップ過去問解説

問題

債権の消滅原因に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。

ア.判例によれば,土地の賃借人がその土地上の建物を賃貸している場合において,建物の賃借人は,その土地の賃料について,土地の賃借人の意思に反しても弁済をすることができる。

イ.弁済の目的物が供託されたことによって抵当権が消滅した場合には,その供託をした者は,債権者が供託を受諾する前であっても,供託物を取り戻すことができない。

ウ.相殺の意思表示には,条件を付することができる。

エ.判例によれば,債権者が保証人に対して有する保証契約上の債権を自働債権とする相殺は,保証人が検索の抗弁権を有するときであっても,双方の債務が弁済期にあれば,することができる。

オ.債権者は,債務者の承諾がなければ,その債務を免除することができない。

1.ア イ  2.ア オ  3.イ ウ  4.ウ エ  5.エ オ


解答・解説

解答:1

ア 正しい
土地の賃借人が、その土地の賃貸人に対する地代の支払いを怠り、賃貸借契約を解除された場合、土地の賃借人はその土地上の建物を収去して明け渡す必要があります。そうすると、その建物の賃借人は、当然にその建物を退去しなければならないことになります。
そのため、借地上の建物の賃借人は、その敷地の賃貸人の地代の弁済について、利害関係を有するといえます(最判S63.7.1)。そのため、土地の賃借人の意思に反しても弁済をすることができます(474条1項、2項)。
よって、記述アは正しいといえます。

イ 正しい
供託物は債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は取り戻すことができますが(496条1項)、供託によって質権又は抵当権が消滅した場合には取り戻すことができなくなります(496条2項)。
したがって、記述イは正しいといえます。

ウ 誤り
相殺の意思表示には、条件又は期限を付することができません(506条1項後段)。したがって、記述ウは誤っています。
なお、同規定の趣旨は、一方的意思表示である相殺に条件等を付すると、相手方の地位を不安定にするためであると説明されます。そのため、停止条件付相殺契約など、合意によって条件を付けることは可能であると解されています。

エ 誤り
判例は、保証人が催告及び検索の抗弁権を有しているとき、そのような保証契約上の債権を自働債権とする相殺は許されないとしています(最判S32.2.22)。
したがって、記述エは誤っています。

オ 誤り
債務の免除は、債権者が一方的意思表示によりすることができます(519条)。
したがって、債務者の承諾を必要としている点で、記述オは誤っています。


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