公訴の提起に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
ア.公訴の提起があった事件について,更に同一裁判所に公訴が提起されたとき,裁判所は公訴を棄却しなければならない。
イ.検察官が公訴を提起したときは,検察官が遅滞なく起訴状の謄本を被告人に送達しなければならない。
ウ.起訴状の謄本が公訴の提起があった日から2か月以内に被告人に送達されなかったため,公訴が棄却された場合,公訴の提起により進行を停止していた公訴時効は,公訴棄却の裁判が確定したときから再びその進行を始める。
エ.起訴状の謄本が公訴の提起があった日から2か月以内に被告人に送達されなかったため,公訴が棄却され,その裁判が確定したとき,検察官は,同一事件について更に公訴を提起することができる。
オ.公訴は,検察官の指定した被告人以外の者にその効力を及ぼさないから,共犯の一人に対してした公訴の提起による時効の停止は,他の共犯に対してその効力を及ぼさない。
1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ
解答:4
ア 正しい
338条3号は、「公訴の提起があつた事件について、更に同一裁判所に公訴が提起されたとき」には公訴を棄却しなければならないとしています。
したがって、記述アは正しいといえます。
イ 誤り
遅滞なく起訴状の謄本を送達しなければならないのは、裁判所です(271条1項)。
したがって、記述イは誤っています。
ウ 正しい
公訴の提起により、公訴時効は進行を停止し、公訴棄却の裁判が確定した時から再びその進行を始めます(254条1項)。
公訴の提起があった日から2カ月以内に起訴状の謄本が送達されないときは、公訴の提起はさかのぼって効力を失います(271条2項)が、当然に裁判が終了するのではなく、公訴棄却の決定をしなければなりません(339条1項1号)。そのため、この公訴棄却の決定の確定した時から、再びその進行を始めることになります(最決S55.5.12)。
したがって、記述ウは正しいといえます。
エ 正しい
公訴の提起があった日から2カ月以内に起訴状の謄本が送達されないときは、公訴の提起はさかのぼって効力を失います(271条2項)。これは、公訴提起が無かったと同じ状態になるということを意味するため、公訴棄却決定が確定した後、検察官は、同一事件について更に公訴を提起することができます。
したがって、記述エは正しいといえます。
オ 誤り
公訴は、検察官の指定した被告人以外の者にその効力を及ぼさない(249条)のが原則ですが、公訴時効の停止については、他の共犯に対してもその効力を有します(254条2項)。
したがって、記述オは誤っています。