刑法-共犯の成立
司法試験平成26年 第7問

司法試験ピックアップ過去問解説

問題

次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。

1.Aは,BがVを殺害しようとして拳銃で狙っているのを見て,Bの発射した弾丸がVに命中しなかった場合には自らVを射殺してBの目的を達成させようと考え,Bの知らない間に拳銃を持って付近に待機していたが,Bの発射した弾丸がVに当たってVが死亡した。この場合,Aには殺人既遂罪の幇助犯が成立する。

2.Aは,Bが賭博場を開くことを知って,これを手伝うつもりでBには告げずに客を誘って賭博場に案内して賭博をさせた。この場合,Aには賭博場開張図利罪の幇助犯が成立する。

3.Aは,BがVを殴打しようとしているときに,Bに気付かれずにVの足を押さえ付けたため,Bは,Vの顔面を殴打して顔面打撲の傷害を負わせることができた。この場合,Aには傷害罪の共同正犯が成立する。

4.Aは,Bにその夫Vを殺害させようと考えて,Bの知らない間に,Vの不倫の現場写真と拳銃をBの居宅のテーブルに置いておいたところ,それを見たBがVに対する殺意を抱き,その拳銃を発砲してVを殺害した。この場合,Aには殺人既遂罪の単独正犯が成立する。

5.Aは,BがVに致死量に満たない毒入りのコーヒーを渡したのを知って,Vを殺害しようと考え,Bの知らない間に,Bの入れた毒と併せて致死量となる量の毒をそのコーヒーに入れ,その後,Vがそのコーヒーを飲んで死亡した。この場合,Aには殺人既遂罪の単独正犯が成立する。



解答・解説

解答:2,5

1 誤り
幇助犯は、正犯の実行行為を物理的・心理的に容易にすることで成立します。
Aは、Bの失敗に備えて待機していたものの、BはVの殺害に成功し、かつ、Aの存在に気付いていません。そのため、Aの行為はBの殺人行為を物理的にも心理的にも容易にしたとはいえず、幇助行為に該当しません。したがって、Aには殺人既遂罪の幇助犯は成立しません。

2 正しい
Aは、賭博客を誘って案内することで、Bの賭博場開帳図利罪の実行を物理的に容易にしたものといえます。Aの行為にBは気付いていませんが、判例は幇助犯成立のために正犯・幇助犯間での意思の連絡は不要と解しており(大判大正14年1月22日)、また、片面的であってもAの行為によりBの実行行為を容易にしたといえるため、Aには賭博場開帳図利罪の幇助犯が成立します。

3 誤り
共同正犯の成立には共同実行の意思が必要とされ、これを認めるには意思の連絡が必要だと考えられています。古い判例は、「共同正犯が全部の責任を負う理由は、行為者相互間に意思の連絡、すなわち共同犯行の認識があって互いに他の一方の行為を利用し全員協力して犯罪事実を発現することによる。」として、ある一人が意思の連絡無く、共同犯行の意思をもって犯罪に参加したとしても、共同正犯にはならないとして片面的共同正犯の成立を否定しています(大判T.11.2.25)。
Aは、Bに気付かれずにVの足を押さえ付けているため、AB間で意思の連絡は全く無かったといえます。したがって、Aには傷害罪の共同正犯は成立しません。したがって、記述3は誤っています。
なお、AはBの傷害行為を物理的に容易にしているといえるため、幇助犯が成立します。

4 誤り
記述4の事案において単独正犯が成立するには、Aが直接正犯といえるか、間接正犯といえなければなりません。しかし、Aは自らVを殺害したわけではないから直接正犯とはいえず、Bは自ら殺意を抱き、実行に移していることから、Aの道具として犯罪を実行したともいえないため、間接正犯ともいえません。したがって記述4は誤っています。
なお、Aの行為によりBが殺意を抱いたといえる場合には、Aには殺人既遂罪の教唆犯が成立します。

5 正しい
Bの行為は、致死量に満たない毒入りコーヒーをVに渡したに過ぎないので、死の結果の発生する危険性はなく、傷害罪にとどまることになります。(ただし、場合によっては殺人未遂罪が成立する余地はあるでしょう。)
Aは、Bの入れた毒と併せて致死量となる量の毒を入れているため、Vに対する殺人罪が成立します。AB間に意思の連絡は無いため、共同正犯となることはありません。したがって、Aには殺人既遂罪の単独正犯が成立することになるので、記述5は正しいといえます。




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