2026/10/15
筆記試験の発表まで残すところあとわずかとなりました。準備は順調に進んでいますでしょうか。
筆記試験を通過して口頭試験に進むことができるのは、全体のわずか10数%です。狭き門を突破した方々が集う場だからこそ、口頭試験に対する誤解を解いておく必要があります。
口頭試験に関して、未だに「技術的な専門知識を丸暗記して答える場」だと勘違いしている方が少なくありません。「専門用語の定義を暗記しなければ」「細かい数値データを頭に叩き込まなければ」と焦り、知識の詰め込みに終始してしまうケースです。
結論から申し上げます。口頭試験は「知識の口頭試問」ではありません。
技術士としての資質(コンピテンシー)を備えているかを確認する対話の場です。
試験官が見ているのは、知識の量ではありません。知識の量であれば、既に筆記試験で合格水準にあることが証明されています。口頭試験で評価されるのは、一人のプロフェッショナルな技術者として、適切にコミュニケーションが取れるか、論理的に状況を判断できるか、そして技術者倫理に基づいた行動ができるかという点です。
具体的には、以下のコンピテンシーが対話の中で厳しく確認されます。
コミュニケーション・リーダーシップ
問いに対して的確かつ簡潔に答えているか。利害関係者との調整において適切なリーダーシップを発揮できるか
マネジメント
制約条件(資金、人体、時間、環境等)の中で、リソースをどう配分・管理したか。
評価
取り組みの成果だけでなく、発生したリスクや課題に対して客観的な評価(振り返り)ができているか。
技術者倫理・継続研鑽
公共の安全・環境保全を最優先しているか。技術者として自らを向上させ続ける姿勢があるか。
口頭試験で不合格になってしまう方の多くは、「コミュニケーションの不成立」が原因です。試験官の質問に対して、問われていない専門知識を延々と語り続けたり、不都合な質問に対して言い訳や弁明に終始したり、論点をずらして答えたりしてしまうのです。これでは、「対話ができない人物」と判断されてもぐうの音も出ません。
では、具体的にどのような対策を講じるべきでしょうか。
第一に、「一問一答・結論ファースト」の徹底トレーニングです。
試験官の質問に対しては、まず結論から短文で答えます。例えば「今回の業務で最も苦労した点は何ですか?」と問われたら、「最も苦労したのは、○○という制約条件下での関係者間調整です」と一言で答えます。その上で、試験官から「具体的にどう調整したのですか?」と問われてから、理由や手順を端的に述べるのです。1回の発言は30秒〜1分程度に収めるのが基本です。キャッチボールを意識してください。
第二に、申込書と再現答案の「論理のツッコミどころ」を自ら探すことです。
「なぜこの手法を選び、他手法を選ばなかったのか」「コストと工期のトレードオフをどう解決したか」「もしやり直せるなら、どこを改善するか」。自分の書いた文章に対して、いじわるな面接官になったつもりで質問を投げかけ、論理的な回答を用意してください。
口頭試験は、面接官を論破する場でも、自分を誇示する場でもありません。
「一緒に仕事をしたいと思える、誠実で論理的な技術士」であることを示す場です。
「対話」の準備を今すぐ始めてください。正しい方向性で準備を重ねれば、口頭試験は決して恐れるものではありません。
| 匠 習作(たくみ しゅうさく) プロフィール
1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。 次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。 匠習作技術士事務所代表技術士 |
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