刑事訴訟法-電磁的記録の捜索・差押え
司法試験平成26年 第25問

司法試験ピックアップ過去問解説

問題

次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。

ア.電磁的記録を保管する者その他の電磁的記録を利用する権限を有する者に命じて必要とする電磁的記録を記録媒体に記録させ,又は印刷させた上,当該記録媒体を差し押さえる場合,裁判官の発する令状に,記録させ若しくは印刷させるべき電磁的記録及びこれを記録させ若しくは印刷させるべき者の記載がなされる必要がある。

イ.差し押さえるべき物が電子計算機である場合,当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であって,当該電子計算機で作成若しくは変更した電磁的記録又は当該電子計算機で変更若しくは消去することができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから,その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上,当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえるときには,裁判官の発する令状に,差し押さえるべき物の記載とは別に,その複写すべきものの範囲の記載がなされる必要はない。

ウ.差し押さえるべき物が電磁的記録に係る記録媒体であるときは,裁判官の発する令状により差押えを実施する者は,その差押えに代えて,差押えを受ける者に差し押さえるべき記録媒体に記録された電磁的記録を他の記録媒体に複写させ,印刷させ,又は移転させた上,当該他の記録媒体を差し押さえる権限を有する。

エ.差し押さえるべき物が電磁的記録に係る記録媒体であるときは,裁判官の発する令状により捜索又は差押えを実施する者は,処分を受ける者に対し,電子計算機の操作その他の必要な協力を求めることができる。

オ.裁判官の発する令状により,電磁的記録を保管する者その他の電磁的記録を利用する権限を有する者に命じて必要とする電磁的記録を記録媒体に記録させ,又は印刷させた上,当該記録媒体を差し押さえる場合,被疑者又は弁護人は,その実施に立ち会う権利を有する。

1.ア ウ  2.ア オ  3.イ エ  4.イ オ  5.ウ エ


解答・解説

解答:4

ア 正しい
電磁的記録保管する者その他の電磁的記録を利用する権限を有する者に命じて必要とする電磁的記録を記録媒体に記録させ、又は印刷させた上、当該記録媒体を差し押さえることを記録命令付差押えといいます(99条の2)。裁判所は必要があるときは記録命令付差押えをすることができますが(同条)、そのときは令状に、記録させ若しくは印刷させるべき電磁的記録及びこれを記録させ若しくは印刷させるべきの記載を記載しなければなりません(107条1項)。捜査機関が行う記録命令付差押え(218条1項)も同様です(219条1項)。
したがって、記述アは正しいといえます。

イ 誤り
99条2項は「差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。」と定め、令状には差し押さえるべき電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、その電磁的記録を複写すべきものの範囲を記載しなければなりません(107条2項)。
捜査機関が行う差押え(218条2項)も同様です(219条2項)。
したがって、複写すべきものの範囲の記載がなされる必要はないとしている点において、記述イは誤っています。

ウ 正しい
差し押さえるべき物が電磁的記録に係る記録媒体であるときは、差押状の執行をする者は、その差押えに代えて、差押えを受ける者に差し押さえるべき記録媒体に記録された電磁的記録を他の記録媒体に複写させ、印刷させ、又は移転させた上、当該他の記録媒体を差し押さえることができます(110条の2第2号)。
同条は捜査機関が行う場合にも準用されています(222条1項)。
したがって、記述ウは正しいといえます。

エ 正しい
111条の2は「差し押さえるべき物が電磁的記録に係る記録媒体であるときは、差押状又は捜索状の執行をする者は、処分を受ける者に対し、電子計算機の操作その他の必要な協力を求めることができる。公判廷で差押え又は捜索をする場合も、同様である。」と定めています。
同条は捜査機関が行う場合にも準用されています(222条1項)。
したがって、記述エは正しいといえます。

オ 誤り
裁判所が行う差押状の執行に、被告人又は弁護人は立ち会うことができますが(113条1項)、同条は捜査機関が被疑者に対して行う場合には準用されていません(222条1項参照)。
したがって、被者・弁護人には立会権が無いため、記述オは誤っています。
なお、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、差押えをするについて必要があるときは、被疑者を立ち会わせることができます(222条6項)。

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