刑法-強盗罪
司法試験平成26年 第14問

司法試験ピックアップ過去問解説

問題

強盗の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。

1.甲は,金品窃取の目的で乙方内を物色中,金品を手にする前に乙に見付かり,逮捕を免れるため,乙に暴行を加えてその反抗を抑圧し,逃走した。甲には事後強盗未遂罪が成立する。

2.甲は,金品窃取の目的で乙方の金庫の扉を開けていたところを乙に見付かり,自分が犯人であることを警察に告げられることを防ぐため,乙を殺害し,そのまま逃走した。甲には強盗殺人未遂罪が成立する。

3.甲は,路上で乙とけんかになり,乙の胸をナイフで刺して殺害したが,そのすぐ後,乙が身に付けていた腕時計に気付き,自分のものにしようと考え,これを持ち去った。甲には強盗殺人既遂罪が成立する。

4.甲が,金品を奪う目的で,乙に暴行を加えてその反抗を抑圧したところ,乙は,持っていたバッグをその場に放置して逃走したことから,甲は,そのバッグを持ち去った。甲に強盗既遂罪は成立しない。

5.甲は,深夜,事務所で窃盗をしようと考え,窃盗の際に誰かに発見されたら包丁で脅して逃げるため,これを携帯しながら盗みに入ることができそうな事務所を探して街をはいかいしていたが,悔悟の念を生じたため,盗みに入ることを断念した。甲に強盗予備罪の中止犯は成立しない。


解答・解説

解答:1,5

1 正しい
甲は乙方内を物色していることから、甲にはこの時点で窃盗未遂罪が成立しており、事後強盗罪の「窃盗」に該当します。そして、事後強盗罪の既遂・未遂は窃盗についての既遂・未遂に従うと解されているため、暴行により乙の反抗を抑圧しつつも金品を領得していない甲には事後強盗未遂罪が成立します(最判昭和24年7月9日 )。したがって記述1は正しいといえます。

2 誤り
240条にいう「強盗」には事後強盗も含まれ(大判昭和6年7月8日)、窃盗犯人が罪跡隠滅のため被害者を殺害したときには強盗殺人が成立します(大判大正15.2.23)。強盗殺人罪の未遂とは、被害者が死亡しなかった場合にのみ成立し、財物取得の有無は無関係とされています(大判昭和4年5月16日)。
甲は乙方の金庫の扉を開けているため、この時点で窃盗未遂罪が成立し、事後強盗罪の「窃盗」に該当します。そして238条所定の目的で暴行したといえ、事後強盗となり、殺害していることから(事後)強盗殺人罪が成立することになります。乙が死亡しているため、未遂ではなく既遂となります。したがって、記述2は誤っています。

3 誤り
強盗殺人罪は「強盗」を主体とする罪です。そして、強盗罪が成立するためには、暴行が財物の強取に向けられていなければならないと解されています。
甲は、乙を殺害した後に腕時計を領得しているため、殺害は財物の強取に向けられたものとはいえません。したがって、甲には強盗罪が成立せず、そのため強盗殺人罪も成立しないことになります(甲には殺人罪と窃盗罪が成立することになります)。したがって、記述3は誤っています。

4 誤り
強盗罪における「強取」とは、相手方から財物を奪取する場合は当然ですが、相手方の反抗を抑圧した結果自由意思に基づかずに財物を交付した場合も含みます。また、そのような相手方が財物を放置して逃げた後にこれを領得した場合も強取に当たると解されています(名古屋高判昭和32年3月4日)。したがって、甲には強盗既遂罪が成立するため、記述4は誤っています。

5 正しい
強盗予備罪にいう「強盗の罪を犯す目的」には、事後強盗目的も含みます(最決昭和54年11月19日)。そして、予備罪には中止犯が成立しないと解されています(最大判昭和29年1月20日)。
甲は、事後強盗目的で包丁を携帯しており、強盗予備罪が成立します。そしてその後これを断念してはいますが、中止犯は成立しません。したがって記述5は正しいといえます。


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