2026/10/22

合格発表がいよいよ間近に迫ってきました。
この時期、毎年私の元には様々な相談が寄せられます。中でも胸が締め付けられるのは、「今回で10回目の挑戦だった」「どれだけ勉強しても届かず、もう傷つくのが怖い」「自分には技術士としての資質がないのではないか」という、長期受験者の方々からの切実な声です。
何度も不合格通知を受け取る経験は、個人の自尊心を大きく削り取ります。努力が報われない焦り、後から挑戦した職場の後輩が先に合格していく悔しさ、家族や周囲への申し訳なさ――そうした重圧に耐えかねて、諦めかけている方も少なくありません。
しかし、長年技術士試験の添削と指導を行ってきた立場から、ハッキリと申し上げたいことがあります。
あなたが不合格を重ねてきた理由は、エンジニアとしての能力不足でも、努力の量が足りないのでもありません。
ただ「試験が求めている解答の型(論理構造)」と、あなたの「アウトプットの方向性」にズレがあっただけです。
技術士第二次試験は、単なる知識の量や実務の長さを競う試験ではありません。いくら豊富な知識や素晴らしい実績があっても、設問の問いに正面から答えていなければ、採点官は点数を与えることができません。
多くの長期不合格者が陥ってしまう罠があります。それは「落ちたのは知識が足りなかったからだ」と思い込み、さらに新しい技術用語や論文の知識を暗記しようとすることです。しかし、原因が「知識不足」ではなく「設問適合(論理構築)のエラー」にある場合、いくら知識を増やしても不合格のスパイラルから抜け出すことはできません。
過去の不合格を「合格のための伏線」に変えるために、今必要な思考の転換は以下の3点です。
1.不合格を「人格の否定」ではなく「論理のエラー検出」と捉える
試験の結果は、あなたという技術者の価値や人格を否定するものではありません。単に「提示されたテキスト(答案)が、試験の評価基準に適合していなかった」という事実を示しているだけです。感情的に傷つくのをやめ、冷徹なエンジニアの目をもって、自分の答案の「どこで論理が破綻したか」「どの設問条件を読み飛ばしたか」を客観的にデバッグ(問題追及)してください。
2.「自分の書きたいこと」ではなく「設問が求めていること」を書く
実務経験が豊富なベテランほど、自らの実績や専門知識を見せつけようとしてしまい、設問の制約(課題抽出の粒度、トレードオフの特定、技術者倫理など)を無視した記述になりがちです。専門用語は「見せびらかす」ためではなく、「設問の条件に答える」ために必要最小限の範囲で使うのが鉄則です。
3.これまで積み重ねてきた「試行錯誤」を誇る
10回の挑戦は、決して無駄な時間ではありません。不合格の数だけ、あなたは自分の技術を見直し、課題に向き合ってきたはずです。正しい論文記述の型(結論先行、短文主義、論理的整合性)さえ身につければ、過去の膨大な実務経験と知識が一気に開花し、圧倒的な説得力を持つ答案へと化けます。
結果がどうであれ、あなたがこれまで積み重ねてきた技術研鑽の時間は裏切りません。
過去の不合格は、「合格のための伏線」です。
「もう諦めようか」と迷っているなら、どうか最後にもう一度だけ、自分の論理の「型」を見直してみてください。過去の不合格は、あなたが本当の技術士へと脱皮するための必修科目だったと、合格した日に笑って振り返られる日が必ず来ます。
| 匠 習作(たくみ しゅうさく) プロフィール
1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。 次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。 匠習作技術士事務所代表技術士 |
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